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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1626/2051

第1626話 火天復活(2)

「っ!?」

 影人の右斜め前方辺り――確か、あの辺りは広場だった――に生じた光の柱。それを見た影人の顔が驚愕から歪む。影人は似たような光景を1度メザミアで見た。間違いない。あれは――

(災厄・・・・・・! それが復活したって事はあの近くにフェルフィズの奴がいる・・・・・・!)

 ウリタハナに来て正解だった。今度こそ逃しはしない。影人はその意識を真剣なものへと変えた。

「な、何だよあれ・・・・・・」

「分からないわよ・・・・・・でも、あっちの方角は中央広場よ。今日は魔光祭の最終日で、今は最後の祈りを捧げる時間だから・・・・・・何かの演出?」

「演出・・・・・・ううん、違うよ。あれはもっと怖い何かの気がする・・・・・・!」

 ライカ、ニーナ、メイも光の柱に気づく。3人の言葉、特にニーナの言葉を聞いた影人は「ッ・・・・」と軽く息を呑んだ。

「おい青マスク。お前今なんて言った? 最後の祈りっていうのは何だ?」

「あ、青マスク? あの、私には『幻惑』の可憐って名前が・・・・・・」

「名前なんざどうでもいい。さっさと教えろ」

「・・・・・・魔光祭最後の夜にはウリタハナの中央広場で教皇と共に祈りが捧げられるのよ。それが魔光祭の目玉であり、魔光祭はそうやって終わりを迎える。だから、あそこにはたくさんの者たちがいるの。私たちが今日の夜を狙ったのは、その祈りに乗じるためよ」

 戸惑いながらもニーナは影人にそう説明してくれた。ニーナの説明を受けた影人はその顔を険しいものへと変えた。

「っ・・・・・・って事は、あそこには祭りにいた奴らが集中してるのか。ちっ、また面倒な場所に封印されてやがったな。今回の奴は・・・・・・」

 すぐに対処しなければ多くの者たちが死ぬ。正直、影人はこの町の者たちにメザミアの住人たちほどの恩は感じていない。ゆえに、この町の者たちを救う義理は影人にはないといえばない。

 だが、

「・・・・・・やらなきゃだよな。あいつが起こした不条理を許すのは気分が悪い」

 影人はそう言った。そして、怪盗団の拘束を解いた。

「え・・・・・・?」

「な、何で・・・・・・」

「鎖が・・・・・・」

 メイ、ライカ、ニーナは突然拘束を解かれた事に疑問を抱く。そんな3人に影人はこう言った。

「運が良かったな。緊急事態だからお前らは逃してやるよ。どこに逃げるなり好きにしろ。じゃあな」

 影人は一方的にそう告げると、光の柱へ向かうべく屋根の上を走りその場から去った。影人は屋根から屋根へと飛び、一瞬で3人の前から消えた。

「あ、ちょ! な、何なんだよ急に・・・・・・」

「分からないわよ・・・・・・でも、今の内に逃げないと」

「・・・・・・まあ、そうだよな。メイ、行くぞ。何だか分からないけど、とにかく遠くに逃げるよ」

 ニーナと言葉を交わしたライカがメイにそう言う。しかし、メイはライカの言葉に頷きはしなかった。

「・・・・・・いや、私たちも広場に向かおう。私、何だかあそこに行かなきゃいけない気がする。行くよニーナ、ライカ!」

 メイはそう言うとワイヤーを民家の屋根に向かって射出し、違う屋根へと飛んで行った。

「は!? ちょ、ちょっとメイ!? あーもう! 私たちも行くぞニーナ! ああなったら、あのバカメイは止まらない! 分かってるだろ!」

「分かってるわよ! あのバカメイ! 後で絶対殴ってやるんだから!」

 メイを追うべくライカとニーナもワイヤーを使ってメイの後を追う。こうして祭りの夜、怪人と怪盗は災厄を告げる光の柱へと向かったのだった。

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