第1625話 火天復活(1)
(ふっ、決まったぜ・・・・・・こういうのは、瞬殺の方が格好いいからな)
可憐怪盗団の3人を拘束した影人は内心でそんな事を考えていた。長い間屋根の上で待っていた甲斐があった。怪盗団を圧倒する謎の怪人を演じ、厨二病的な心が満たされた前髪野郎は文字通り満足していた。
「な、何だよこの鎖!? どこから出て来たんだよ!?」
「くっ・・・・・・」
「っ・・・・・・!?」
何の前触れもなく虚空から現れた鎖に拘束されたライカ、ニーナ、メイの3人はそれぞれ戸惑いと驚愕が混ざったような顔になる。影人はチラリとその金の瞳を3人に向けた。
「お前何者だ!? 何で私たちを捕まえる!?」
「・・・・・・言っただろ。俺はスプリガンだ。お前らを捕まえる理由は・・・・・・まあ、お前らがお尋ね者だからって理由で充分だろ」
叫ぶライカに影人は淡々とそう言った。正直、怪盗たちを捕まえたのはノリだったので深い理由はない。だがまあ、引き渡せば金になるだろうと影人は思った。
「答えになってない! クソッ、こんなところで終わるわけには・・・・・・!」
ライカが身体能力強化の魔法を使い、鎖から逃れようとする。だが、ライカの強化された肉体を以てしても鎖が千切れる事はなかった。
「ラ・・・・『閃光』でも抜け出せないんじゃ、私たちはどうにも出来ないわね。残念だけど・・・・・・諦めるしかないわ」
冷静なニーナは自分たちの状況が既に詰みだという事を理解していた。ライカとは違いニーナは何も抵抗するような真似はしなかった。
「・・・・・・」
暴れるライカや諦めるニーナとは違い、メイは首を捻り無言でずっと影人を見つめて来た。その様子は意識的というよりかは無意識的という感じで、不気味さはない。心奪われている様子、と形容するのが1番近いだろうか。
「・・・・・・何だお前。さっきからずっと俺を見てるが・・・・・・」
「へっ!? い、いや、な、何でもないです! その格好いいなとかは別に思ってませんから!」
そんなメイの様子に不審感を抱いた影人がメイにそう聞いた。メイはなぜか顔を赤くし慌てふためいたような様子になった。
「?」
「おい嘘だろ・・・・・・まさか・・・・・・」
「ああもう、このバカメイ・・・・・・」
影人はよく分からないといった感じで軽く首を傾げたが、メイと付き合いの長いライカとニーナは何かを察したような雰囲気だった。ライカは信じられないといった顔を、ニーナは呆れ切った顔を浮かべた。
「・・・・・・どうでもいいが、取り敢えずお前たちを官憲に引き渡す。お前たちのツキは、俺と出会った――」
事だ。しかし、影人がそう言い切る前に、
突如として、少し赤みがかった光の柱が地面から立ち昇った。




