第1618話 お宝を守れ(2)
「そう。それしかない。それで、人手が足りないから頼りになりそうな奴らを探してたってわけだ。で、あんたらが見つかった。そこでお願いだ。どうか、怪盗団から宝を守るのに力を貸してくれないか? もし宝を無事に守る事が出来たら、金貨10枚だ。どうだやってくれるか?」
ベナが影人たちにそう聞いてくる。これで、ベナがあんな事をして、話があるといった理由は全て開示された。
「・・・・俺は別にどっちでもいいけど、どうする?」
ゼノが影人たちの方に振り向く。影人たちは1度顔を見合わせると、それぞれの意見を述べた。
「私は別にいいわよ。面白そうだから」
「まあ、路銀はいくらあってもいいからな。どうせまた稼がなきゃならないなら、大口の時の方がいい。俺もやってもいいぜ」
「成功報酬型は失敗した時が怖いですが・・・・・・まあ、私たちなら失敗はしないでしょう」
「もちろん私も賛成です! 怪盗に会えるなんて楽しみです!」
シェルディア、影人、フェリート、キトナの4人の言葉。それを聞いたゼノはベナの方に顔を戻した。
「だってさ。いいよ、その仕事やっても」
「っ、本当か! いやー、助かる。心の底から感謝するぜ」
ベナはホッとした顔を浮かべた。そして、こう言葉を続けた。
「あんたら宿はもう取ってるか? もしまだだったら、ここを自由に使ってくれ。ここは教会職員の古い寮で今は誰も使ってない。だが、たまにお客さんやらを泊めたりには使ってるから、手入れはされてる。寝床もいくつもあるから宿にはピッタリだぜ」
「ああ、それは助かります。ぜひお願いしたい」
「分かった。なら、ここの鍵渡しとくぜ」
頷いたフェリートにベナが鍵を放る。フェリートはしっかりとその鍵を受け取った。
「悪いが、俺はまだまだ忙しくてな。警備の話はまた明日の夜にでもさせてくれ。じゃ、明日の夜にまた来る。それまでは、あんたらも魔光祭を楽しんでくれ」
ベナは影人たちにそう言い残すとドアを開けて出て行った。
「・・・・・・怪盗団ね。まさか、異世界に来て怪盗から宝を守る事になるなんて考えもしてなかったぜ」
「私もですよ。というか、この世界に来てから考えられない事がずっと起きている気がしますよ」
「ふふっ、まあいいじゃない。旅は未知だからこそ面白いのよ。さて、じゃあ今日はお金も手に入ったし、どこか外にご飯でも食べに行きましょうか」
「お店でご飯! 私、一般の食堂に行くのは初めてです。とても楽しみですわ!」
「飯か。そういえば腹減ったな。今日は一杯食べよっと」
影人とフェリートのやれやれといった感じの顔とは対照的に、シェルディアとキトナは明るい顔を浮かべた。ゼノはあまり表情は変えず、のんびりと腹をさすっていた。
この後、影人たちは夕暮れに染まる町に繰り出し、異世界の料理に舌鼓を打ちウリタハナでの初日を終えたのだった。




