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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1615/2051

第1615話 第2の霊地(4)

「・・・・・・マズいな、金がない」

 数分後。ウリタハナの町の広場の隅にいた影人は深刻そうな顔でそう呟いていた。

「まあ、路銀がないのは大きな問題の1つでしたが、今までは運良くお金を使う場面がなかったですからね。街中で流石に野宿は出来ませんから、どうにかこちらの世界の通貨を獲得しなければ」

 影人の言葉にフェリートがそう反応する。すると、そのやり取りを聞いていたキトナが申し訳なさそうな顔を浮かべた。

「すみません皆さん。私が城からいくらかお金を持ってくればよかったのですが・・・・・・」

「いや、キトナさんが気にする事じゃねえよ。でも、真面目に働くって感じでもねえし・・・・・・嬢ちゃん、何かこっちの世界の貴重な物とか持ってないか? もちろん、手放してもいいようなやつがあればだけど」

「貴重な物ねえ。うーん、何かあったかしら?」

 シェルディアが思い出そうとしていると、突然広場にこんな声が響いた。

「さあさあご注目! 今から魔光祭前の余興を始めるぜ! ここにいる男に力比べで勝てばなんと金貨5枚! 加えて挑戦費は無料! ただし、挑戦は1人1回までだ! さあ、誰か腕に覚えのある奴はいないかー!?」

「ん・・・・・・?」

 影人が声のした方向、広場中央付近に顔を向ける。当然、他の者たちも。すると、そこには2メートルくらいの巨大で屈強な若い魔族の男と、中年手前くらいの魔族の男がいた。状況的に、あの煽り文句は中年手前の男が放った言葉だろう。

「・・・・・・腕に覚えのある者はかかってこい」

 筋肉がはち切れんばかりの腕を組み、仁王立ち姿の魔族の男がそう言葉を放つ。すると、広場にいた男たちが面白そうな、或いは興奮したような顔を浮かべる。

「面白え! 最初は俺だ!」

「金貨5枚もありゃ10日は遊び放題だ!」

 男たちが広場中央へと殺到する。その様子を見ていた影人はポツリとこう呟いた。

「・・・・・・何かドンピシャにおあつらえ向きのイベントが起きたな」

「ですね。運がいいと思うべきでしょう。取り敢えず、あの男に勝てば纏った路銀が手に入りそうです。キトナさん、1つお聞きしますが、この世界の通貨状況はどのような感じですか?」

「各国によって使える使えないはありますが、金貨などの硬貨類はどの国でも使えますね」

「ありがとうございます。ならば、余計に都合がいいですね」

 キトナに確認を取ったフェリートが満足したように頷く。すると、ゼノがこんな言葉を放った。

「ん、じゃあ俺が行って来るよ」

「お前が? まあ確かに、闇人の身体能力ならお前でも勝てるだろうが・・・・・・」

「いや、闇人の身体能力は使わないよ。フェアじゃないしね。『破壊』で一時的に俺の闇人としての身体能力を壊して・・・・・・うん。これで封印状態と同じ身体能力だ。みんなはちょっと待っててね」

 ゼノはぼんやりと笑いそう言うと、広場の中央の方へと歩いて行った。その様子はまるでカフェにでも行くかのような気やすさだった。

「まあ。ゼノさん、凄いですね。勝つ気満々です」

「・・・・・・は? お、おい待て! 意味が分からんぞ!? そんな事したらお前勝てるわけ――!」

 力比べに向かったゼノにキトナはそんな反応を示し、影人はゼノを止めようと一歩を踏み出そうとした。だが、そんな影人をフェリートが止めた。

「大丈夫ですよ。あなたの気持ちは分かりますが・・・・・・ゼノは絶対に勝ちますから」

「っ・・・・・・?」

 確信を通り越して当然といった顔のフェリートに、影人が疑問を抱く。すると、シェルディアも影人にこう言ってきた。

「影人、フェリートの言う通り何も問題はないわ。あなたは知らないかもだけど、あの子は元々・・・・・・規格外だから」

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