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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1614/2051

第1614話 第2の霊地(3)

「・・・・・・何か凄くザワザワというか賑やかな感じだな。まるで祭り前日というか何というか」

 ウリタハナの町に入った影人は思っていた以上に町が活気付いている事に意外感を抱いた。

「そうですね、ウリタハナの町は有名なので賑やかなのは全くおかしくはないのでしょうが・・・・・・」 

 影人同様にキトナも意外という感じの顔を浮かべる。すると、白いツノを生やした老齢の魔族女性が影人たちに話しかけてきた。

「おや、珍しい。獣人族と・・・・・・そっちのツノも耳も羽もないあんたらは吸血鬼、それとも魔妖族かい? あんたらも明日からの魔光祭に参加しに来たのかね?」

「あら、よく一目で私たちが吸血鬼だと分かったわね?」

「40年くらい前にたまたまだけど、1度見た事があったからねえ」 

「へえ、そう。それでその魔光祭というのは何なのかしら?」

 魔族の老婆にシェルディアはそう尋ねた。一般の者たちに対し馬鹿正直に異世界人と言えないので、変わらずに影人たちは吸血鬼であるというブラフが必要なのだ。キトナもその事は理解していたので、顔色を変えるような事はしなかった。

「何だ、あんたらそれで来たんじゃなかったのかい。魔光祭っていうのは全てを照らし慈悲を与える魔光と、開祖のシジル様を祀る年に1度のお祭りさね。出店もたくさん出て2日間盛大に祝うのさ。フィザシエリ各地、また他の国からも信者たちが参加して来るんだよ。まあ、信者以外にも祭りが好きな奴らも集まっては来るがね。それはそれでよしさ。じゃあね、あんたらもせっかくだし祭りを楽しむ事だ」

 老婆はそう言うとどこかへと消えて行った。

「魔光祭・・・・・・聞いた事があります。ですが、まさか魔光祭が明日からだったなんて。楽しみですね!」

 老婆の話を聞いたキトナは興奮した様子でパタパタと頭の上の耳を動かした。キトナは箱入りの王女だったので、祭りと聞いて好奇心が抑えきれないのだろう。

「異世界のお祭りね・・・・・・面白そうだけど、状況的にはかなり厄介になるかもね、これは」

「・・・・・・だな」

 一方、キトナとは逆に少し厳しい顔を浮かべるゼノに同意するように、影人も頷いた。

 ゼノが厄介になると言っているのは当然フェルフィズの事だ。ただでさえ、捕まえる事の難しいフェルフィズが祭りに乗じてやってくれば、フェルフィズを捕まえる事は不可能だ。もちろん、フェルフィズが次にここにやって来るとは限らないし、祭りの最中にやって来るとも限らない。だが、常に最悪の状況は想定しておかねばならないだろう。

(それに他にも気になる事はあるんだよな。シトュウさんは、この世界の過去の住人は次元の要所に災厄を封印したと言っていた。そして、キトナさんが言ってた災厄は全部で4つ・・・・・・って事は残る3つの災厄の1つがここに封印されてる可能性もあるって事だ。そして、その災厄がもし祭りの最中に復活したら・・・・・・考えるだけでも面倒だな)

 エリレの時はあまり被害は出なかったが、次も同じように行くとも限らない。祭りで浮かれる町の雰囲気とは反対に、影人は引き締めた気持ちを抱いていた。

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