第1612話 第2の霊地(1)
「皆さんは異世界から来た・・・・・・ですか」
空飛ぶ馬車の客車内。その中でシェルディアの話を聞いたキトナはその顔色を驚きに染めた。
「ええ。と言っても、私は元々こちらの世界出身だから、私だけ出戻りという形になるのだけれどね。私以外の3人はそうなの。中々信じられないでしょうけど・・・・・・あなたとはしばらく旅をするから、本当の事を言っておいた方がいいと思って」
驚くキトナにシェルディアが微笑む。影人たちが何者なのかという真実をキトナに話す事に、影人、ゼノ、フェリートは反対しなかった。
「皆さん只者ではないとは思っていましたが・・・・・・まさかそんな方たちとは思ってもいませんでした。という事は皆さまは吸血鬼ではないのですよね? それでは、皆さまはいったいどういう種族なのですか?」
「嬢ちゃんだけは吸血鬼だがな。俺たちは・・・・・・人間って種族だ。まあ、正確に言えば俺は人間で、フェリートとゼノは闇人ってやつなんだが・・・・ややこしいから括りは人間でいい。俺たち人間にも魔族や獣人族みたいに種類がある。人種ってやつだな。まあ、こっちの世界の種族みたく大きな違いはないんだけどな。せいぜいが肌の色だったり目の色が違うくらいだ」
「人間・・・・・・」
変身を解除し元の姿に戻っていた影人の説明を受けたキトナは、変わらず驚いた顔のままそう呟く。キトナはそれからしばらくの間は衝撃の事実を呑み込むように黙ったままだった。
「異なる世界に異なる種族・・・・・・凄いですね。まさかそんなものが存在していたなんて。ああ、凄い凄いです! 影人さん、よろしければ私に影人さん達の世界の事を教えてくださいませんか!?」
「あ、ああ・・・・・・俺が説明出来る事なら全然いいが・・・・・・というか、キトナさんよくそんなにすぐ信じられるな。いや、別に嘘じゃなくて本当の事だけどよ。その、思考が柔軟というか何というか」
一転、キラキラとした顔になったキトナに影人は感心と不思議さが混じったような声でそう言った。普通、異世界から来たなどという話はそう簡単に信じる事は出来ないはずだ。
「物事を先入観や常識からあり得ないと判断するのは愚かな事ですから。1個人の思考で世界を完全に内包する事など出来はしません。だから、私はどんな可能性も最初は信じる事にしているんです。そして、それが信頼できる方の話ならば余計に」
「なるほどな・・・・・・流石は聡明な王女って感じだな」
「身分は関係ありませんよ。それよりも、影人さん達の世界はどのような世界なのですか?」
我慢が限界といった様子でキトナが影人に質問をぶつける。キトナの様子はまるで演技している時と同じように、子供のようだった。
「俺たちの世界はそうだな。地球っていう星で・・・・・・」
影人は次の目的地に着くまでの間、自分たちの世界の事をキトナに話し続けたのだった。




