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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第160話 実力者たち(1)

「――はーん、なるほどね。光司っちが強くなりたいって理由はわかったよ。しっかし、相変わらず真面目だねー」

「・・・・・・いえ、剱原さん。僕は『騎士』の名を与えられてから、たるんでいたんです。それ以上うえを目指す気持ちも、強くなるって思うことも忘れていました」

 ジョリジョリと無精髭を弄びながら、光司を見つめる刀時。そんな刀時の言葉に光司は静かに反論した。

「そこが真面目だって言ってるんだよ。俺だったらカケラもそんなこと思わないしさ」

「・・・・・・・・じゃあ、剱原さんはどうやってそんなに強くなったんですか?」

「ははっ、別に俺は強くはねえよ。もし、光司っちから見て俺が強く感じるってなら、それは俺が小っさい頃からこのオンボロ道場の古臭い剣術をやらされてきたからだろうぜ」

 そして刀時はそこで言葉を区切ると、未だに納得の出来なさそうな顔を浮かべている光司にこう話を続けた。

「つーか、俺からしてみりゃ光司っちの方が化け物なんだけどなぁ。1年でランキング10位に昇った奴なんて俺聞いたことねえもん。俺、今のランキングになるまで3年はかかったぜ? いや、まあ昇りたくてランキング上位になったわけじゃねえけど」

「・・・・・・・・刀時さんが僕のことをそう思ってくれているのは、嬉しいですし光栄です。なにせ、あなたは守護者ランキング第3位『さむらい』、日本最強の守護者・・・・・・・そんなあなただからこそ、僕はここに来たんです」

 そう。光司の目の前にいるこの男、剱原刀時こそ『巫女』連華寺風音と肩を並べる日本最強の守護者なのだ。光司は前回の扇陣高校の夏の研修で、刀時と面識があった。その際、光司のことを気に入ったらしい刀時から、電話番号と住所を教えてもらっていた。光司はそれを利用して刀時とアポを取り、きょう刀時の実家を訪れたというわけだ。

「うーん、俺も風音ちゃんもそんな実感はねえんだけどなー・・・・・・へへっ、それはそうとして光司っち、できりゃあその名では呼んでくれるな。見ず知らずの光導姫ちゃんや守護者なら仕方ねえけど、知ってる奴からそう呼ばれるのは恥ずかし過ぎるッ!」

「・・・・・? そうですか? 僕はカッコいいと思いますけど」

 いきなり両手で顔を覆いだした刀時。光司には刀時がなぜ恥ずかしがっているのか理解出来なかった。『侍』。とってもカッコいい2つ名であり、守護者名だと思うのだが。

「若い! 若いぜ光司っち! いつかそう言うのが恥ずかしくなるの! 俺はもうすっげぇ恥ずかしい! だから呼ぶなら刀時か剱原な!?」

「は、はあ・・・・・・・わかりました」

 ひとしきり唸る刀時を不思議そうに見る光司。とりあえずそうは言ったが、光司にはやはりなぜ刀時が恥ずかしがっているのかは分からない。

「はあ・・・・・・・・っと、悪い光司っち。話が逸れちまったな。本題は俺が光司っちを強くする・・・・つまり稽古をつけるって事でいいんだっけ?」

「はい。剱原さんの強さは僕も知っていますし、日本で僕よりランキングが高いのは剱原さんだけですから・・・・・・ランキング4位の『死神』は国籍も年齢も全てが不明ですからそこだけは分かりませんけど・・・・・・・」

「まあ、あいつはな・・・・・・・・かわいい後輩の頼みとあっちゃあ断れないが、残念ながら光司っち、稽古って形は無理だぜ。稽古ってのは、例えば俺の場合、古くさい剣術の伝承になっちまう。光司っちには光司っちの戦い方があるだろうし、それは違うだろ?」

 先ほどとは打って変わったように、真剣な表情を浮かべる刀時。刀時が『侍』という名を与えられたのは、刀時の戦い方が自家じかの古流剣術に則ったものだからだ。ゆえに刀時の戦い方は独特といえる。

 ある意味守護者らしい、真っ当な戦い方を自らのスタイルとする光司とはそもそもの戦い方が違うのだ。

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