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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1596/2051

第1596話 メザミアと王女(1)

「ここがメザミアか・・・・・・」

 メザミアに辿り着いた影人はポツリとそう呟いた。目の前に広がっているのは、のどかな田舎町の風景だ。影人から見て左側には畑が広がっており、右側には質素な石造りの家々が見える。そして、奥には古びた遺跡があった。影人の勝手なイメージになるが、西洋の田舎という言葉がピッタリに思える。

「まあ、何て素敵な光景でしょう! 自然がいっぱいで気持ちいいです!」

 影人と同じようにメザミアの風景を見たキトナは、興奮した様子だった。相変わらず、子供のような様子だ。

「ええ、素敵だわ。気持ちがのんびりとしてくるわね」

「確かに、どこか懐かしい光景ですね。ですが、私たちは休暇に来たのでも観光に来たのでもありません。その事は、忘れないように」

「分かっているわよ。じゃあ、早速町の方に行ってみましょうか」

 フェリートの小言に軽く頷いたシェルディアが街の方へと歩いて行く。影人、ゼノ、フェリート、そしてキトナもシェルディアの後へと続いた。

「そう言えば、皆さんは何をしにメザミアに来られたのですか? 先ほど、休暇でも観光でもないと仰っていましたが」

 歩きながらキトナが軽く首を傾げ、そんな質問をしてくる。案外に耳ざとい。そう思いながら、影人はこう言葉を返した。

「・・・・・・別にあんたには関係ないだろ。そういうあんたこそ、どうしてここに来たかったんだよ?」

 一応、この国の王を脅した一味の1人なので、少しぶっきらぼうな口調を影人は選択した。影人にそう言われたキトナは笑顔を浮かべこう答えた。

「私、ずっと遺跡という所に行ってみたかったんです。秘密基地みたいで楽しそうと思って。それで、メザミアには遺跡があると前に本で読んだ事があったので、私もここに来たいなと」

「・・・・・・ふーん。そうかよ」

 キトナの答えを聞いた影人は自分から聞いたのに、あまり興味もなさそうに相槌を打った。恐らくだが、嘘はついていないだろう。そして、そうこうしている内に影人たちはメザミアへと到着した。

「町・・・・・・って言うよりかは村って感じだな」

「だね。住人の服装も質素だし、何か昔にタイムスリップしたような気分だ」

 影人の呟きにゼノが同意を示す。往来にはメザミアの住人たちがおり日常を過ごしていた。大人たちは話をしたり買い物をしたり、子供たちは遊んだり走り回ったりと。

「ん? 何だあんたら? 見ねえ顔だな。それにそこの姉ちゃん除いて頭に耳もねえし・・・・いったい何者なにもんだ?」

 影人たちがメザミアの入り口にいると、鍬のような物を持った中年の男性がそう言葉をかけて来た。男性の言葉からは、隠しきれない不審感が滲み出ていた。

「こんにちは。実は私たち旅中の吸血鬼でして」

「吸血鬼? それってあれか。血吸うっていう・・・・・・」

「確かに、吸血鬼はそういう生物ですが、皆さんの血を吸うような事はしません。ご安心ください」

 フェリートがニコリと完璧な執事スマイルを浮かべる。それから、男性と少しの間言葉を交わしたフェリートは影人たちにこう言った。

「取り敢えず、この町の町長的な人に会わせてもらえるようになりました。後はその人に事情を話しましょう。ついでに、先程収穫出来たらしい野菜を頂きました。大根に似ていますが、こちらの世界ではダジンコと言うそうです」

「いや、打ち解けるの早すぎだろ。お前、どんだけコミュ力高いんだよ・・・・・・」

 ダジンコなる野菜を見せて来たフェリートに、影人は引いたような顔になる。そんな影人に、フェリートは「交渉術は執事の基本ですからね」と当然のような顔を浮かべた。

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