表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1588/2051

第1588話 異世界でも暗躍を(4)

「っ!?」

「っ・・・・・・?」

 縛られたメザジは意味が分からないといった顔を浮かべ、ヴァルメリアも不可解な顔になる。その光景を見ていた他の者たちも理解不能といった顔になる。

 そして次の瞬間、メザジ以外のヴァルメリアの5人の部下たちも闇色の鎖に拘束された。鎖はヴァルメリアにも放たれていたが、ヴァルメリアは何とか自身の速度で鎖を回避した。

「は・・・・・・?」

「え・・・・・・?」

「な、何だよこの鎖・・・・・・」

 体を拘束された部下たちが戸惑いの言葉を漏らす。そんな時、大会議室の入り口の方からドサッという音が聞こえた。一同の注目がそちらに集まる。すると、そこには先ほど部屋を出て行ったはずのギジが意識を失った様子で倒れていた。

「・・・・・・」

 そして、ギジの横には1人の男が立っていた。黒い鍔の長い帽子を被り、黒衣に身を包んだ金眼の男だ。男はその視線をヴァルメリアに向けると、こう呟いた。

「・・・・・・案外に速いな。正直、避けられるとは思ってなかったぜ」

「貴様・・・・・・何者だ。なぜこの議事堂内で魔法を使える? この建物の中では何人も魔法を使えないはずだ」

 ヴァルメリアが最大限に警戒した様子で男にそう問いかける。その問いかけに黒衣の男は右手で軽く帽子の鍔をつまみながらこう答える。

「・・・・・・別に何者でもない。だがまあ、名前だけなら教えてやる。スプリガンだ。そしてもう1つの質問の答えは・・・・・・多分だが、俺の力が魔法じゃないからだろ」

「スプリガン? 聞かぬ名だな・・・・・・そして、魔法ではないだと・・・・・・? ふざけるな。このような力魔法以外に・・・・・・」

「お前の見解なんてどうでもいい。お前らみたいな奴らと遊んでる時間はないんだ。だから・・・・・・さっさと負けろよ」

 黒衣の男――影人の姿がヴァルメリアの視界内から消える。影人は神速の速度でヴァルメリアの背後を取り、ヴァルメリアに背を向けながらそう言葉を述べた。

「なっ・・・・・・!?」

 影人の速さに反応出来なかったヴァルメリアが信じられないといった表情で振り返る。『迅撃』の2つ名を持つ自分が全く反応出来なかった。ヴァルメリアはその事実を受け入れる事が出来なかった。

 そして、

「終わりだ」

 影人は右の拳を振り向いたヴァルメリアの腹部に穿った。当然ながら、ヴァルメリアは影人の拳に反応出来なかった。

「がっ・・・・・・」

 結果、ヴァルメリアは影人の拳を受け、その意識を暗闇に引き摺り込まれた。影人は意識を失ったヴァルメリアを抱き止めると、闇色の縄を創造しヴァルメリアを縛り床に転がした。

「なっ・・・・・・」

「信じられん・・・・・・あの『迅撃』を一撃で・・・・・・」

「嘘だ、お頭が一撃でやられるなんて・・・・・・」

 その光景を見ていた各国家の代表や鎖で縛られていたヴァルメリアの部下たちは呆然としていた。

「・・・・・・後はお前らだけか」

 影人は縛っていた者たちに視線を向けると、ヴァルメリアと同じようにそれらの者を気絶させていった。そして、それらの者たちとギジを闇色の縄で縛りヴァルメリアの側に纏めた。

「・・・・・・階下にいた奴らも同じようにしてある。さっさとどこかにぶち込む事を勧めるぜ」

 影人は代表たちにそう告げると、背を向け会議室から出て行こうとした。一応、まだ賊がいる可能性を考慮し階下に闇の騎士を2体ほど残していたが、この様子だと残党はいないだろう。ゆえに、影人は階下にいた騎士たちを消した。

「待ってくれ! 君はいったい・・・・・・!」

 魔族代表の男が影人にそう言葉を掛ける。それは反射的に出た言葉だった。だが、全ての代表たちの心を代弁する言葉だった。

「・・・・・・さっき言っただろ。俺はスプリガンだ。それ以上でもそれ以下の者でもない」

 半身振り返りそう答えた影人は、その姿を透明化の力で消しその場を去った。

「消えた・・・・・・」

「我々は夢でも見ているのか・・・・・・?」

 残された代表たちは呆然とした顔でそんな言葉を漏らした。













「・・・・・・悪い。遅くなった」

 議事堂から出た影人はシェルディアたちがいた場所まで戻った。変身はまだ解いていない。スプリガン姿のままで。

「お帰りなさい影人。本当に遅かったわね。何かあったの?」

「まあちょっとな。でも、大丈夫だ。大した問題じゃなかったから」

「そう? それならいいけど」

 影人の答えを聞いたシェルディアはそれ以上深くは聞かなかった。影人に嘘をついている様子はなかったからだ。その事は、影人があのテロ事件を本当に大した問題ではないと思っている事を暗に証明していた。

「それで、地図は?」

「ちゃんと創ってきた。ほらよ」

 そう聞いて来たゼノに影人は地図を見せた。フェリートとシェルディアもその地図を見た。

「へえ、今はこんな風になってるのね。ここから1番近い国は・・・・・・獣人族の国みたいね」

「獣人族の国の目的地の名前は、確かメザミアという所でしたね。世界地図なので、一国家の詳しい地名は載っていませんが・・・・・・取り敢えず、そこを目指す感じでしょうか」

 シェルディアとフェリートがそれぞれ感想を呟く。フェリートは続けて影人にこう聞いて来た。

「この地図はずっと残り続けるのですか?」

「俺が変身してる間はな。だから、次の目的地に行くまでは変身し続ける。変身解除しても、1回見た物は創れるから心配はいらねえよ。取り敢えず、地図は嬢ちゃんに渡しとくぜ」

 影人が地図をシェルディアに渡す。影人から地図を受け取ったシェルディアは「分かったわ」と頷いた。

「では、まずは獣人国家のメザミアを目指して旅をしましょうか。メザミアという名の土地は私がいた時にはなかったから転移は出来ないのが残念だけど。まあ、道中に色々と聞いてみましょう」

「そうですね。獣人族国家はここから西のようですから西に進めば着くはずです」

「西側となると、ヘレナとハルの家がある住宅街エリアの方ね。じゃあ、そちらの方から外に出ましょうか。行くわよ、あなた達」

 フェリートの言葉を聞いたシェルディアはそう言って歩き始めた。フェリート、ゼノ、影人はシェルディアの後に続く。

「・・・・・・」

 影人は最後に議事堂の方にチラリと視線を向けた。すると、警官と思われるような者たちが議事堂へと入って行くのが見えた。恐らく、誰かが知らせ、あのテロリストたちを回収しに行ったのだろう。これで、ヘレナとハルの平穏は脅かされないはずだ。その事を確認した影人は視線を議事堂から外した。


 ――こうして、一同はキリエリゼを後にし、獣人族の国家を目指すのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ