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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1587/2051

第1587話 異世界でも暗躍を(3)

「もう1度だけ言おう。諸君らには以下の要求を呑んでもらう。1つ、このキリエリゼの代表を即刻辞退する事。1つ、このキリエリゼの運営権を我らに譲渡する事。ああ、代表を辞退する前に、我らに正式に運営権を譲渡する事を議会で認証していただこう。それが、諸君らの代表としての最後の仕事である」

 キリエリゼ北エリア議事堂2階。大会議室。その円卓に座る魔族、獣人族、翼人族、蜥蜴族、悪魔族、魔妖族の6人の代表たちにサーベルを向けながらそう言ったのは、獣人族の女だった。その証拠に頭には狼のような耳がある。その女は20代半ばくらいの赤髪のロングストレートの美人で、右目には黒い眼帯を付け、その顔に嗜虐的な笑みを張り付かせていた。

「ふん、そんな要求を呑めるわけがなかろう!」

 女の要求に対しそう言ったのは魔族代表の5、60代くらいの男だった。男は毅然とした態度で女の要求を拒絶した。他の種族の代表たちも女を睨みつけていた。代表たちは椅子に座らされ、女の手下である者たちに剣を向けられているにもかかわらずにだ。そこには、各国家を代表する気概と誇りなどの強い気持ちがあった。

「ふむ、流石は代表。気概がある。だがしかし・・・・・・」

 女は感心したようにそう呟くと、目にも止まらぬ速さで魔族の男の右の人差し指を折った。

「ぐあっ!?」

「何か勘違いしているようだ。我々は要求を呑めと言っている。そういった言葉は求めていないのだよ。わざわざもう1度言ってやったというのに・・・・・・いやはや、代表殿は案外に頭が悪いらしい」

 突然指を折られ呻いている男を見ながら、女は呆れたようなバカにするような顔を浮かべた。

「次は折るだけでは済まないよ。分かったな?」

「ぐっ・・・・・・」

 一転、冷めたように忠告の言葉を投げかける女。そんな女を男は見上げる事しか出来なかった。

「長い赤髪に黒の眼帯・・・・・・お前は『迅撃じんげき』だな。全国家から指名手配されている、盗賊まがいの傭兵団・・・・・・『ライゼルの収奪者』。それを束ねる最悪の犯罪者め・・・・・・!」

「おや、流石は同郷の代表殿。私の事をご存知か」

 獣人族の代表である屈強な男が女の素性を言い当てる。獣人族の代表にそう言い当てられた女は小さな笑みを浮かべた。

「だが、『迅撃』という呼び名はあまり気に入っていないのだよ。私にはヴァルメリアという名前があるのだから」

「お前の気にいる呼び方などどうでもいい。目的はなんだ? お前たちのような小悪党が、なぜキリエリゼ議会の占拠などという事をする?」

 獣人族代表の男がそんな質問をヴァルメリアに飛ばす。男の言葉を聞いたヴァルメリアは笑い声を上げた。

「はははっ! 小悪党か。言ってくれる。やはり、諸君らは気概がある。だがまあ、謹んでその呼び名を頂戴しよう」

 ヴァルメリアは余裕たっぷりにそう言うと、こう言葉を続けた。

「さて、私たちの目的だったね。まあ、気まぐれだよ。ちょっと国取りでもして、大きな争いでも引き起こそうかなと。ほら、私たちのような者たちからすれば、乱世の方が儲かるだろ? それくらいの軽い理由さ」

「クズめ・・・・・・! 貴様らのその気まぐれでいったいどれだけの被害が出ると思っている!」

 背中から白い翼を生やした30代半ばくらいの女性――翼人族の代表がそう言葉を叫ぶ。その言葉を受けたヴァルメリアはフッと笑みを浮かべる。

「知らないな。そして興味もない。さて、ではそろそろ話は終わりだ。代表諸君、これが最後通牒だ。私の要求を呑まないのならば、まず1人殺す。そして、階下にいる職員たちも殺す。ああ、彼らは1人ずつじゃなくて皆殺しだ。残す意義もないからね。抵抗はお勧めしない。諸君らも知っての通り、この議事堂内は争いが起きないよう魔法が使えないようになっているからね。そして、魔法抜きで諸君らが私たちに勝つ事は不可能だ」

「「「「「「っ・・・・・・!」」」」」」

 ヴァルメリアが代表たちを冷たい目で見渡しそう宣言する。その言葉が本気だと理解させられた代表たちはその顔に最も強い緊張の顔を浮かべる。

「・・・・・・俺たちがお前らの要求に屈する事はない。俺らは国家を代表してこの都市を任されたんだ。そういうこった。諦めやがれクソッタレ」

「右に同じく。ここであなた達に屈すれば、より死者が出る。了承する事は出来ない」

 黒翼にツノを生やした初老くらいの男――悪魔族の代表と、真っ白な長髪に白を基調とした20代半ばくらいの女――魔妖族の代表がヴァルメリアの言葉に答える。2人の言葉は各国家代表たちの意見らしく、他の代表たちは2人に対し何も言わなかった。

「・・・・・・そうか、残念だ。最後に、その理念だけは立派だと言っておこう。まあ、死ねば何の役にも立たないがね。ギジ、下に言ってマザヘたちに全員殺せと伝えろ。そしてメザジ、悪魔族の代表を殺れ」

「了解っす」

「ああ」

 ヴァルメリアの言葉を受け、ギジと呼ばれた連絡係の獣人が部屋を出る。メザジと呼ばれた全身緑の鱗に覆われた蜥蜴族の男が、持っていた剣を背後から悪魔族の代表の背中に向かって突き刺そうとする。場に悲壮な空気が漂い始め、悪魔族の代表が「ここで終わりか・・・・・・」と呟いた時、


 突如として、虚空から闇色の鎖が出現し剣とメザジを縛った。

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