第1582話 忌神の目的(2)
影人がシトュウを通して零無に聞いた事は主に2つ。1つは、どうしてフェルフィズは次元の境界を不安定にさせたのか。2つ目はフェルフィズは具体的に、どうやって次元の境界を不安定にさせたのかという事だ。
そして、影人はその答えを得た。フェルフィズには影人たちの世界を滅亡させたいという願望があるという事。次元の境界を不安定(零無が言うには壊したかったようだが)にさせたのは、この世界と影人たちの世界の壁を取り払い影人たちの世界に混乱と破壊をもたらしたかった。正直、その話を聞いた時影人はあの狂神が願いそうな事だと思った。
もう1つの次元の境界を不安定にさせた方法は、力ある土地、すなわち次元の要所となる場所に道具を突き刺し境界を不安定にさせたというもの。
それらの事を聞き、影人はフェルフィズがこちらの世界に逃げた理由にこう予想を立てた。
フェルフィズは、こちらの世界の次元の要所を不安定に、もしくは壊すつもりだと。
そうすれば、今は不安定で済んでいる影人たちの世界とこの世界との境界が完全に壊れる。そうすれば、フェルフィズの目的は果たされる。ゆえに、影人たちは旅の目的を、こちらの世界の次元の要所を巡る事に定めたのだ。そこにフェルフィズが現れると影人たちは考えた。
まあ、零無が言うには次元の要所を不安定にさせる道具はもうないから、フェルフィズが次元の要所を不安定にさせる事は出来ないらしいが、影人はフェルフィズならば要所を不安定にする事が出来ると、嫌な確信を抱いていた。
「取り敢えず、5つの最も力ある土地に俺たちは行くつもりだ。ウリタハナ、シザジベル、メザミア、テアメエル、ヘキゼメリ・・・・・・だったか。どんな場所か分かるか?」
シトュウに全知の力を使ってもらい、こちらの世界の境界を不安定にさせるには最低5つの場所に干渉しなければならない事が分かった。その土地の名前も同じくシトュウに調べてもらった。
「ウリタハナは魔族国家の古地ですね。シザジベルは翼人族国家の聖地だったと思いますが・・・・・・」
「メザミアは獣人族国家の西の方の場所な感じです! テアメエルは確か魔妖族国家の島の名前だったと思います。ヘキゼメリは・・・・・・すみませんが、聞いた事がないです。ヘレナは聞いた事ある?」
「いや、私も聞いた事ない」
ハルの問いかけにヘレナが首を横に振る。その答えを聞いた影人は、「そうか。ありがとう」と礼を述べた。
「そうだ。聞きたかったのだけれど、地図を持っていない? 地方とか国の地図じゃなくて、いわゆる世界地図の方を」
「世界地図はすみませんが持ってないですね。ですが、キリエリゼ北区画の議事堂の1階広間に展示されています。朝から夕方までは解放されていて、誰でも入る事が出来ますから、よければそちらを」
「ありがとう。なら、早速明日に行ってみるわ」
水を飲んだヘレナがそんな情報を教えてくれた。その情報を得たシェルディアが今日何度目となる感謝の言葉を述べる。それから食事はつつがなく行われ――
「・・・・・・遂に来ちまったか。この時間が・・・・・・」
夜も更けた。影人は、ハルとヘレナに用意された部屋の前で緊張したように、覚悟したようにそんな言葉を漏らした。影人がそんな声を漏らした理由は、今日この部屋でシェルディアと共に朝まで過ごさなければならないからだ。そして、既にシェルディアはこの部屋の中にいる。
(マジで何でこんな事になったんだ・・・・・・)
理由は分かっている。昼間に突然シェルディアが部屋割りを勝手に決定したからだ。影人は流石にシェルディアに猛抗議したが、シェルディアは聞かなかった。ゼノは興味がなさそうに、フェリートだけは影人と同じく反対と言ってくれたが、シェルディアに本気の重圧をぶつけられ、フェリートは引き下がった。結果、影人はシェルディアと同じ部屋になった。




