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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1581/2051

第1581話 忌神の目的(1)

「――あら美味しい。このスープ、キノコのいい風味が出ているわね」

 夜。影人たちはハルとヘレナと一緒に夕食を囲んでいた。シェルディアは木製のスプーンでクリーム色のスープを口に運ぶと、そんな感想を漏らした。

「お口にあったなら嬉しいです。おかわりもありますから、どんどんどうぞ」

 シェルディアの感想を受けたヘレナが笑みを浮かべる。今日の料理当番はヘレナでハルはその補助だった。食卓にはキノコのスープ以外にも、何かの肉の香草焼きやパンなどが並んでいた。

「うん、本当に美味いな」

「ええ、キノコのスープは野生味がいい意味で味のアクセントになっていますし、こちらの香草焼きは何とも言えぬ絶妙な香りが鼻を抜け、嗅覚でも味わえる。とても美味しいです」

「・・・・・・」

 ゼノとフェリートも満足そうな顔で食事の感想を漏らす。影人もスープとパンは食べていたが、香草焼きだけはまだ食べてはいなかった。単純に何の肉か分からないからだ。影人にとって、それは少しの恐怖だった。

「あ、お肉は苦手でしたか? ええと・・・・・・」

「・・・・・・帰城だ。帰城影人。いや、別にそういうわけじゃないんだが・・・・・・」

 そんな影人の様子に気づいたのか、ヘレナがそう聞いてくる。ヘレナの言葉を理解した影人は、軽くかぶりを振る。

 ちなみに、今まで異世界の言語が分からない影人がなぜ今はその言語を理解しているのかというと、それは影人の右手人差し指に嵌められた黒い指輪に理由があった。

 その黒い指輪はいわゆる魔道具と呼ばれる特殊な物で、シェルディアが影人に渡したものだ。その効力は「着用者は視界内に映る対象の意思伝達手段を円滑に理解する事ができ、また自身の意思伝達手段を視界内に映る対象に円滑に理解させる事が出来る」というもので、ざっくり言ってしまえば視界内に映る者の言語を理解でき、影人の言葉も相手に伝わるというものだった。

 要は痒いところに手がジャストミートしまくる超便利アイテムだった。昼の話し合いの時にシェルディアが困っているみたいだからと影の中から取り出して渡してくれたのだが、シェルディアにこれを渡された時、影人は思わず「嬢ちゃんはドラ◯もんかよ・・・・・・」と呟いたものだ。そのため、影人の異世界における言語問題は解決していた。

「別に変な肉じゃないから食べなよ。俺たちのいた所で言う牛肉に近い感じだし。食べても死なないよ」

「う、うるせえよ。別にビビってねえし・・・・・・い、いただきます」

 ゼノの指摘が図星だった影人は軽くムキになると、木のフォークで香草焼きの一部分を突き刺し食べた。

「っ、美味い・・・・・・」

「あ、それは良かったです。この赤牛の香草焼きは母から教えてもらった自慢の料理なんです。そう言ってもらえたら、母も喜びます」

 ゼノが言っていたように、肉は牛に近い食感で味もとても美味しかった。影人の言葉を聞いたヘレナはホッと安堵したような顔を浮かべた。

「そういえば、皆さんは旅をしていると仰っていましたけど、どこを目指されて旅をしていらっしゃるんですか?」

 ハルが話題として影人たちにそんな事を聞いてくる。ハルの質問に代表して答えたのはシェルディアだった。

「巨大な見えない力を秘めた場所・・・・・・そこにちょっと用があってね。私たちが捜してる者がそこにいるかもしれないの」

「巨大な見えない・・・・・・」

「力を秘めた場所ですか・・・・・・?」

 ハルとヘレナがよく分からないといった顔を浮かべる。そんな2人に今度は影人が言葉をかけた。

「ああ。霊地とか巨大な地脈、龍脈の通り道とか呼ばれるような場所だ。要は、その土地自体が霊験あらたか・・・・・・力ある土地に行く事が、俺たちの旅の目的なんだ」

 そう。それが昼間にシトュウから零無に聞いてもらった事を踏まえて影人たちが下した1つの答え。当面の旅の目的だ。

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