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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1580/2051

第1580話 複合都市 キリエリゼ(4)

「・・・・・・馬鹿にするでも呆れるでもありませんが、よくもまあさっき会ったばかりの者たちを家に置いて出掛けられますね。シェルディア様が恩人だという事を差し引いても、色々と度を超えている気がしますよ」

「いい子たちよね。おかげで今日の宿も確保出来て、お茶も飲めるし。あら、美味しいわねこのお茶。紅茶と似ているけど、風味が少しスパイシーという感じね」

 ローテーブルの周りにあったイスに座りながら(イスは2脚しかなかったので、シェルディアが影からイスを2脚出した)フェリートが軽く息を吐き、シェルディアはお茶を啜る。異世界に来て体感にして約2時間ほどでテーブルを囲んでお茶を飲んでいるという光景は、何だか異世界にいるような感覚がしなかった。少なくとも、影人はそう思いながら茶を啜った。

「確かに嬢ちゃんの言う通りちょっとスパイシーだな・・・・・・で、これからどう動く?」

 影人がシェルディア、フェリート、ゼノに話題を振る。最初にその言葉に反応したのはフェリートだった。

「まずは情報収集でしょう。フェルフィズは私たちと同じで、その身体に特徴がないというのが特徴です。彼が変装か何かしていない限りは、聞き込みをすれば分かる可能性がある。このキリエリゼという都市で情報が集められなければ、次の町に。恐ろしく手間がかかりますが、それを繰り返すのが1番マシな方法でしょう」

「それ、とんでもなく面倒くさいね。嫌だなー」

 フェリートの言葉を聞いたゼノが素直にそう言った。

「仕方ないでしょう。手掛かりが何にもないんですから。というか、あなたにだけは言われたくないですね。あなたを捜していた時も、私は地道にそうしていたんですから。はあー、せめて少しでもフェルフィズがいる場所を予想できれば楽なんですがね・・・・・・」

「フェルフィズがいる場所を予想か・・・・・・」

 フェリートが漏らした呟きに影人が思案するように顎に手を当てる。フェルフィズはこちらの世界に逃げて来た。影人たちはそのフェルフィズを追いにこちらの世界に来た。ゆえに、今フェリートが言ったように手掛かりは何もない。


 そう、()()()()()


(これは俺の勘でしかないが、俺にはあいつがたまたまこの世界を逃げ先に選んだとは思えない。あの性格が終わってるクソ野郎が、たまたま逃げ先を違う世界に選んだのには何か理由があるんじゃないか? 考えろ、考えろ帰城影人。今までの事を考えれば、答えは出てくるはずだ)

 フェルフィズは何をした。この世界と影人たちの世界との境界を不安定にした。その結果、影人たちの世界に【あちら側の者】たちが現れるようになった。だが、零無曰くその流入はこの世界から影人たちの世界への一方的なもの。その逆は起こらない。

 フェルフィズはなぜ次元の境界を不安定にさせる事が出来た。零無がその道具をフェルフィズに与えたからだ。しかし、その道具で具体的にどう次元の境界を不安定にさせたのかは分からない。

(なぜフェルフィズは次元の境界を不安定にさせた? 多分、そこにフェルフィズの目的があるはずだ。だけど、あと1つ材料が足りない。あと1つの材料は多分零無だ。それは分かってる。あいつはフェルフィズと昔から知り合いで言葉を交わしていた。そこにヒントがある。だが、あいつは向こうの世界だし・・・・・・どうにか材料を調達出来る方法は・・・・・・っ、そうだ・・・・・・)

 集中し思考していた影人は、その材料を調達する方法を思いついた。

(また頼っちまう事になるが仕方ねえよな。――悪い、シトュウさん。今ちょっといいか?)

 影人が内心でシトュウに呼びかける。すると、影人の中にシトュウの声が響いた。

『何でしょうか、帰城影人。何か問題でも?』

(問題ってほどじゃない。なあ、シトュウさん。悪いが零無に念話して今から俺が言う事を聞いてくれないか? どうしても必要な事なんだ)

『必要な事ですか・・・・・・まあ、いいでしょう。それで何を聞けばいいんですか?』

 シトュウは少し呆れたような様子だったが、影人の頼みを了承してくれた。影人はシトュウに零無へ聞く事を伝えた。

(――って事を聞いてくれ。じゃ、頼んだぜシトュウさん)

『・・・・・・分かりました。零無に聞き次第、あなたに伝えます』

 影人がシトュウとの念話を一旦終える。影人が思わず「よし・・・・・・」と言葉を漏らすと、シェルディアが不思議そうに首を傾げた。

「どうかしたの影人?」

「ああ、ちょっとシトュウさんと念話をな。まあ、その事はもうちょっと後で話すから今は気にしないでくれ。色々と憶測の段階だからさ」

「そう? 分かったわ。取り敢えず、私は地図が欲しいわね。今のこの世界がどうなっているか大体分かるし。ハルとヘレナが戻って来たら、地図がないか聞いてみましょう」

「あ、そうだ。部屋割りどうする? 部屋が2つだから、2人2人で分かれるよね?」

 ゼノがそういえばといった感じで3人にそんな事を聞いて来た。正直、今はそんな話はどうでもいいといえばどうでもいいのだが、ゼノはマイペースな性格なので、問いかけの重要性などはあまり気にしていなかった。

「は? いや、流石に嬢ちゃん1人で俺ら3人の部屋分けだろ。狭いとかそういう問題じゃなくて」

「女性と男性が同じ部屋で寝るというのは、常識的に考えてよい事ではありません。なので、帰城影人の言う通りの部屋割りが最善です。まあ、帰城影人と同じ部屋というのは少し癪ですが、そこは我慢しましょう」

 影人とフェリートが珍しく意見を一致させる。2人の意見は現代の倫理観的には妥当なものだ。逆にゼノが少しズレている。そのゼノは「そうなの? まあ、俺は何でもいいけど」と反応を示した。

 部屋割りの問題はこれで普通に終わる。影人やフェリートがそう考え、次の事を思考しようと思った時だった。突然、シェルディアが、

「あら、1人と3人なんてバランスが悪いわ。私と影人が同じ部屋で寝るから、フェリートとゼノはもう1つの部屋で寝なさいな。それで決まりよ」

 そんな言葉を放った。

「・・・・・・・・・・・・え?」

 その言葉を聞いた影人はいっそ間抜けな声を漏らし、固まった。


 ――ラブコメの気配は突然に。

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