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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1579/2051

第1579話 複合都市 キリエリゼ(3)

「ここは憩いの場と見受けるけど、いる者たちの顔はそれとは程遠いわね。何かあったのかしら?」

 シェルディアが鎌をかけるではないが、婉曲気味にヘレナにそう聞いた。すると、ヘレナとハルは困ったような顔になりある事を教えてくれた。

「実は・・・・・・ここ最近奇妙な事件が起きているんです。何の前触れもなく空間に亀裂が奔り、近くにいた者たちを吸い込むという・・・・・・人々はその現象を空失と呼んで恐れているんです」

「私たちも噂話くらいしか知らないんですけど、吸い込まれた人たちは全然知らない場所に飛ばされるとかなんとか。今、キリエリゼの議会では空失の事がずっと話題になってるって話です」

「・・・・・・なるほど。それは怖いわね。教えてくれてありがとう」

 シェルディアは2人に礼の言葉を述べる。シェルディアと同じく何かに気がついていたフェリートも「やはり・・・・・・」という言葉を漏らしていた。

「皆さんも気をつけてくださいね。さあ、では西の居住区画に行きましょう。私とハルが住んでいる家もそこにありますので」

 ヘレナは影人たちに注意を喚起すると、町の西側に向かって歩き始めた。ハルもヘレナに続き、影人たちも町の西側へと向かう。

「着きました。ここが私たちの家です!」

 それから約15分ほどだろうか。石造りの家に囲まれた道を歩き何本か小道に入ると、ハルがある一軒の家に紹介するように手を向けた。

 そこは2階建ての民家だった。2人で住んでいるにしてはけっこうな大きさだ。屋根は赤く、壁はクリーム色に塗られていた。

「素敵なお家ね」

「ありがとうございます。私とハルもこの家は気に入っているのでそう言ってもらえると嬉しいです。さあ、どうぞ中へ」

 シェルディアの感想に嬉しそうな顔になったヘレナが懐から鍵を取り出し、ドアの鍵穴に入れる。カチリと小気味のよい音を立てドアは開錠された。

「お邪魔しますっと・・・・・・」

 影人はそう言って家の中に足を踏み入れた。玄関、というか生活スタイルは西洋式なのか靴を脱ぐ場所は見当たらなかった。ハルとヘレナも土足のまま家の中へと入っていく。西洋出身のフェリートとゼノも気にせずそのまま、世界中を巡った事のあるシェルディアも普通に進んでいく。唯一日本人である影人だけは違和感を中々拭えなかったが、郷に入りては郷に従えというので、影人も土足のまま中に進んだ。

「私たちの部屋は2階にあるので、皆さんはこの部屋を使ってください。隣に同じ部屋がもう1つあるので、そちらもどうぞ。ですが、ベッドは各部屋1つずつしかないので、その辺りはすみませんが上手くしていただけると・・・・・・」

 廊下を進んだ奥の部屋の1つを開け、ヘレナがそう説明する。部屋の中は6畳ほどの大きさで、ベッドが1つと緑のソファが1台だけあった。

「いえ、充分よ。本当に感謝するわ」

 すっかりこの一行の代表と化したシェルディアが笑顔を浮かべる。そして、4人は居間へと通された。居間はけっこうな広さで、床にはピンクのカーペットが敷かれ、2人がけのイスやテーブル、薄長いローテーブルや本棚などがあった。

「皆さんしばらくの間自由に寛いでください。私とハルは夕食の用意のために少し買い物をしてきますので。あ、お茶を用意しますね。少し待っていてください」

「買い物だったら別に私たちもご一緒しますが・・・・・・」

「大丈夫です! お客様にそんな事はさせられませんから! ではではごゆっくり!」

 ヘレナは台所にお茶を入れに行き、フェリートはそう言葉をかけようとしたがハルがぶんぶんと被りを振った。そして、あれよあれよという間に4人分のお茶が木のコップに入れられ用意され、ヘレナとハルは買い物に出掛けて行った。

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