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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1573/2051

第1573話 ハロー、異世界(1)

 異世界への門を潜った影人たちは一瞬眩い光に目を細めた。光は徐々に収まっていき、やがて周囲は薄暗い暗闇に包まれる。異世界に来て初めて影人たちの視界に映ったのは、どこかの広い室内のような場所だった。影人たちが使った門はすぐに消えた。

「っ、ここは・・・・・・どっかの遺跡の中か?」

 周囲を軽く見渡した影人がそんな言葉を漏らす。薄暗いのであまり見えないが、この空間は古い石で形作られている。そして、四方を囲む壁にはうっすらとだが何かの紋様や、壁画のようなものが描かれていた。

「そうね。見覚えはないけど、そのような場所だと思うわ」

 シェルディアは影の中から電気タイプのランタンを取り出し辺りを照らしながら、影人の呟きに同意を示した。

「真っ暗闇ではないという事は、どこかに光がありますね。どこかの地下遺跡という感じではなさそうだ」

「ふーん・・・・・・」

 フェリートも周囲を観察し分析の言葉を述べる。ゼノは特に言葉を発さず周囲を見渡していた。

「取り敢えず外に出ましょうか。私がこちらの世界を去ってどれくらい変化したのか、どれくらいの時が経ったのかは分からないけど、まずはフェルフィズについての情報収集をしなければならないし。栄えている場所を目指しましょう」

「そうだな」

 シェルディアの提案に影人が頷く。フェリートやゼノも頷きはしなかったが、シェルディアの提案に納得している様子だった。

「出口はあそこみたいね。行ってみましょう」

 シェルディアが正面を指差す。ランタンで照らされた先には通路があった。シェルディアを先頭に影人たちは通路を目指した。

 通路は一本道で通路の壁面にも紋様や壁面が描かれていた。それらが何を意味するのかはシェルディアにも分からないらしい。

「ああ、光が見えるわね。あれが外への出入り口のようね」

 少しの間通路を進むと小さな部屋に出た。そこには木の枝か何かで遮られた出入り口のようなものがあり、そこから室内へと光が入って来ていた。

「そのようですね。シェルディア様、素朴な疑問なのですがこの世界にも太陽はあるのですか? あの光が太陽光かどうか私たちには分からないものですから」

「ええ。朝と夜のサイクルは基本は変わらないわ。まあ、一部の地域は例外だけど」

「なるほど。でしたら、この世界は地球と同じ太陽系の惑星の1つという可能性と、別次元もしくはいわゆる並行世界の太陽系という可能性がありますね」

 シェルディアの問いかけからフェリートがそんな推論を立てる。今の問答だけでよくそんな事を考えられるなと影人はフェリートに感心した。さすがは執事。頭がいい。

「さあ、どうでしょうね。私はそんな難しい事考えた事はないから分からないけど。まあ、今はそんな事よりも早く外に出てみましょう。私もこの世界は本当に随分と久しぶりだから、どんな世界になっているのか楽しみだわ」

 シェルディアはワクワクを隠しきれない様子で、出入り口に向かいそこを遮っていた木の枝を軽く振り払った。それだけで、木の枝はバキバキと音を立て地面に落ちた。さすがの吸血鬼の真祖の怪力である。シェルディアが外に出る。それに続いて影人たちも遺跡と思われる室内から出た。

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