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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1570/2051

第1570話 あちら側の世界へと(2)

「で、どうやって向こう側の世界に行くつもりなんですか? というか、この事は私以外に話したんですか?」

「シトュウさんと零無には話した。後はまた後日って感じだな。向こう側に行く方法は、シトュウさんに向こう側の世界に行くための門を開いてもらうって感じだ。シトュウさんもシトュウさんで忙しいのに、頼りっぱなしなのは申し訳ないんだがな」

「それはそうですね。ですが、異世界への扉を開くなどという所業はシトュウ様や他の真界の神々の皆様くらいしか出来ないでしょうし・・・・・・とにかく、それは分かりました」

 ソレイユは頷くと、他にも気になっていた質問を影人にぶつけた。

「いつから出発する予定なのですか? 1人で異世界に行くつもりなのですか? それと、あなたの日常・・・・・・ご家族や学校などへの説明は?」

「出発の予定は出来るだけ早く、準備が整い次第って感じだ。メンバーは、出来れば向こう側の世界を知ってる者・・・・・・嬢ちゃんかシエラさんをガイドとして連れて行きたいってのが理想だが、断られたら1人って感じかね。まあ、あんまりその辺りは考えてねえよ。で、最後の質問なんだが・・・・・・俺もまだそこだけは悩んでるんだよな。母さんや穂乃影にだけは本当の事は言えねえし」

「ああ、あなたはまだ穂乃影に自分の正体を伝えていないのですね。別に光導姫だった穂乃影になら教えても問題はないのでは?」

「言えねえよ。あいつにだけは。俺の兄としての最後の矜持だ」

 影人は即座に被りを振った。穂乃影にだけは、自分がスプリガンだと言うつもりはない。穂乃影がその事実を受け止められないほど弱いとは影人は思っていない。

 だが、影人は穂乃影には自分の事で色々考えてほしくないと考えていた。穂乃影は優しいから、きっと影人なんかの事を心配したりしてくれるだろう。妹に心配をかけたくないというのが兄心というものだ。だから、影人はそう決めていた。

「そう言えば少し話はズレるんだが、お前穂乃影にもまた光導姫になってほしいって声かけたのか? 最近またゴタゴタが多すぎて聞けなかったがよ」

「それはまだですが、彼女はランカーだったのでもちろん声はかけるつもりです。あなたの立場からすれば、複雑でしょうが・・・・・・」

「そうか・・・・・・悪い、別に責めてるとかじゃねえんだ。あいつだけ聞かないのはそれはそれで不公平だしな。ただ気になっただけだ。あいつがまた戦う決断をしようがしまいが・・・・・・俺は穂乃影の判断を尊重するつもりだからな」

 穂乃影も1人の人間だ。その意思を考えを否定する権利は影人には、いや誰にもない。まあ、他者の意思を否定する戦いという行為をとって来た影人がそう思う事自体矛盾しているかもしれないが、人間は矛盾だらけの生き物なので、問題はないだろう。

「あ、でも穂乃影が光導姫に戻る事決めたら俺に教えろよ。後は前にも言ったかもだが、穂乃影がピンチになったらすぐ教えろよ。光導姫と守護者のピンチを影から助けるっていうスプリガンの仕事を、いつもより気合いと殺意と私情入れてやるから。異世界に行ってても駆けつけるからな」

「殺意いります・・・・・・? 案外にあなたは兄バカですね。ですが、分かりました」

 ソレイユがくすりと小さく笑う。そして、ソレイユは少し真面目なそれでいて不思議そうな顔を浮かべ、影人にこんな事を聞いた。

「ねえ影人、なんでわざわざあなたは私を呼んだの? 話だけなら、別に念話でも済んだでしょ。だけど、あなたは私と対面してこの話をした。それはなぜ?」

 敢えて昔の、素の口調に戻したソレイユが影人をジッと見つめる。春の夜風がソレイユと影人の髪を揺らす。影人は少しの間その風に心地良さを感じるように前髪の下の目を細めると、口を開いた。

「・・・・・・お前には対面で言ったほうがいいと思っただけだ。どれくらいの期間になるのかは分からないが、多分俺はしばらくこの世界から消える。もちろん、何かあったらフェルフィズを捜索中でもこの世界には帰ってくるつもりだ。俺はシトュウさんと念話が出来るからな」

 春の夜風が揺らす葉の音だけが公園に響く。そんなさざめきの中で、影人は言葉を紡ぎ続けた。

「・・・・・・俺は1度この場所でお前を泣かせてこの世界から消えた。だから、それをお前に伝えるのはここが1番いいと思ったんだ。・・・・・・ソレイユ、あの時の俺は2度と帰ってくるつもりなくこの世界から消えた。だが、今回は違う。俺は絶対に帰ってくる。この世界に。俺の日常に。だから、少しの間だけ待っててくれ。俺はそれをお前に伝えたかった」

「っ・・・・・・」

 影人の言葉を聞いたソレイユが驚いたようにその目を見開く。そして、その目に少しだけ涙を溜め満面の笑みを浮かべた。

「もう・・・・・・仕方ないですね。ええ、待っていてあげますよ。あなたのその言葉を信じて」

「ありがとな。お前ならそう言ってくれると思った」

 影人も自然と笑みを浮かべる。ソレイユには恥ずかしくて言えないが、イヴとは違う、もう1人の相棒がそう言ってくれるのなら、自分も安心して思い切って行けるというものだ。

「異世界土産楽しみにしてろよ。出来るだけヤバそうなの持って帰って来てやるから」

「嫌ですよ。土産をくれるのなら、ちゃんとしたもにしてください。じゃなきゃ怒ります」

「なら余計にそうしてやるよ。そんで俺とお前で喧嘩だ。お前とはまだどっちが強いかハッキリさせてねえしな」

「どこの戦闘民族ですかあなたは・・・・・・ふふっ、ですが喧嘩から逃げるのは女神の名折れですからね。いいでしょう、その時は私のフルパワーを見せましょう。私の黄金の鉄拳があなたをダウンさせますよ」

「抜かせ。俺の自慢の拳でカウンターだ」

 しばらくの間、影人とソレイユは他愛のない話をした。何も気を使わずに素直にバカ話を出来る互いの存在に、影人とソレイユは安心感と心地良さを感じていた。

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