第1563話 忌神との戦い2(4)
「ちっ、また逃げやがったか。転移の途中なら捕えられたんだが・・・・・・運のいい奴だ」
転移したフェルフィズに対し影人がそう毒づく。だがまあいい。どうせフェルフィズは逃げる事は出来ないのだから。
「シトュウさん――」
影人はシトュウに念話を試みた。
「ゲホッゲホッ・・・・・・はあ、はあ・・・・・・」
どこかの平地へと転移したフェルフィズが血混じりの咳をする。鎌を杖代わりにしながら、フェルフィズは思考した。
(全く大ピンチですね・・・・・・ですが、レイゼロールのあの言葉を信じるならば、奴らはすぐに現れるはず。また転移をしなければ・・・・・・)
レイゼロールは「お前がどこに逃げても我たちはお前の居場所が分かる」と言っていた。普通ならばフェルフィズを追い詰めるためのブラフの言葉だ。フェルフィズも敵の言葉を信じ切る事は出来ないが、ヒントが何もない今1つの指標にはなる。そして、それを確信に変えたい。フェルフィズはそう考え、いつでも逃げられるように「行方の指輪」に言葉を吹き込んだ。
「・・・・・・よう、また来てやったぜ」
すると少しして、影人たちがまたフェルフィズの前に現れた。やはり、自分の居場所がバレている。フェルフィズは指輪を使ってまた転移した。
「あ、おい・・・・・・ちっ、また逃げやがったか。往生際の悪い奴だな。シトュウさん、何回も悪い。次にあいつが転移した場所まで転移を頼む」
『神使いが荒いですね・・・・・・ですが、分かりました』
影人がシトュウに念話をして、シトュウが了解の言葉を返す。シトュウは全知の力を知ってフェルフィズの場所を識ると、影人たちを転移させた。これが影人たちがフェルフィズを追いかけられている理由だった。
そしてそれから――
「はあ、はあ、はあ・・・・・・」
「・・・・・・鬼ごっこはもう終わりか?」
転移による幾度かの追いかけっこが展開された。最終的に、フェルフィズの指輪が短時間での無理な連続使用によって壊れた事により、フェルフィズはどこかの崖の上へと追い詰められていた。
「え、ええ・・・・・・白状すると、私はもう転移は出来ない。ですので、鬼ごっこは終わりです。ですが、私も大体分かりましたよ。あなた達がどうやって私を追っていたのかが。・・・・・・あなた達は因果のようなものを辿って私を追っていますね。目には見えぬ絶対的な何かの力で。でなければ、気配を隠蔽している私を追えるはずがない」
「・・・・・・どうだかな」
ある意味当たっていたフェルフィズの答えに、影人はそう呟く。フェルフィズはその言葉を聞いて、「その答えだけで充分ですよ」と小さく笑った。
「私が知りたかったのは、確信したかったのはその事ですからね・・・・・・さて、なら非常に嫌ですが最後に賭けといきますか・・・・・・!」
フェルフィズはポーチから2つの小瓶を取り出した。小瓶には黒と赤の何やら液体のようなものが入っていた。
「やらせるかよ・・・・・・!」
「そろそろ、終わりにしましょうか」
「終わりだ・・・・・・!」
フェルフィズの言葉から何か悪足掻きをするつもりだと踏んだ影人がフェルフィズに肉薄する。同時に影闇の鎖も呼び出す。影人に続きシェルディアとレイゼロールもフェルフィズへと近づく。速度の次元が違うフェルフィズは行動を起こす前に捕えられる。
だが、影人たちや鎖がフェルフィズに近づいた瞬間、フェルフィズの姿がフッと煙のように掻き消えた。




