第1561話 忌神との戦い2(2)
「別に舐めてはいないわよ? ただ、色々と程度が知れたと思っただけ。確かに、魔術を使える事は驚いたけど、それは一種の技術のようなもの。極めたとしても、出力はそれほどでもない。私たちの脅威にはならないわ」
「ふん、黒幕を気取っている者が表舞台に引き摺られた時点で状況は詰みだ。加えて、お前がどこに逃げても我たちはお前の居場所が分かる。お前の敗北は必至だ」
「まあ、全員不死みたいな連中に加えて不死殺し。それに大体の状況をどうにかする力もあるからな。対してお前は1人で、神力も振るえない。魔術という小手先の技や自分の作った神器しか頼れない。そして、逃げれないとくれば・・・・・・まあ、どう見ても結果は分かるよな。安心しろよ『物作り屋』、多少付き合いのある仲だ。この吾が散り様くらいは見届けてやるよ」
シェルディア、レイゼロール、零無はフェルフィズにそう言葉を返した。
「・・・・・・癪に障る奴らですね。そんな奴らは、ああ・・・・・・殺してしまいたい」
フェルフィズは低い声でそう呟くと、腰のポーチを開け、取り出したい物を思い浮かべながら手を入れた。このポーチの中は亜空間になっており、様々な物(亜空間ゆえ大きさは関係ない)を収納する事が可能だ。これもフェルフィズが作った神器だ。そして、フェルフィズはポーチの中からある物を取り出した。
いや、その物の形状からするに引き出したという方が適切か。フェルフィズは何か黒い棒のような物を握りポーチの中から徐々にそれを引き出す。そして、それは完全に姿を現した。
「なっ・・・・・・」
「っ!?」
「っ・・・・・・なるほど、あの戦い以来それが行方不明だったのは・・・・・・」
「へえ・・・・・・ちょっと面白くなってきたな」
それを見た影人、レイゼロール、シェルディア、零無がそれぞれの反応を示す。影人とレイゼロールは純粋に驚愕したように、シェルディアは真剣な顔を、零無は言葉通り楽しげな笑みを浮かべる。
フェルフィズが握っていたのは大鎌だった。ただし、普通の大鎌とは違いその刃は黒く染まっていた。そして、その大鎌の名前を影人たちは知っていた。
「『フェルフィズの大鎌』・・・・・・」
影人がその大鎌の名前を呟く。それは握っている者と同じ名を冠した、全てを殺す大鎌だった。
「どういう事だ・・・・・・? 何であの大鎌をあいつが・・・・・・」
フェルフィズの大鎌をフェルフィズが握っている。その状況を理解できなかった影人がその顔を疑問の色に染める。あれはラルバがレイゼロールを殺すために壮司に与えた物のはず。確かにその制作者はフェルフィズだが、使用者は違ったはず。影人がそんな事を考えていると、シェルディアがこんな言葉を掛けてきた。
「ああ、あなたはまだ知らないのね。実は、あの大鎌は最終決戦の後に行方不明になっていたの。レイゼロールが投げたあの大鎌は後日捜索されたのだけど・・・・・・どこにもなかったわ」
「・・・・・・その答えが今分かったな。どうやら、奴が回収していたらしい。ふん、火事場泥棒とはまさにこの事だな」
レイゼロールがフェルフィズを睨む。レイゼロールにそう言われたフェルフィズは、ふっとバカにするように笑った。




