第1556話 忌神との戦い1(1)
「っ、全員消えた・・・・・・?」
屋敷の2階にいたフェルフィズは、自分が作った神器を通して見ていた影人たちがその場から消えたのを見てそう言葉を漏らした。
「いったいどこに・・・・・・っ、この生体反応は・・・・・・外ですか!」
別の神器の力により、フェルフィズは3人がどこに移動したのかを知った。
だが次の瞬間、
「っ!?」
フェルフィズの屋敷は何かに破壊された。
「・・・・・・今更だが、粉々だな。跡形もねえ。まあ、ここは丘の上だから、周辺に被害はないと思うが・・・・・・」
自分たちの攻撃によって全壊した屋敷を見ながら影人はそう呟いた。強いて言えば、屋敷を破壊した時に轟音がしたのでそれを気にして人が来ないかだけが心配だが、それも別に人払いの結界を張ればいいだけなので、まあ大丈夫だろう。
(ああ、丁度いい。イヴ、人払いの結界は展開できるか? 結局、前はシトュウさんが展開してくれたからな)
また試す機会があれば試してみようと、海公と魅恋を助けた時に思った事を思い出した影人は、内心でイヴにそう聞いた。
『誰に言ってやがる。そんなもん余裕だバーカ』
バカにするなといった感じでイヴがそんな言葉を返して来る。すると同時に、影人を中心として何かが広がったような気がした。恐らく、人払いの結界が展開されたのだろう。影人はイヴに感謝した。
「やっぱり、最初からこうしていればよかったわね。随分とスッキリしたわ」
「同意だな。どこぞの誰かが潜入すると退かなかったから無駄な時間を過ごした」
影人がイヴに語りかけていると、シェルディアとレイゼロールがそんな感想を漏らしていた。特に、レイゼロールはジーと影人を見つめていた。
「いや、流石に初手から屋敷全壊プランはあれだろ・・・・・・でもまあ、確かにこっちの方が楽だったかもな」
レイゼロールの言葉に最初こそ引いたような顔をしていた影人だったが、最終的には影人はその言葉に理解を示した。なんだかんだ、前髪野郎もその辺りの感覚は既に壊れていた。
「さて、ではあそこからフェルフィズを引っ張り出しましょうか。彼も神。不死身だから死んでは――」
屋敷の残骸を見つめていたシェルディアが言葉を紡ごうとした時だった。突然屋敷の残骸の右端辺りが隆起し、そこから何かが飛び出して来た。
「・・・・・・」
それは何やら球体のようなものだった。いや、球体というよりかは、何かが丸まっていると形容した方が正しいか。そして、それは形状を元に戻す。
見たところ、それは人形だった。だが、屋敷で影人たちを襲った人形より少し大きい。2メートルはあるだろう。全身の色は淡いクリーム色。だが、先ほどの人形は顔がなかったのに対し、その人形は笑っている仮面――喜劇と悲劇の仮面の喜劇の仮面のような――を被っていた。
「全く・・・・・・あなた達は本当に知性ある存在ですか?」
人形に守られ片膝立ちになっていたフェルフィズは立ち上がると、軽蔑するような目を影人たちに向けて来た。人形に守られていた事もあってか、フェルフィズは無傷だった。
「あら、よく反応したわね。さすがは古き神といったところかしら」
「別にそれは関係ありませんよ。ただ、私は用心深い性格というだけです」
無傷のフェルフィズを見たシェルディアが意外そうな顔を浮かべた。シェルディアの言葉を受けたフェルフィズはつまらなさそうに言葉を返した。




