第1554話 忌神との再会(4)
『ああ、懐かしいですね。あなたと彼と交流したのは短い時間でしたが、存外に楽しかったですよ。ですが、別に騙したつもりはなかったんですがね。あの人間、エイトは時空の歪みに呑み込まれ行方不明。実質死んだようなものでしょう。だから、私は別にその事については嘘は言っていませんよ。まあ、少し話を脚色はしましたがね』
「っ、貴様・・・・・・! よくものうのうと・・・・・・!」
レイゼロールが更に怒りと憎しみを露わにする。影人やシェルディアにも2人のやり取りは聞こえていたので、それを聞いていた影人はこんな事を思った。
(どうやら、フェルフィズの奴は俺が生きてる事を知らないみたいだな。レゼルニウスの記憶を見た零無と関わってたから、もしかしたら俺の事を知ってるかもと思ったが)
影人からしてみれば少し誤算だ。ここでフェルフィズに影人の正体をバラしてもいいが、別に無理にバラさなくても問題はないか。影人がそんな事を考えていると、
「よう、『物作り屋』。無駄に生き生きとしているじゃないか」
零無がフェルフィズにそう語りかけた。どうやら、チャンネルを合わせたようだ。零無を認識したフェルフィズは驚いた顔を浮かべた。
『っ、あなたは・・・・・・意外ですね。まさか、まだこの世に存在していたとは。てっきり、死んだかまた封印でもされたと思っていましたが・・・・・・そして、そんなあなたがスプリガンと共にいるという事も』
「吾がいるべき場所は、吾の愛しい者の側と決まっているんだよ」
『愛しい者の側・・・・・・? あなたが執着していたのはエイトという、奇しくもレイゼロールが唯一心を許していた人間と同じ名前の人物ではなかったのですか? まさか、スプリガンがそうだとでも?』
零無の言葉を聞いたフェルフィズが意味が分からたいといった顔を浮かべ、そう言葉を述べる。フェルフィズの反応を見た影人は、仕方なくここでフェルフィズに正体を開示する事にした。どちらにせよ、いずれ正体は開示する予定だったので、問題はない。
「よう、フェルフィズ。久しぶりだな。この姿じゃ分からないだろうから・・・・・・俺の本当の姿を見せてやるよ。これを見りゃ1発で分かるだろうぜ。俺が誰なのかをな」
影人はフェルフィズに対してそう言うと、認識阻害の力のある帽子を外し、普段の自身の姿を幻影としてその身に纏わせた。服装は過去で着ていた服を再現した。
『なっ・・・・・・あ、あなたは・・・・・・』
「お前にここを刺された事、忘れてねえぜ。なあ、フィズフェールさんよ」
画面の中のフェルフィズが信じられないといった顔で震える。影人はニヤリと笑みを浮かべ、右手で自身の胸元を指差した。
『は、ははっ・・・・・・はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは、あははははははははははっ! その長過ぎる前髪! エイト、エイト、ああそういう事ですか! レイゼロールが心を許した人間とかつての『空』が愛した人間はッ! まさか同じ存在だったとは! ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ! 何という運命のイタズラですかこれは! そして、そして! まさかあなたがスプリガンだったとは! 可笑しいですねえ! あははははは! 笑わずにはいられない!』
影人の正体に気づいたフェルフィズが哄笑を、いや狂笑を上げる。フェルフィズは笑いすぎて目に涙を浮かべていた。




