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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1550/2051

第1550話 忌神の屋敷へ潜入せよ(4)

 影人、レイゼロール、シェルディア、零無が転移した場所は街中という感じの場所ではなかった。閑静な郊外とでも言えばいいだろうか。第一印象はそんな感じだった。

「っ、ちょっと寒いな・・・・・・あと、靴履くの忘れたな・・・・・・」

 影人は少し肌寒さを感じながら、自分の足元を見た。コンクリートの上にある自分の足を守っているのは靴下だけだった。まあ、スプリガンに変身すればブーツを履く事が出来るのでそこまで問題ではないのだが。靴下もすぐに汚れるという事はないので、以前のように日奈美に怒られる事もないはずだ。

「そう言えばそうね。ええと、替えの靴は・・・・・・」

「ふん。靴など創ればいいだけだ」

 影人の言葉でその問題に気づいたシェルディアは影の中から靴を取り出し、レイゼロールは力で闇色の靴を創造した。

「じゃ、俺も。――変身」

 影人も周囲に人の姿がない事を確認し、ペンデュラムを取り出し言葉を唱える。ペンデュラムの黒い宝石が輝きを発し、数秒後影人の姿はスプリガンへと変わった。そのおかげで、足元に黒の編み上げブーツが顕現する。

「ここはちょっとした丘って感じだな。そして・・・・・・多分、あれがフェルフィズのいる家だ」

 スプリガンに変身した影人は眼下に見える街の景色からそう判断すると、変化した金の瞳を丘上にある一軒の家に向けた。

 その家は大きめの西洋風の屋敷であった。敷地を隔てる鉄の門が聳え立ち、その奥に屋敷がある。これは影人の印象だが、昔学校に1人はいたようないいところのお坊ちゃんやお嬢さまが住んでいそうな家だ。

「間違いないのか?」

「シトュウさんはフェルフィズは民家にいるって言ってた。この辺りにある民家はあそこだけだ。だから、間違いはないと思うぜ」

 確認するようにそう言ってくるレイゼロールに、影人はそう言葉を返した。

「しかし、あの家が彼の忌神の隠れ家だとすると、フェルフィズは随分と素敵な趣味をしているようね。朝の陽光の中にあるあの屋敷は素直に美しいと思えるもの」

 日の高さからこちらの時間が朝であると確認したシェルディアがそんな感想を漏らす。ここから庭の細部まで見る事は出来ないが、パッと見た感じでも庭にある花や草は手入れされているように見えた。

「見た目だけ取り繕ってるんだろうぜ。さて、どうやって侵入する? 正面からの強行突破は流石にリスキーだしな。ここは気づかれないように潜入するべきだと思うが・・・・・・」

 影人が2人に意見を求める。すると、2人はこう言葉を述べた。

「うーん、コソコソするのはあまり性には合わないのだけれど・・・・・・面倒だから、正面からでいいんじゃないかしら」

「別に迅雷の如く正面から突破して奴を捕らえるか殺すかすればいいだけだろう。何なら、我があの家を破壊してやろうか? その方が探す手間も省けるからな」

「え、ええ・・・・・・」

 2人の意見ははっきり言って脳筋だった。あまりに脳筋な意見に影人はドン引きしてしまった。

「ははっ、こいつらアホだな影人」

 今まで黙っていた零無はその言葉を聞いて笑った。今零無は2人にチャンネルを合わせていないので、その言葉が2人に届く事はなかった。

「ちょっと黙ってろよ零無。あのな嬢ちゃん、レイゼロール。フェルフィズの奴は狡猾な神だ。俺を騙したり、自分の死を偽装して神たちも騙してる。そんな奴のアジトには罠やらが仕掛けられてると考えるのが自然だ。いわば、あそこは伏魔殿だ。そこに正面から行くのは良くないだろ」

 影人は2人に対して説得するようにそう言った。影人の最初の言葉を聞いた2人は「何だ零無も着いてきていたのか」的な顔を一瞬浮かべた。

「それはそうだけど・・・・・・」

「ふん、圧倒的な暴の前に罠や策略は意味をなさん」

「ああクソ、ダメだ・・・・・・なまじえげつない力あるせいで、ちょっと納得しかけちまった・・・・・・」

 だが、シェルディアとレイゼロールは尚も不満げな顔を浮かべた。影人は右手で軽く顔を覆った。何だかんだ、スプリガン時にこんな仕草をするのは初めてかもしれない。というか、襲撃前にこんな呑気な会話をしている場合ではない。

(でも、絶対潜入した方がいいと思うんだよな。暗躍し続けてきた俺の勘もそう言ってるし・・・・・・しゃあねえ、何とか説得するか・・・・・・)

 影人は数分かけて2人を説得した。そして、最終的には2人は何とかその首を縦に振ってくれた。

「よし、じゃあ潜入するか。取り敢えず、透明化使って、気配と音も消すか。嬢ちゃん、透明化とか体の音消しとかの力は使えるか?」

「それは出来ないわね。私が姿を消したり出来るのは、あくまで『世界端現』の力だから。しかも、一定の範囲の外に出ると、効果が切れるわ」

「じゃあその力は俺が掛けるよ。で、侵入のプランなんだが・・・・・・」

 影人が簡易的ではあるが、自分が考えた侵入の方法を2人に伝える。その方法を聞いた2人は渋々といった感じで(特にレイゼロール)頷いた。

「よし、なら静かなる襲撃計画を始めるぜ。透明化を使えば互いの存在が認識出来なくなるから、そこは注意だ。まあ、あくまで侵入前までだけどな。嬢ちゃんの透明化の力は俺が家に侵入して少ししたら解除する。いいか?」

「ええ、問題ないわ」

 シェルディアが頷く。影人は真剣な顔で最後にこう言った。

「最終確認だ。レイゼロールは正面玄関から、嬢ちゃんは裏のどこかから、俺は侵入出来る場所を探してから。3人別々の場所から侵入する。もしフェルフィズを見つけたら、合図は派手にだ」

 影人の確認に再び2人が頷く。そして、影人たちはそれぞれ自分たちに透明化と自身の体の音を消す力を施すと、門を飛び越え音もなく家の敷地内に侵入した。

「・・・・・・」

 レイゼロールは正面玄関の前に立ち、闇の力で鍵の構造を調べ合鍵を創ると、玄関のドアを開錠した。

「・・・・・・」

 シェルディアは家の裏に裏口を見つけるとその前に立ち、自身を軽く傷つけ血の剣を創造すると、音もなくドアを切り裂いた。切り裂かれたドアの残骸は床に落ちる前にシェルディアの影によって支えられ、そっと床に置かれた。

「・・・・・・」

 影人と影人に着いてきた零無は屋敷右側面に地下室への入り口を発見した。影人と零無は階段を降り地下室のドアの前に立つと、レイゼロールと同じような方法でドアを開錠した。


 そして、3人と幽霊はフェルフィズの屋敷へと侵入した。


 ――こうして、白昼堂々の襲撃劇が始まった。

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