第1545話 忌神への反撃(3)
「さて、じゃそろそろシトュウさんに念話するか」
影人はシトュウの顔を思い浮かべシトュウとのチャンネルのようなものを意識すると、心の内でシトュウに語りかけた。
『――帰城影人ですか』
「ああ、俺だ。シトュウさん、今ちょっといいか?」
すると、影人の中にシトュウの声が響いた。シトュウに念話をするのはこれが初めてだったので、影人はソレイユやイヴと同じように念話がちゃんと出来る事を確認し、肉声でシトュウにそう言葉を返した。
『一応、境界の修復作業で手は離せないといった感じですが・・・・・・会話くらいなら問題はありません』
「悪い。じゃ、話だけさせてもらう。と言っても、また実質的にお願いなんだが・・・・・・」
影人は自分がフェルフィズに攻撃を仕掛けたい事、だがフェルフィズの居場所が分からない事をシトュウに伝えた。
『・・・・・・なるほど。つまり、私の全知の力でフェルフィズがどこに居るのか知りたいという事ですね』
「ああ。何回もシトュウさんの力を当てにして悪い。だけど、もうシトュウさん以外に頼れるところがなくて・・・・・・」
影人は申し訳なさそうな顔を浮かべた。先日も影仁の事でシトュウを頼ったばかりだ。シトュウは真界最高位の神。そんな存在を気軽に頼るというのは如何な前髪野郎といえども気が引けた。
『別に構いませんよ。本来なら、人間が何度も私を頼るというのは色々と良くないですが、前に言った通りあなたは例外中の例外ですから。それに、元凶たるフェルフィズをあなたがどうにかしてくれるというのならば、私たちも助かりますので』
だが、シトュウはそう言ってくれた。影人は素直に「ありがとう。助かる」と感謝の言葉を述べた。
『ですが、フェルフィズ討伐にはあなた1人で行く気なのですか? 確かに、あなたの戦闘能力は人間の範疇を大きく超え、私と比肩するレベルに至っているとは思いますが・・・・・・』
スプリガンとしての力、『世界』の顕現及び端現、更には『終焉』の力。そして、それらを扱う人間とは思えぬ精神力。その他にも、人間としては考えられぬ神力の使い方の習熟度。戦闘における思考能力の高さなど。影人の力を知り、また影人の戦いを見た事のあるシトュウは、本気で影人が全ての力を取り戻した自分と同等の存在だと考えていた。
「流石にそれはない。俺は別にちょっと力を託されがちな普通の人間だしな。十全な状態のシトュウさんと同レベルではないって」
影人はないないといった感じにそう返答した。影人の言葉を聞いていた零無は「ははっ、神だろうが何だろうが全てを殺せる奴が普通はないな」と笑っていた。普通は引くところだが笑っているあたり、零無の頭のネジがほとんどない事を改めて思い知らされる。
「で、1人で行くかどうかの答えは、イエス・・・・・・って言いたいんだが、まだ分からねえかな。多分、1回ソレイユとかレイゼロールとか嬢ちゃんとかに言っとかないと、またキレられるだろうし。だから、その辺りの答えによっちゃ同行者が増えるかもしれない」
過去の経験から流石にその事を学んだ影人が少し煮え切らない答えを返す。影人の答えを聞いたシトュウはこう言った。
『分かりました。では、全ての準備が整い次第私に連絡してください。その時にフェルフィズの居場所を教えます』
「サンキュー。じゃ、その時が来たらまた連絡する」
影人はそう言ってシトュウとの念話を終えた。




