第1544話 忌神への反撃(2)
「うーん、確かに吾はあいつとはまあまあの付き合いだったが・・・・・・吾の方からあいつに会いに行った事はないんだよな。あいつに会いに行くのも面倒だったし、何よりあいつは自分が作った道具か何かで気配を常に隠していたからね。まあ、今思えば吾の事を信用していなかったんだろうな」
零無は軽く唸ると、申し訳なさそうな顔を浮かべた。
「だから、あいつの居場所に心当たりはないな。すまないね影人」
「・・・・・・そうか。分かった、なら仕方ねえな」
零無の答えを聞いた影人は少しだけ残念そうな顔を浮かべた。
「さて、ならどうやってあいつの場所を探るかね。お前以外にフェルフィズと関わりがある奴なんて・・・・・・」
影人が悩むように言葉を漏らす。すると、零無がこんな事を言ってきた。
「別に悩む必要なんてないぜ影人。フェルフィズの居場所なんて、シトュウに全知の力を使ってもらえば1発で分かる。あの力に気配の隠蔽は意味をなさないからな」
「マジかよ・・・・・・シトュウさん、改めてチートだな・・・・・・」
やはり全ての力を取り戻した『空』とは尋常ならざる存在のようだ。影人は少し引いた顔になった。
「何か、ゲームのバランスブレイカーを仲間にした気分だな・・・・・・まあゲームなら場合によっちゃ冷める展開だが、これは現実だからな。思う存分シトュウさんに頼るとするか。うし、じゃあ早速シトュウさんに念話を――」
影人が言葉通り、シトュウに念話をしようとした時だった。零無がその様子を急変させた。
「おい影人! 今の言葉はどういう意味だ!? シトュウと念話!? シトュウの奴と念話だと!? なぜ、いつシトュウと念話出来るようになったんだ!?」
「うおっ!? きゅ、急に近づいてそんなに声出すなよ。ビビるじゃねえか・・・・・・」
一瞬にして零無が影人に肉薄し、至近距離からその透明の瞳で睨め付けてくる。影人は思わず仰け反った。
「そんな事は些事だ! 早く教えろ! 教えろ教えろ教えろ教えろ教えろ教えろ」
「わ、分かったからそんな呪いみたいに言葉を連呼するんじゃねえよ! というか、3日前に教えなかったか? 父さんに会いに行くために、真界に行ってシトュウさんから神力の一部貰ったって。それで、俺は長距離間の転移とシトュウさんと念話出来るようになったんだよ」
全身から負のオーラを放つ零無に恐怖感を抱いた影人が少し慌て気味にそう答える。こういうところだけは変わっていないので嫌だなと影人は思った。
「聞いてない! 吾でさえお前とは念話は出来ないというのにッ! シトュウの奴めぇ・・・・・・!」
零無は般若のような顔を浮かべギリギリと歯軋りをした。零無の姿はその現在の幽霊としての在り方と相まって、完全に悪霊に見えた。
「じゃあ、俺の勘違いだったか。というか、俺の中にはお前の魂のカケラがあるから、常にお前の姿が見えるんだろ? だったら、念話くらい出来ねえのか?」
「前にも言っただろ。お前の中の吾の魂のカケラは繋がりはあるが既に独立した存在になっている。だから、それを通して念話は出来ない。精神の接続先が微妙に異なるからな。ただ、吾とお前の中にいる吾は本質的には同じ存在だから、吾を感じられるというだけさ」
「? まあよく分からんが、念話は出来ないって事か」
興味本位で聞いたら何だか難しい答えが返って来たので、影人は取り敢えずそう理解した。




