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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
154/2051

第154話 嘲る暴嵐(2)

「!? ちっ・・・・・・・!」

 レイゼロールはその一連の流れを知っている。だから、知覚を全方面へと向け集中した。

「バカすかやり合おうぜっ!」

 突如として目の前に現れたスプリガン。前回の戦いの終盤でスプリガンの行った短距離転移だ。

 歪な笑みを浮かべ、スプリガンは暴力的な一撃をレイゼロールに放った。

(正面からか・・・・・!)

 レイゼロールはとっさに自分の前に闇の障壁を出現させた。スプリガンの一撃はドゴンッ! という派手な音と共に障壁に阻まれる。

「はっはぁ! 無駄なんだよ!」

 楽しそうに笑みを浮かべ、スプリガンは左手を障壁へと無理矢理に突っ込んだ。そして弾かれた右手も強引に障壁へとねじ込む。

 そしてスプリガンは闇の障壁を手だけで()()()()()

「っ!?」

(嘘でしょう・・・・・・・!?)

 これには流石のレイゼロールも、大きく目を見開く。フェリートも言葉には出さないが内心は理解が追いつかない状態だった。

「闇による身体能力の大幅強化か・・・・・・・!」

「ご明察だぁ!」

 スプリガンはそのまま鉤爪にした右手で、レイゼロールに攻撃する。レイゼロールの肉をえぐる算段なのだろう。その右手には濃い闇が纏わりついていた。

(ふん。やり合ってやる義理はないな)

 レイゼロールは身体を闇で強化すると、自分の後ろのフェリートを片手で掴む。そしてそのまま大きく水田を蹴った。

 スプリガンの一撃はまたしてもレイゼロールに当たることはなく、そのまま空を切った。

 だが、その一撃は空を鳴かせ水田の水を大きく舞い上がらせた。

(なんだ、あの一撃は・・・・・・!? いくら身体を闇で強化しても、あのレベルの攻撃を即座に出すことが可能なのか!?)

 フェリートも前回のスプリガンとの戦いで、空の雲を裂いたことがあるが、あれは多少のタメと密かに右手の手刀を強化したものであったからだ。だが、今の一撃は間違いなくただの身体を強化しただけの攻撃だ。

(いや、それを言うなら先ほどの障壁を手で引き裂いたこともだ! 通常のスプリガンの時とは違う。暴力的な嵐のような戦い方・・・・・・・・!!)

 レイゼロールに抱えられながらも、スプリガンの体を乗っ取った謎の存在に注視するフェリート。そしてそんな思考をしているうちに、レイゼロールはアスファルトの道路へと着地していた。

「・・・・・・・・・・はー、つまらねえ。逃げてないで戦ってくれよ。こっちは全然暴れ足りないんだ。ああ、それとも何か? ここらの地形が戦いにくいか? だったらこの辺り一帯を更地にするか」

 つまらなそうに不機嫌そうに、スプリガンはその金の瞳をレイゼロールとフェリートに向ける。

「俺は別に壊せりゃいいんだよ。本能のままに、衝動的にな。だから――壊れろよ」

 水田の真ん中でスプリガンが右手を上空へと掲げた。すると、その真上に闇が渦巻き集まっていく。

 そしてそれは凄まじい大きさの闇のエネルギー球体へと姿を変えた。

「・・・・・・・壊れてやるつもりもなければ、貴様の享楽に付き合うつもりもない。ここら一帯を更地にするなら勝手にしろ。さらばだ、スプリガン」

 そう言い残すと、レイゼロールはフェリートを抱えたまま、自らの影へと沈んだ。

 そう、ちょうど1分の時間が経過したのだ。

「あっ、てめぇ!? くっそ、逃げやがった・・・・・・・・あー、白けちまったぜ。とりあえず、これ消すの面倒だし、ここ適当に更地にするか」

 そんなレイゼロールの事情などは知らない謎の存在。冷めたような表情を浮かべ、謎の存在は自分の頭上の高エネルギー球体を発散させようと考えた。

 謎の存在が右手を下ろそうとした。それだけで、ここらは更地になるだろう。

 だが、右腕は下がらなかった。

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