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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1538/2051

第1538話 再会、父よ(1)

「あなたの父親の居場所・・・・・・ですか」

「ああ。零無の呪いが解けた今、父さんが世界を放浪する必要はなくなった。だから、それを伝えに行きたいんだ。・・・・・・まあ、生きていればだけどな」

 影仁の生死を影人は知らない。ゆえに、影人は少し暗い声でそう言葉を付け加えた。

「・・・・・・分かりました。なら、あなたの父親の生死を確かめ、生きていれば居場所を教えましょう。そして、あなたをそこに送ればいいのですね?」

「ありがとう。そうしてほしい」

「礼の言葉は不用ですよ。私はあなたに対して当然の事をするだけですから」

 シトュウが軽く首を振る。影人が父親と離れ離れになった理由はシトュウたち真界の神のせいだ。そして、今のシトュウは真界の最高位の神。全ての責任を負う立場だ。全ての責任は自分にある。こんな事で贖罪になるとは思っていないが、せめてものという感じでシトュウはそう言ったのだった。

「あなたの父親の名前は帰城影仁でしたね。まずは、生死を調べましょうか」

 シトュウがその事を識ろうとすると、シトュウの透明の瞳に無色の光が瞬いた。その光は、シトュウが全知の力を使用したという事を示していた。

「・・・・・・帰城影仁は生きています。健康の状態も付加情報として識りましたが、元気といって何ら問題ない状態です」

「っ、そうか・・・・・・」

 シトュウの言葉を聞いた影人が安堵の顔になる。生きているはずと信じ続けていたが、正直不安はあった。影仁はもうこの世にいないのではないかと。だが、シトュウの何よりも証拠になる言葉を聞いて、影人は珍しく緩んだ笑みを浮かべた。

「帰城影仁が今いる場所は・・・・・・地上世界の北欧の国、ノルウェーですね。彼はその山の中に流れる川で釣りをしています」 

 シトュウが続けて全知の力を使用する。シトュウの言葉を聞いた影仁は「ノルウェー・・・・・・」と鸚鵡返しに呟いた。

「てか、ノルウェーの山の中で釣りって・・・・・・何だかんだ旅楽しんでるんだな、あの人」

 「俺はちょっくら世界を回ってくるぜ。ついでに観光と呪いを解く方法でも探してくるわ」影仁は最後にそう言っていたが、どうやらちゃんと有言実行しているらしい。大した人間だと影人は思った。

「では、あなたをそこに送ります。準備はいいですか?」

「あ、ああ。ちょっと緊張はしてるが・・・・・・うん。大丈夫だ」

 影人は右手で軽く心臓の部分に触れた。約7年ほど前に生き別れた父親と会うので、影人にしては珍しく緊張しているが問題はない。

「それでは、転移を――」

 開始します。シトュウがそう言おうとすると、何かを思い出したように影人が「あ!」と大きな声を上げた。

「わ、悪いシトュウさん。やっぱりちょっと待ってくれ。大事な事忘れてた」

「? それは何ですか?」

 首を傾げるシトュウ。そんなシトュウに影人はこう答えた。

「転移だよ。送ってもらえるのはありがたいんだが、帰りはどうやってシトュウさんにコンタクト取るかってのが問題なんだ。俺、実は長距離間の転移出来ないんだよ・・・・・・だから、日本には自力で帰れない」

 影仁と会えば多少は事情を話す時間がいる。その間に転移などされてしまえば、状況は余計に混乱する。転移のタイミングを影人からシトュウに伝えられないというのは、かなり困る事になるのだ。

「ふむ、そうでしたか。意外ですね、あれほど神力を自在に操り、私をも殺せるあなたが長距離間の転移だけは出来ないというのは」

「いや、そりゃ俺にも出来ない事は当然あるよ。だって俺普通の人間だし」

 本当に意外そうな顔を浮かべるシトュウに、影人は真顔でそう言葉を述べた。自分は少々特殊な状況に巻き込まれがちで、色々と普通ではない力を託されがちなだけの、運が悪い人間だ。影人は本気で自分の事をそう思っていた。

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