第1537話 ある願い(4)
「すみません、実はお願いもあって俺はここに来たんですが・・・・・・出来れば真界への門を開けてもらえませんか? シトュウさん・・・・・・『空』に用事があるんです」
「真界の『空』様に? 確かにワシはそこへと至る門を開く事は出来るが・・・・・・人間はあそこには入れんぞ? あそこに入れるのは一部の特別な者たちか、『空』様に許可を与えられた者だけじゃ」
ガザルネメラズは影人にそう言ってきた。どうやら、ガザルネメラズは影人が真界に入れる事を知らないようだ。影人はガザルネメラズにこう言葉を返した。
「それなら大丈夫です。俺は真界に入れる例外の人間ですから。前もレゼルニウスの奴が開いた門で入りましたし」
「そ、そうか。何というか・・・・・・君は本当に色々と規格外の人間じゃな・・・・・・」
ガザルネメラズは少し引いたような顔を浮かべると、「そういう事なら分かった」と言って両手を虚空へ向けた。
「神界の神である我が開き望み給う。開け、空たる存在へと続く真界の門よ」
ガザルネメラズが言葉を唱えると、虚空に透明な無色の輝きを放つ門が現れた。
「ありがとうございます。では、俺はこれで失礼します」
影人はガザルネメラズに感謝の言葉を述べ門を潜ろうとした。だが、ガザルネメラズは最後に影人にこんな事を言ってきた。
「うむ。帰城影人くん、よければまたワシと話をしてくれんかの。君の話を聞くのはとても面白そうじゃ」
「そんなに面白くはないとは思いますが・・・・・・分かりました。また機会があれば」
影人は小さく笑みを浮かべると門を潜った。
「よう、シトュウさん。また勝手にお邪魔して悪いな」
真界「空の間」。階段を登りシトュウが座している場所に辿り着いた影人は、軽く右手を上げシトュウに挨拶をした。
「帰城影人・・・・・・あなたがここに来るのは2度目ですね。一応、ここは人間がそう易々と来れる場所ではないのですが・・・・・・まあ、あなたは全てにおいて例外ですからね。気にしても無駄というものでしょう」
影人を見たシトュウはどこか諦めたようにそう言うと、その両の透明の目を影人に向けた。
「それで、私に何か用でしょうか?」
「ああ。パーティーの時に話があるって言っただろ。色々ごちゃついて話すタイミングとか段取りが狂っちまったから、俺から来たんだ。シトュウさんは忙しいだろうし、俺からシトュウさんに連絡は出来ないからな。だから、今日はその用事で来た」
シトュウの問いかけに影人はそう返答した。シトュウは納得したように頷いた。
「なるほど。確かにあなたはそう言っていましたね。それで、その話というのは何でしょうか?」
「・・・・・・実は話って言うよりかはお願いなんだがな。でも、シトュウさんからしてみれば小さな、本当に小さな事だと思う。だから・・・・・・」
影人はそう前置きすると、その願いの言葉を口にした。
「お願いだ、シトュウさん。俺の父親が・・・・・・帰城影仁が今どこにいるか、俺に教えてくれ。俺はあの人を迎えに行きたいんだ」




