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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1536/2051

第1536話 ある願い(3)

「っ、俺は行かなくて大丈夫なのかよ?」

「気配がそれ程大きくはないので大丈夫です! ではまた!」

 ソレイユは影人にそう答えを返すとゲートを潜った。ソレイユが潜るとゲートは1人でに消えた。

「・・・・・・あの子もまた忙しくなってしまったの。ようやっとレイゼロールと和解したというのに。・・・・・・全てはワシらのせいじゃ」

 ガザルネメラズは少し悲しげに、申し訳なさそうにそう言うと、影人の顔を見て深く頭を下げて来た。

「帰城影人くん。君には本当に感謝しとる。レイゼロールを、ソレイユとラルバを救ってくれてありがとう。神界の長として、君にはどうしても1度お礼を言いたかった」

「・・・・・・顔を上げてください。俺はただレイゼロールの奴との約束を果たしたに過ぎません。俺があいつを助けたのは、結果的にソレイユとラルバの奴も助けたのは、俺のエゴの結果でしかありません。だから、そんな言葉は俺にはもったいないです」

 そんなガザルネメラズに影人はそう言葉を送る。あれは自分がやりたいと思ってやった事だ。誰かに感謝される謂れなどない。影人は心の底からそう思っていた。

「・・・・・・なるほど。どうやら、君は本気でそう思っているようじゃな」

 ガザルネメラズは顔を上げ、見透かすようにそう言うと笑みを浮かべた。

「だが、それでもワシの気持ちは変わらん。ありがとうのう」

「あなたは・・・・・・俺をよく思っていないはずでしょう。それでも、俺にそう言うんですね」

 屈託のない笑みを浮かべるガザルネメラズに、影人は少し戸惑った。ソレイユから神力を譲渡されている影人の存在は、神界の長であるガザルネメラズからしてみれば面白くはないし、また許す事の出来ないはずだ。

「ふむ、確かに君はワシらからしてみれば禁忌の存在じゃ。いくら『空』様から特例として認められていても、神界の規律を預かる立場のワシからすれば看過する事は難しい」

 影人の言葉にガザルネメラズは頷いた。そして、こう言葉を続けた。

「じゃが、それとこれとは別。それに、今会ったばかりじゃが、君は力を正しく使える人間という事は分かる。ソレイユもレイゼロールも君を心の底から信頼しているようじゃし、それにレゼルニウスから『終焉』の力を託された者が己のためだけに力を振るう人間であるはずがない。神力譲渡の禁忌は色々理由があるのじゃが、その1つは悪しき人間が己の欲望のままに力を振るわせないため。少なくとも、君はそこには当てはまってはおらんよ」

「・・・・・・買い被り過ぎですよ。俺はそんなに出来た人間じゃない。俺は必要ならどんな力も手段も使う人間です」

「ほほっ、まあ君が自身の事をどう思っているのかは知らんが、他人から見ればそう見えるという事じゃろうて」

 ガザルネメラズが軽く笑う。そして、一転真剣な顔を浮かべた。

「して話は変わるんじゃが・・・・・・神力譲渡の延長を許可されたという事は、君も奴と戦う気という事なのかの。あの最悪の忌神・・・・・・フェルフィズと」

「ええ。あいつとは少し因縁がありまして。1発ぶん殴らなきゃ気が済まないんです」

「奴と因縁が・・・・・・? しかし、やはりそうか。本当に申し訳ない。殺したと思っていた奴が生き続け地上世界で今回の事態を引き起こしたのは、間違いなくワシらの責任じゃ。そのせいで・・・・・・」

 ガザルネメラズは一瞬不思議そうな顔になったが、すぐに表情を真剣なものに戻した。

「・・・・・・起こってしまったものは仕方ないですよ。失礼かもしれませんが、悔いるよりも今出来る事を考えた方がいいと個人的には思います」

「・・・・・・そうじゃな。君の言う通りじゃ。悪いの、気遣いをさせてしまって」

 影人の言葉を受けたガザルネメラズは幾分明るさを取り戻した笑みを浮かべた。影人は「いえ」と短く声を出すと、本題の言葉を口にした。

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