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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1534/2051

第1534話 ある願い(1)

「――シトュウ様と直接会いたい、ですか?」

 5月2日木曜日、午後4時過ぎ。神界のソレイユのプライベートスペースに来ていた影人は、ソレイユにそう言った。影人の言葉を聞いたソレイユは少し不思議そうに首を傾げた。

「・・・・・・ああ。シトュウさんから俺にコンタクトは出来るが、俺の方からは出来ないからな。だから、お前なら連絡取れるかなって思ってよ。ほら、お前この前シトュウさんに会いに行っただろ」

 ソレイユの反応に影人はそう言葉を返した。あのパーティー以降機会がなかったが、影人はシトュウにあるお願いをしたいのだ。そのためには、まずシトュウと会う必要があった。ちなみに、零無は例の如く地上に残して来た。

「確かに、私はこの前真界に行ってシトュウ様と謁見しましたが・・・・・・私は真界への門は開けませんよ。この神界で門を開く事の出来る神は長老だけです。私とラルバも長老が開いた門で真界に行ったのです。事前にシトュウ様から入界の許可を頂いて」

 影人の言葉を聞いたソレイユがふるふると首を横に振る。ソレイユにそう言われた影人は残念そうな顔を浮かべた。

「あー、マジか・・・・・・うーん、じゃあどうすっかな。他に真界への門開ける奴って言ったら、レゼルニウスの奴しか知らないし・・・・・・でも、あいつと会う方法は分かんねえしな・・・・・・」

 影人が困ったようにブツブツと言葉を呟く。そんな影人にソレイユはこう言った。

「別に悩む必要なんかないじゃないですか。長老に門を開いてもらえばいいだけですし。長老もあなたには会いたがっていましたし、ちょうどいいじゃないですか」

「いや、それはそうなんだが・・・・・・出来れば会いたくないっていうか・・・・・・」

 イレギュラーである自分は神界の長に嫌われていると思っている影人は気が進まなかった。

「何言ってるんですか。別に、長老はあなたを叱りなんてしませんよ。ほら、長老の所に連れて行ってあげますから、行きますよ」

 ソレイユはそう言うと右手を虚空に向けた。すると、そこに光のゲートが現れた。

「お前には人間の心の機微ってやつが・・・・・・っておい! いきなり手を引っ張るな!」

「何が心の機微ですか。図々しいあなたにそんなものはないでしょう」

 ソレイユが左手で影人の右手を握る。ソレイユは神力を使って自分の力を強くすると、影人を引き摺るようにゲートへと向かった。

「やめろ、心の準備が――」

「だから、そんなものはいりませんよ」

 そして、ソレイユと影人はゲートを潜った。












 ゲートを潜った先にあったのは、巨大な宮殿だった。色は白で様式としてはギリシャ風のように見える。空の色は澄み渡る青。空の色と相まって、その宮殿はとても美しく見えた。

「ここは・・・・・・」

「神界の中心部『雲上の宮殿』です。その名の通り、空の上に浮いている宮殿です。神々が召集を受けたり会議をしたりする際に主に利用されます」

 周囲を不思議そうに見渡す影人に、ソレイユはそう説明した。

「へえ・・・・・・何だかんだ、神界でお前のプライベートスペース以外に来たのは初めてだからな。なるほど、神界にはこんな場所があったのか・・・・・・」

「ええ。他にも神界には色々素敵な場所がありますよ。地上には美しい花畑や庭園もありますし。ですが、今日用事があるのはこの宮殿です。長老は大体いつもこの宮殿にいますから。さあ、私に着いて来てください影人」

 珍しがっている影人にソレイユはそう言った。そして、ソレイユは宮殿に向かって歩き始めた。

「あ、おい! ・・・・・・はあー、仕方ねえ。ここまで来たら腹を決めるか・・・・・・」

 影人はため息を吐くと、ソレイユの後を歩き始めた。

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