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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1533/2051

第1533話 憧憬(4)

「や、やっぱりそうなんだ・・・・・・あ、あの! ウチらさっきの人にお礼言いたいんです! ウチと海公っち、これであの人に助けられたの2回目だから! 本当はさっき声掛ければよかったんですけど・・・・・・」

 魅恋と、それに海公も驚きとスプリガンが一瞬で去ったという事もあってお礼を言う事は出来なかった。魅恋は先ほどスプリガンにお礼の言葉を言えなかった事を後悔していた。

「に、2回目? え、君たちは前にスプリガンに会った事があるの!?」

「は、はい。つい3日前に・・・・・・今日皆さんが助けてくださったように、怪物から僕たちを助けてくれました。だから、本当に僕たちはあの人には感謝しているんです」

 驚いた顔を浮かべる陽華に海公がそう説明する。その説明を聞いた陽華は「そ、そうなんだ・・・・・・」と声を漏らした。

(そんな事一言も話してくれてないのに・・・・・・でも)

(相変わらずの秘密主義ね。でも・・・・・・)

(君らしいね、帰城くん)

 陽華、明夜、光司の3人は小さな笑みを浮かべ内心で同じ事を思った。誰にも何も言わずに、ただ影から人を助ける。スプリガンの立ち位置は何も変わっていない。3人はその事を強く実感した。

「・・・・・・分かったよ。じゃあ、私たちが彼に君たちのお礼の言葉を伝えてあげる・・・・・・って言いたいところだけど、君たちは自分でスプリガンに言葉を伝えたいんだよね? 彼にもう1度会いたいんだよね? 君たちは多分・・・・・・スプリガンに憧れの感情を持ってるから」

「「っ!?」」

 陽華にそう指摘された魅恋と海公はハッとしたような、驚いた顔を浮かべた。まるで、なぜ分かったのかというように。

「やっぱりね。スプリガンの事を話すあなた達の目を見たら分かるわ。多分・・・・・・少し前の、いや実質今も変わらないわね。私たちも同じような目をしていたから。実はね、私たちも何度もスプリガンには助けられたのよ」

「え? そ、そうなんですか・・・・・・? でも、先輩方は僕たちとは違ってあんな力があるのに・・・・・・」

 明夜の言葉を聞いた海公が少し不思議そうな顔を浮かべる。明夜は首を横に振り、こう言葉を続けた。

「私たちなんてまだまだよ。力があっても、彼の強さには遠く及ばない。1度だけ彼の隣に立って戦えたけど、それでも全然足りないわ。だから・・・・・・」

 明夜がチラリと隣の幼馴染の顔を見る。陽華はその視線の意味を理解し、明るい顔で頷いた。

「うん。だから、私たちの目標は変わらない。スプリガンと一緒に並ぶくらい強くなる。それで、みんなを守る! って感じかな」

 影人がスプリガンとしてまた戦い続ける事を選んだのなら、陽華と明夜の目標も変わらない。2人の言葉を聞いた魅恋と海公は衝撃を受けたようにその目を一瞬大きくすると、自分たちの内にある思いのままにこう言った。

「はい! 僕はあの人に憧れました! 僕もあの人のように人を助けたい! こんな僕でも、出来る事があるのなら! 誰かの力になりたいんです!」

「ウチも! スプリガンやパイセン達みたいに誰かを助けたい! あんな怪物が現れるって知って知らないフリなんてもう出来ないから!」

 海公と魅恋の迸る思い。それを聞いた陽華と明夜、光司は暖かなそれでいて真剣な顔で頷いた。

「君たちの思いはよく分かったよ。ねえ、香乃宮くん・・・・・・」

「うん。2人には強い思いがある。なら、きっと大丈夫だよ」

 陽華に名前を呼ばれた光司が太鼓判を押す。光司にそう言われた陽華は魅恋と海公にこう言った。

「君たちがそう望むなら・・・・・・なってみない? 私たちや香乃宮くんと同じ、光導姫と守護者に」















「おっはよー! 今日もいい天気だね☆」

 後日、朝。元気いっぱいの声で2年7組に魅恋が入室してきた。その右手首にはキラリとピンク色の宝石がついたブレスレットが装着されていた。そのブレスレットを見た魅恋の友人達は魅恋に挨拶の言葉を返しながら、こう聞いた。

「おはー。今日は昨日と違って元気いっぱいじゃん。てか、そのブレスレットどしたん?」

「可愛いけどちょっと無骨ー」

「そこも逆に可愛いっしょ? ま、ウチの新しい宝物って感じかな」

 席に着いた魅恋は友人たちにそう言葉を返す。その様子を見ていた影人はポツリと言葉を呟く。

「・・・・・・相変わらずの元気さだな霧園は」

「そうですね。でも、そこが霧園さんのいいところだと思います」

 影人の呟きに海公がそう反応する。影人が前髪の下の目を海公の右の袖口に向けると、制服の下に水色の輝きが見えた。恐らく、魅恋と同じようにブレスレットを装着しているのだろう。だが、影人はその事をわざわざ指摘はしなかった。

(ったく・・・・・・もしかしたらこんな事になるんじゃねえかとは思ってたが・・・・・・まさか、本当にこうなるとはな)

 その事が表している事実を知っていた影人が内心で疲れたようにそう呟く。昨日の夜に、ソレイユから影人と同じ高校から新たな光導姫と守護者が誕生したと聞いた時、嫌な予感はしていたのだ。そして、その予感は当たっていた。

「・・・・・・やっぱり、俺の人生は色々と呪われてやがるな」

「? 帰城さん何か言いましたか?」

「いや、何でもねえよ」

 小さな声で呻くように呟いた影人に、海公が反応してくる。影人は軽く首を振り、海公にそう返事をした。


 ――こうして、新しい光導姫と守護者が影人の近くに誕生したのだった。

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