第1529話 勇気(5)
――そして、時は現在に戻る。
「はあ、はあ・・・・・・」
「くっ・・・・・・」
陽華と明夜は疲れたような表情で、怪物を睨んでいた。2人に睨まれている怪物はカタカタと歯を鳴らした笑った。
『ははっ、戦いにくそうだな? そんなお荷物さっさと見捨てりゃ楽なのによ』
「そんな事は絶対にしない・・・・・・!」
「ええ。死んでもごめんね・・・・・・!」
怪物の言葉に陽華と明夜はそう言葉を返した。怪物が言っているお荷物とは、魅恋と海公の事だ。怪物は露骨に2人を狙い攻撃して来た。その猛攻は光司だけでは守り切れず、陽華と明夜も守りの動きをせざるを得なかった。そのため陽華と明夜、光司も疲弊していた。
「み、皆さん・・・・・・」
「っ、ウチらのせいで・・・・・・」
そんな3人の様子を見ていた海公と魅恋が申し訳なさそうな顔を浮かべる。そんな2人に対し、光司はこう言った。
「だ、大丈夫だ。君たちは絶対に守り抜く・・・・!」
「うん・・・・・・! 心配しないで・・・・・・私たち、これでもタフだから・・・・・・!」
「修羅場はそれなりに潜って来たつもりよ。だから、こんな所で私たちは負けないわ・・・・・・!」
陽華と明夜も笑顔を浮かべ、魅恋と海公にそう言葉を送る。その言葉を聞いた2人は「「っ・・・・」」と泣きそうな顔を浮かべた。
(とは言っても、このままじゃジリ貧・・・・・・)
(残る手段は・・・・・・)
明夜と陽華が内心でこの状況を打開する方法を考える。一応その方法は1つだけある。『光臨』だ。だが、光臨にはデメリットがあるし、周囲への被害もその強すぎる力のため免れない。ゆえに、切り札であるそれを、2人は使用するべきか悩んだ。
『そろそろ諦めて俺に喰われろよ。お前らがそいつらを守ってる限り、俺には勝てねえぜ?』
怪物が呆れたようにそう言葉を放つ。魅恋と海公には相変わらずその言葉の意味は分からなかったが、怪物の言葉を理解している3人はこう言葉を返す。
「冗談。この程度で諦めたら彼に笑われるわ」
「うん。諦めない事だけが私たちの取り柄だもんね・・・・・・!」
「ああ。彼に頼らないように、僕たちはこれからも戦わなきゃならないんだ・・・・・・!」
明夜、陽華、光司が諦めぬ魂の輝きを示す。その輝きを見た怪物は『ちっ』と舌打ちをした。
『全く魂が絶望に染まらねえ。いいぜ、なら1人殺して無理やり染めてやるよ!』
「っ、明夜・・・・・・!」
「ええ、使うしかないみたいね・・・・・・!」
怪物が本気を出すかのように、その身から赤いオーラを立ち昇らせる。3人が緊張を更に高め、陽華と明夜が光臨を使用しようと決める。
『オラッ! 死に晒――!』
怪物がその丸太のような右腕を上げる。するとその瞬間、ヒュンと音がしたかと思うと――
怪物の右腕が半ばから両断された。瞬間、切断された腕が地面に落ち、黒い血が周囲に大量に飛び散った。
『っ!? ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?』
「「「っ!?」」」
「「え・・・・・・?」」
怪物が悲鳴を上げ左手で何かに切断された右腕を握る。陽華、明夜、光司の3人は驚愕し、魅恋と海公の2人は何が起きたのか分からず、そんな声を漏らした。
「・・・・・・ふん、うるせえ悲鳴だ」
そして、そんな言葉と共に急に虚空から黒衣の男が出現し、戦場に降り立った。




