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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1525/2051

第1525話 勇気(1)

「・・・・・・ねえ、海公っちもあの事は誰にも話してないんだよね?」

 時は少し遡る。海公と一緒に道を歩いていた魅恋は海公にそう聞いて来た。

「・・・・・・はい。霧園さんもですよね?」

「うん。あんな不思議な事、みんなにも話したかったし、SNSにも投稿したいって思ったけど・・・・・・出来なかった。もちろん、脅されたっていうのもあるけど。でも、なんでかさ」

 海公に同じ事を聞かれた魅恋はその首を縦に振る。魅恋の言葉を聞いた海公は魅恋の言葉に理解を示す。

「分かります。僕もなぜか言えないんです。誰かに話してしまえば、あの出来事が夢かなにかになるような気がして・・・・・・」

「そうそれ。ウチも似たような感じなんだ。でも本当、あの人何だったんだろ・・・・・・」

 スプリガンと名乗った黒衣の男。目の色が金色という事もあって、まるで不吉な黒猫を連想させる。普通では説明できないような特殊な力を使って、化け物と戦った男。魅恋は彼が何者であるのか全く分からない。

「・・・・・・悪い人ではないと思います。僕たちを助けてくれましたし。それに・・・・・・脅しだけで済ませてくれましたから」

「そう・・・・・・だよね」

 目撃者である海公と魅恋の口を封じたいのならば、もっと確実な方法があったはずだ。だが、スプリガンはそうしなかった。海公と魅恋を無傷で日常に帰してくれた。

「でも、気になるよね。あの人の事もあの怪物の事も。はあー、マジで気になり過ぎて無理だわ」

 魅恋はうーんと悩むような顔で大きくため息を吐いた。魅恋は基本好奇心が旺盛というタイプではない。ただ楽しければ、みんなと明るく笑い合えていればいいとしか考えて来なかった。それが、魅恋の幸せ。それが霧園魅恋の本質だ。

 しかし、その考えを、幸せを、本質を蝕むかのように、今の魅恋の中には好奇心と知りたいという欲求が生じている。魅恋はその欲求に頭を悩ませていた。

「・・・・・・僕もあの出来事が何だったのかは知りたいです。今この世界で何が起きてるのか。その理由も知りたい。でも・・・・・・不思議に思われるかもしれませんが、僕はいま何よりも・・・・・・またあの人に会いたいです」

「っ・・・・・・!?」

 海公の漏らした本心を聞いた魅恋は驚いたような顔を浮かべた。そして、「そっか・・・・・・」と呟くとこう言葉を続けた。

「実は・・・・・・ウチもなんだ。ウチもまたあのスプリガンって人に会いたい。助けてもらったお礼の言葉も言いたいし」

「そうですね。僕たち、お礼も言えてないですもんね」

 無意識に魅恋は少し口角を上げる。海公も小さく笑う。

(きっと僕が心の底の底で思っている事は――)

(ウチがあの人に抱いてるこの気持ちは――)

 海公と魅恋が自身の抱いている本当の気持ちを自覚する。

 そんな時、いかなる偶然かはたまた不幸か、


 ピシリと空間に亀裂が奔った。そして、


「・・・・・・!」

 突然、虚空から異形が現れた。

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