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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1523/2051

第1523話 怪人の立ち位置は(4)

「っ、それは・・・・・・」

 そのブレスレットに影人は見覚えがあった。陽華と明夜の変身媒体であるブレスレットだ。といっても、陽華のブレスレットの宝石は赤で、明夜のブレスレットの宝石は青だったが。

「うん。光導姫になるための変身媒体だよ。やっぱり知ってたんだ」

「ああ、まあな・・・・・・」

 影人の反応を見た暁理がそんな言葉を述べる。暁理の言葉を聞いた影人はコクリと頷いた。

「でも、そっか。朝宮さんと月下さんも光導姫に戻ったんだね。まあ、あの2人ならそっちを選ぶだろうなとは思ってたけど」

 影人の先ほどの言葉を思い出しながら、暁理はそう言った。あの2人が戦う理由を暁理は知らないが、お人好しで知られている2人だ。恐らく、光導姫に戻ったのも放っておけないとかそんな理由だろう。暁理はそう思った。

「・・・・・・なあ暁理。お前は何で光導姫に戻ったんだ? お前は知ってるだろ。光導姫がどんなに危険な仕事か。下手すれば死ぬ。それは変わらない。だけどお前は光導姫に戻った。・・・・・・なぜなんだ? 金か? それとも・・・・・・お前が戦う理由は何なんだ?」

 影人は少し真剣な顔を浮かべながら暁理にそう質問した。友人として、また自身も戦う者として影人はその事が知りたかった。

「っ、僕が光導姫に戻った理由・・・・・・? 別にお金とかじゃないよ。確かに光導姫は望めば仕事代は貰えるし、今回もそれに変わりはないってソレイユ様も言ってたけど・・・・・・僕が戦う理由はそれじゃない」

「じゃあ何なんだよ」

「そ、それは・・・・・・」

 影人が軽く首を傾げる。暁理は言葉に詰まった。暁理が光導姫として戦っていた理由、光導姫に戻った理由は同じものだ。そう。目の前にいる少年と共に過ごすこの日常を守りたいという理由。だが、それを正直に言うのは恥ずかし過ぎる。絶対に無理だ。

「べ、別に何でもいいだろ。それより、君はどうなのさ?」

 答えに窮した暁理は、露骨に話題を逸らすように逆に影人にそう聞き返した。暁理にそう聞かれた影人は不思議そうな顔になった。

「俺?」

「うん。詳しい事は知らないけど、君はスプリガンとして暗躍し戦ってたんだろ? なら、君はどうするのかなって」

「俺は・・・・・・色々あってスプリガンに戻った。だから、また戦うつもりだ。ムカつく奴がいるからな。そいつをぶん殴る。それが今の俺の戦う理由だ」

 暁理の問いかけに、影人はご飯を口に放り込みそう答えた。フェルフィズを倒す。それがスプリガンの今の主な存在目的だ。

「な、なにその野蛮人みたいな理由・・・・・・」

「ふん、野蛮人で悪かったな。だけど仕方ねえだろ。それが本音なんだからよ」

 引いている暁理に影人は軽く鼻を鳴らした。そして、箸入れに箸を戻し手を合わせる。

「ご馳走様でした。じゃあ、話はそれだけだからまたな」

「あ、ちょっと待ってよ影人!」

 昼食を終えた影人は立ち上がり、弁当箱を持ってこの場から去ろうとした。そんな影人を暁理は呼び止めた。

「何だ?」

「君はこれからどう立ち回るつもりなの? 前は謎の怪人として振る舞ってたけど・・・・・・君のこれからの立ち位置はどうなるの? 君は僕たちの味方・・・・・・なんだよね?」

 心配と真剣が混じり合ったような表情で、暁理は友人を見つめた。未だに多くの事を知らない暁理からすれば、スプリガンとしての影人がこれから自分たち光導姫にどう関わってくるのか、あまり予想がつかなかった。

「・・・・・・安心しろ。もう、お前ら光導姫や守護者と戦う事はない。だからまあ、俺は味方だ。ただ・・・・・・立ち位置はそんなに変わらないと思うがな」

「っ? 影人、それどういう――」

 影人の答えを聞いた暁理が、よくわからないといった感じで影人に疑問の言葉を投げかけようとした。しかし、影人は振り返らずに暁理に軽く手を振り、

「そのうち分かるだろうぜ。俺とお前がまた戦場で会えばな」

 そう言ってこの場を去っていった。

「あ、影人! もう・・・・・・結局どういう意味なんだよ・・・・・・」

 去りゆく影人の背中を見つめながら、暁理は軽くため息を吐いた。

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