第1522話 怪人の立ち位置は(3)
「――え? 僕はまた光導姫になるのかって?」
昼休み。影人は暁理と一緒に学食エリアの端の席で昼食を摂っていた。突然影人にそんな事を聞かれた暁理は、カレーうどんを箸に挟みながら軽く首を傾げた。
「ああ。ソレイユの奴から聞いてないか? また光導姫と守護者の存在が必要になったんだ。で、元光導姫のお前はどうするのかと思ってな。ちょっと聞いてみたかったんだ」
弁当のちくわの磯辺揚げを箸で摘みながら、影人は補足するようにそう言った。昼休みの学食エリアはかなり賑やかなので、こういった話をしても喧騒がかき消してくれる。少し違うが、木の葉を隠すなら何とやらと実質的に同じだ。まあ、例え誰かが自分たちの話を聞いたところで、ゲームか何かの話だと思うのが関の山だろう。ゆえに、影人は問題ないと考えていた。
「僕をお昼ご飯に誘った理由はそれか・・・・・・君から誘うなんて珍しいからちょっと嬉しかったのに・・・・・・これじゃあ喜び損じゃないか・・・・・・」
「?」
暁理が暗い顔でブツブツと何か言葉を呟く。聞き取りにくい声だったので、暁理が何と言っているか影人には分からなかった。
「で、どうなんだ? ちなみに、ソレイユの話だと朝宮とか月下の一部の奴らはもう光導姫に戻ってるって話だ。まあ、あいつらの場合は戻るっていうか再継続って言った方が正しいかもだがな」
影人が催促の言葉を述べる。ちなみに、影人が再継続の方が正しい云々と言ったのは、その光導姫たちが零無との戦いの時点で光導姫に戻っていたからだった。
「なにそれ。変な言い方。というか、君ソレイユ様とちょくちょく会ってるの? 君がスプリガンっていうのはもう分かったけど、結局それ以外は僕ほとんど知らないからさ」
「ああ、そういやそうだったな。別に話してもいいんだが、長くなるんだよな・・・・・・まあ、また時間ある時に話すぜ。で、質問の答えだが、ソレイユとはまあそんな感じだ」
パーティーの時に影人が暁理に明かしたのは、自分がスプリガンだという事実だけだ。影人がなぜ暗躍していたのかなどは今度暗躍譚として話すと言ったが、今日も時間がありそうにない。影人は再びその話を先に流した。
「ふーん、そうなんだ・・・・・・こっちも質問の答えだけど、あったよ。昨日の昼ぐらいに急に神界に呼び出されてさ。急に呼び出してごめんって言われて、ソレイユ様から話があった。金曜日の世界規模の地震に、まさかあんな意味があったなんて思わなかったよ」
暁理は真剣な顔になるとその首を縦に振った。暁理はソレイユからあの地震以降のこの世界の状態からを教えられた。もちろん、その黒幕たるフェルフィズの事も。前回の反省や、伏せるべき情報もなかったため、ソレイユは光導姫たちに全てを正直に話していた。
「そうか・・・・・・それで、お前は何て答えたんだ? ソレイユにもう1度光導姫になってくれないかって聞かれたんだろ」
「うん、聞かれた。僕の答えは・・・・・・これさ」
暁理はそう言うと、自身の右手の制服の袖口を捲った。すると、暁理の右手首にブレスレットが見えた。緑色の宝石がついたブレスレットが。




