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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1519/2051

第1519話 馴染み深い問いかけ(5)

「・・・・・・カルシウムが足りなかったな。まあ、お前が生きてるか死んでるは知らないが」

 影人はバラバラの破片として転がっている骸骨を見下ろした。

「・・・・・・」

 すると数秒後、バラバラに砕け散った骸骨の破片が光を放ち始めた。次の瞬間、骸骨の破片は光に包まれ消え、次元の裂け目も修復された。

「これは・・・・・・」

 昨日のドラゴンの時と同じ光景だ。影人がそう思っていると、ソレイユが語りかけてきた。

『影人! お疲れ様でした。あなたのおかげで、あちら側からの流入者は元の世界に還せました』

「・・・・・・ソレイユか。そう言うって事は、あの骸骨を向こうに還したのはお前なのか?」

『はい。シトュウ様に【あちら側の者】を返還する力を与えられ、私が還しました。まあ、色々と条件があるので還すのは今さっきという事になりましたが。その条件はあなたや光導姫たちにまた話す予定です。ちなみに、ラルバの方は次元の裂け目を修復する力を与えられたので、そっちを直したのはラルバです』

 影人の質問に対して、ソレイユの答えが影人の中に響く。その答えを聞いた影人は「そうか・・・・・・」と呟いただけだった。

「・・・・・・ソレイユ、悪いが俺は少しやる事がある。念話を切るぜ」

『? はい、分かりました』

 ソレイユは少し不思議そうな声音で影人の言葉を了解した。そして、影人は後ろを振り返り電柱の後ろにいる魅恋と海公の方を見つめた。ソレイユの様子からするに、魅恋と海公には気がついていないようだった。

「・・・・・・俺は逃げろといったはずだ。それなのに、お前らは何で戻って来た?」

「「っ・・・・・・!」」

 影人にそう言葉を掛けられた魅恋と海公はビックリしたような顔を浮かべると、恐る恐るといった感じで電柱の陰から出て来た。

「そ、それは・・・・・・やっぱり、気になったから。体は逃げろって感じだったけど、心は止められなかったっていうか・・・・・・」

「ぼ、僕は霧園さんを・・・・・・この人を1人残して逃げるなんて出来なかったから・・・・・・」

 詰問するような影人の言葉に、魅恋と海公は申し訳ないような顔を浮かべそう答えた。

「・・・・・・そんな理由で死ねるなら好きにしろ。別に俺はお前らが死のうがどうでもいい。お前らが生きてるのは運がよかったからだ。ただの偶然に過ぎない。・・・・・・覚えておけ、好奇心と他者への思い遣りは時に命をなくす」

 2人の答えを聞いた影人は冷たい声で突き放すようにそう言った。容赦のない言葉を浴びせられた魅恋と海公は「うん・・・・・・」「はい・・・・・・」とただ頷く事しか出来なかった。

(イヴ、こいつらスマホでさっきの戦い撮ってたりはしてなかったか?)

『最初は撮ろうとしてたみたいだが、結局はやめてたな。多分、お前の姿が映らなかったからだろうぜ。スプリガンの姿はカメラとか写真には映らないからな』

 最初から2人に気づいていたイヴが影人の懸念点を払拭する。その言葉を聞いた影人はイヴに感謝の言葉を述べた。

(そうか、教えてくれてサンキュー。・・・・・・取り敢えず、今は釘だけ刺して、ないとは思うがこいつらが吹聴するような事があればソレイユに相談してみるか)

 幸い、影人はこの2人とクラスメイトだ。ある程度2人を監視できる。影人はそう考えると、2人にこう言った。

「・・・・・・1つ忠告だ。今日見た事は誰にも言うな。どんな方法であれ、吹聴するような事をすれば・・・・・・分かるな? お前らもさっきの骸骨みたいな事になるぜ」

「「は、はい・・・・・・!」」

 影人の脅しを受けた魅恋と海公は声を震わせながら頷いた。先ほどの戦いを見た2人は、既に影人が普通ではない力を有している事を知っている。ゆえに、その脅しは有効で2人の芯にまで響いた。

「・・・・・・ならいい。せいぜい、バカな事はするなよ」

 そう言うと、影人は2人に背を向けこの場から去ろうとした。だが、最後に魅恋がこんな事を聞いて来た。

「待って! 1つだけ、1つだけ聞かせて! あなたはいったい何者なの!?」

 それは魅恋の魂の叫びだった。そして、影人からすれば馴染み深い問いかけだった。

「・・・・・・スプリガン。それが俺の名だ」

「スプリガン・・・・・・」

 影人の答えを聞いた魅恋はその言葉を反芻した。一瞬立ち止まっていた影人は再び歩き始める。

「影人、お疲れ様だ。ふふっ、格好よかったぜ。さすがはお前だ」

「ふん・・・・・・そうかよ」 

 すると、今まで戦いを見ていた零無がニコニコ顔で影人に合流してきた。影人は零無の感想にそう反応を示した。

 そして、黒衣の怪人は魅恋と海公の前から去ったのだった。


 ――2人の少年少女に忘れられぬ印象と記憶を与えて。

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