第1517話 馴染み深い問いかけ(3)
「・・・・・・これで終わりじゃないぜ」
だが、影人はそれだけで終わらせるつもりはなかった。影人は骸骨が飛ぶ方向に闇色の壁を創造した。結果、骸骨は背面から派手にその壁に激突した。
「ケ・・・・・・」
「・・・・・・今度はその骨斬ってみるか」
地面に崩れ落ちた骸骨を見た影人は、1体の闇色の甲冑纏う騎士を創造した。騎士の手には巨大な両手剣が握られていた。斬るというよりは叩き切るというような印象を受ける剣だ。影人の意思を受けた闇色の騎士はその両手剣を携え、崩れ落ちている骸骨の方へと向かった。
「!」
そして、騎士は両手剣を大上段に構え、骸骨に向かって振り下ろした。
「ケ・・・・・・ケケッ!」
しかし、骸骨はダメージを負っているとは思えぬ俊敏性でその一撃を回避した。騎士の一撃はガンッと音を立てコンクリートを穿った。
「・・・・・・意外だな。まだそれだけ動けるか」
「ケ、ケケ、ケケッ!」
回避した骸骨を見た影人は言葉通り少し意外そうな顔を浮かべた。影人の視線の先で、骸骨は纏っていた鎧を脱ぎ捨てるとカタカタと骨を鳴らし、剣を構えた。
「・・・・・・身軽になったって感じだな。いいぜ、じゃあ次はスピード勝負でも――」
影人が多少は面白くなってきたといった感じで少し口角を上げると、イヴが突然こんな事を言ってきた。
『おい影人。盛り上がってるところだが、お前気付いてないみたいだから言っといてやる。お前がさっき逃がした奴ら、後ろからこっちを覗いてるぜ』
「は・・・・・・?」
急にそんな事を言われた影人は、骸骨を警戒しながらチラリとその視線を後方に向けた。すると、影人から離れた電柱の陰から、魅恋と海公が顔を覗かせていた。
「ね、ねえ海公っち! ちょっと待って! ウチ、やっぱり気になるよ! あの骸骨と黒いお兄さんの事!」
時は少し遡り数分前。海公に手を引かれ走っていた魅恋は、強い力で立ち止まると海公にそう言った。
「え!? な、何言ってるんですか霧園さん! あの人は逃げろって言ったじゃないですか! 僕もまだ混乱してますけど、絶対にさっきの状況は関わっちゃダメなやつですよ!」
海公は立ち止まった魅恋に必死にそう忠告した。先ほどまでは感覚が麻痺していたが、今になって先ほどの状況は危険だと、本能が警鐘を鳴らしているのを海公は感じていた。
「そ、それは分かってる! でも・・・・・・でも、ここで逃げたら、もう一生あんな光景見れない気がする! よく分かんないけど、怖いけど! それでもッ!」
「あ、霧園さん!?」
魅恋はそう言うと、海公の手を振りほどき逃げて来た方向へと走り始めた。海公は驚いた声を漏らした。
(に、逃げなきゃダメだ。絶対にここは逃げなきゃいけないのに・・・・・・だ、だけど・・・・・・)
だが、魅恋を残して逃げるなんて出来ない。海公は葛藤した。そして、
「帰城さん・・・・・・僕に勇気を・・・・・・!」
海公は心の中で自分が尊敬している影人を思い浮かべると、勇気を振り絞って魅恋を追った。




