第1515話 馴染み深い問いかけ(1)
(ったく、間に合ったから良かったが・・・・・・偶然が重ならなきゃ、霧園と春野は死んでたな)
突如として出現した骸骨から魅恋と海公を助けた影人は内心でそう思った。自分がたまたまここにいたから何とかなったものの、そうでなければ悲惨な事態になっていただろう。流石に、まだ同級生の葬式には出たくはない。
(あの黒い裂け目。そこから出てきた異形。ちっ、完全に向こう側の世界からの流入者だな。嬢ちゃんから教えてもらった言葉で言うと・・・・・・【あちら側の者】か)
改めて状況を確認した影人はすぐさまそう結論づけた。
(しかも、この骸骨・・・・・・ゲームか何かで言うところのスケルトン、もしくはアンデットって奴か? 昨日のドラゴンよりタチが悪い。問答無用で人間を殺そうとしやがったしな)
しかも、この感じだと会話もできそうにない。対話が出来ず攻撃的な相手となると、残る手段は戦いだけだ。まあ別に、影人は心の底からの平和主義者というわけではないので、戦う事に何ら感情は抱かないのだが。強いて言えば、面倒といったくらいだ。
「・・・・・・おい、お前ら。1度しか言わないからよく聞け。今すぐ逃げろ。死にたくなかったらな」
影人は首を動かし、自分の背後にいる魅恋と海公を変化した金の瞳で軽く見つめそう言った。
「ふぇ? あ、あの、お兄さん誰・・・・・・? いったい何者なの・・・・・・?」
「な、何が起きているんですか・・・・・・? あの骸骨の化け物はいったい・・・・・・」
魅恋は素っ頓狂な声を漏らし、意味が分からないといった顔でそんな事を聞いてきた。海公も魅恋と同様の表情を浮かべ、そう言葉を述べた。
「・・・・・・お前ら、俺の言葉を聞いてたか? 俺は逃げろって言ったんだ。疑問なんか飛ばしてくるな。感覚が麻痺してるんだろうが、お前らは今死の淵の近くにいるんだよ」
今度は少し強めに影人は2人に言葉を放つ。魅恋と海公の気持ちは分からなくもないが、2人は一般人だ。別に2人を守りながら戦う事は影人からしてみれば余裕ある事だ。だが、あの骸骨がどんな攻撃をして来るか分からないし、万が一という事もある。ゆえに、影人は2人には逃げてほしいと考えていた。
「え、どういう事? というか、危ないんだったらお兄さんもじゃ・・・・・・」
「っ・・・・・・わ、分かりました。霧園さん、行きましょう・・・・・・!」
「え、ちょ、海公っち!?」
魅恋は未だに状況を呑み込めていないようだが、海公は今の状況がただならぬものだと悟ったのか、魅恋の手を引いて走り出した。かなり強い力で魅恋の手を引いたのか、魅恋は驚きながらも海公に引っ張られていった。




