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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1506/2051

第1506話 事態急変(4)

「転移の光・・・・・・シトュウの奴だな。あの竜を向こう側の世界に転移させたという事は、応急処置くらいは出来たって感じだな」

「っ、零無。お前何か知って――」

 零無の漏らした言葉が気になった影人は零無にそう聞こうとした。だがその前に、影人の中にある声が響いた。

『影人! 大丈夫でしたか!?』

「ソレイユか? ああ俺は別に大丈夫だ。ちょうどドラゴン1匹と戦った後だがな」

 声の主はソレイユだった。ソレイユの念話を受けた影人は何でもないようにそんな言葉を返した。

『ド、ドラゴンと戦った!? いったい何があったのですか!? というか、そこは先ほどのホテルですか!?』

 ソレイユは影人の視界を共有しているのだろう。驚きながらもそんな事を聞いて来た。

「そこは知らん。気づいたらドラゴンがいて、後は成り行きだ。というか先ほどのホテルって事は、お前今違う場所にでもいるのか?」

 ソレイユの言葉から影人はそう予想した。影人の予想が当たっている事を示すように、ソレイユはこう言ってきた。

『ええ、私は今神界にいます。緊急事態が起きたとの事で、神界に強制送還されました。つい先ほどまで会議が開かれていましたが、一旦終了したのでこうしてあなたに話しかけた次第です』

「そうか」

 影人はソレイユの言葉を聞きそう呟いた。そして、ソレイユにこう言った。

「ソレイユ。いったい何が起きた? お前が神界に戻された緊急事態っていうのは、いったい何だ?」

『・・・・・・私も全ての状況を把握しているわけではありません。ですが、今起こっている出来事を端的に言うのなら――』

 ソレイユが言葉を紡ごうとする。

 だが、

『っ、すみません影人! また緊急の招集がきました! 申し訳ありませんがまた後で!』

 ソレイユは急にそう断って念話を中断してしまった。1番聞きたかった内容を聞けなかった影人は、戸惑ったように言葉を述べた。

「お、おいソレイユ? ちっ、よりにもよってこのタイミングで・・・・・・」

 念話のチャンネル自体は繋がっているが、ソレイユは話し合いが終わるまでは影人の言葉には反応しないだろう。すると、今まで気を遣って話しかけないでいてくれたシェルディアが、こう言葉を掛けてきた。

「影人、何か分かった? ソレイユと話していたんでしょ?」

「いや、肝心の事聞く前に会話切られたから分からねえ。だが、あいつ何かは知ってる様子だったよ」

 シェルディアの問いかけに影人は首を横に振った。影人の言葉を聞いたシェルディアは「そう・・・・・・」と少し残念そうな顔を浮かべた。

「光の女神との会話・・・・・・ああ、そうか。神力の譲渡で繋がっているから精神間の回路が出来ているのか。ちっ、あのピンク髪め。何ともうらやまけしからん奴だ」

 一方の零無は何かをブツブツと呟きながら面白くなさそうな顔を浮かべていた。影人は今度はそんな零無の方に顔を向けた。

「零無。さっきはソレイユの奴が念話して来たから聞けなかったから、改めて聞くぜ。お前は何か知ってるのか?」

 真剣な顔で、影人はスプリガンの金の瞳を向けた。ソレイユが念話してくる前の零無の呟き。そして、シトュウが真界に戻る前の「事情は零無から聞け」という言葉。影人は質問しながらも、零無は高確率で今何が起きているのか知っていると踏んでいた。

「ああ、知っているよ。今何が起きているのか、どうしてそういった事態になっているのか。その全てをな」

 そして、零無は影人が予想した通りその首を縦に振った。

「やっぱりそうか・・・・・・零無。だったら教えろ。今何が起きているのか。その全てを」

「お前の頼みを吾が断れるわけもないな。もちろん、教えるとも」

 零無は笑みを浮かべると説明を始めた。

「まず、何が起きているのかそれを話そうか。結果を言えば、境界が揺らいで不安定になっているのさ。世界と世界、次元と次元の境界がね。さっき竜が現れたのもそのせいさ」

「世界と世界の境界が不安定・・・・・・? どういう事だ? つまり、この俺たちが生きてる世界と神界とかの距離感が曖昧になってるって事か?」

 零無の言葉を聞いても今一ピンとこなかった影人はそう聞き返した。

「うーん、惜しいが少しだけ違うな。神界や真界もこの世界とは異なる異次元の世界ではあるが、どちらかというと縦の隔たりだ。上位世界と下位世界みたいな感じだよ。その縦の隔たり、次元の境界は絶対に揺らぐ事はない。一部の隙間もなく境界がしっかりしているのさ。今回揺らいでいるのは横の隔たり。つまり、この世界と同じ下位世界の境界が不安定になっているんだよ。元々、横の隔たりは縦の隔たりと違って、安定はしているが隙間はあったからね」

「っ・・・・・・?」

 零無のその説明を影人は理解できなかった。零無はどうやら世界と世界の構造の話をしているようだが、影人にはその辺りの知識は全くなかった。

「っ・・・・そう。そういう事なのね・・・・・・」

 しかし、どうやらシェルディアは零無の話を理解したようだった。シェルディアは真剣な、それでいてどこか深刻な顔になっていた。

「嬢ちゃん、今の話が分かったのか?」

「まあ、お前ならば理解出来るか。なにせ、恐らくこの世界と境界が揺らいでる世界は・・・・・・」

 影人はシェルディアにそう質問し、零無は意味深な言葉を呟いた。2人の視線を集めたシェルディアは、


「ええ。さっきの竜を見て、零無の話を聞いて確信したわ。この世界と境界が揺らいでる世界は・・・・・・()()()()()()()()


 そう言葉を述べた。

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