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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1503/2051

第1503話 事態急変(1)

「先手は譲ってやる。適当に攻撃してこいよ。せめてものハンデだ」

 どこか挑発するように影人はそう言った。影人にそう言われた竜は明確に苛立ち、その顎門を開けた。

『その愚かさ、後悔してももう遅いぞ!』

 竜の思念による言葉が響くと、竜の口から灼熱の炎が放たれた。いわゆるブレス攻撃だ。炎は一瞬で影人に迫り、その存在ごと灰にしようとする。

「するかよ、そんなもん」

 だが、影人は自身の体を闇で強化し『加速』させると、一瞬にして竜の背後へと回った。急に後方から影人の声が響いて来たので、竜は驚いたようにその体を反転させた。巨体ゆえに、それだけで風が巻き起こった。

『っ・・・・・・!? いったい何が・・・・・・』

「・・・・・・一々敵に言う必要はないだろ。というか・・・・・・俺に反応出来てない時点で、お前もう負けだぜ」

『っ、き、貴様ァ・・・・・・!』

 影人の言葉は今度は挑発ではなくただの指摘だったのだが、竜からしてみれば挑発にしか聞こえない。

『ならば、竜の真の力を見るがいい!』

 竜がその巨躯を駆り影人へと接近して来る。そして、体を回してその巨大な尻尾を影人目掛けて振るって来た。その一撃は空を裂き当たれば全身が砕け散る事は必死。

 だが、

「・・・・・・ノロい」

 影人からすればまるで怖くない。影人は眼を闇で強化すると、再び神速の速度で動き竜の背後へと移動した。

「・・・・・・1つ忠告でもしてやるか。お前じゃ俺を捉えるのは無理だ。変化でもすれば多少はマシにはなるだろうがな」

『ふざけるな! 誇り高い竜が貴様のような者なんぞに変化などするものか!』

 竜は再び体を反転させると、今度は右前足の爪を振るって来た。こちらも全てを切り裂くような一撃で、受ければ影人の体など何等分かに裂かれるだろうが、当たらなければどうという事はない。影人は上空に浮かび上がり回避した。

『ガァッ!』

 竜はそのまま回避した影人に灼熱のブレスを放った。今回は飛び上がっただけなので竜も反応出来たのだ。影人は右手を前方に伸ばし、自分の正面に闇色の障壁を展開した。灼熱の炎は熱ごと障壁に阻まれる。

「・・・・・・くだらないプライドだな。程度が知れる。前に戦った奴らは勝つために変化したぜ」

 ブレスを防ぎ切った影人は障壁を解除すると、冷めた口調でそう言葉を述べた。ゼルザディルムとロドルレイニは早々に影人の力を見極め人型へと変化した。誇り高い竜族からすればそれは屈辱なのかもしれないが、少なくともあの2竜は恥よりも勝てる確率を選んだ。それは戦う者として正しく、最も誇りある選択だ。

 だが、この竜は怒りと屈辱といった感情からか、変化する予兆を見せない。影人と最低限戦うために必要なものはスピードだ。そして、竜の巨体では絶対に影人に追いつけない。この竜もそれは分かっているだろうに、感情でそれを阻んでいる。それは感情のデメリットの部分だ。戦う者は出来る限りそれを排除しなければならない。しかし、この竜はそれが出来ていない。ゆえに、影人はこの時点で既に半ばこの竜の事を見限っていた。

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