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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1498/2051

第1498話 打ち上げパーティーだ8(4)

「そうか、お前は・・・・・・」

「やっぱり、勘がいいねスプリガンさん。そう。俺は結果として、闇奴化していたそいつを『フェルフィズの大鎌』で殺した」

 壮司は感情を読み取れぬ顔で頷きそう言った。

「色々疑問があるだろうから順を追って話すぜ。まず、契約を持ちかけて来たのはラルバ様だ。ラルバ様は既に話したように俺の事情を知ってた。俺よりも深くな。だから、闇奴化した奴が親父が殺された原因の大元だって分かったんだ」

「ちょっと待て。ラルバは何で闇奴化した奴の正体が分かったんだ? 闇奴化した奴の情報がそんなにすぐ分かるのか?」

「ラルバ様は一応神だぜ? 神界にいる間は力が使える。だから、闇奴化した奴の情報を知ろうと思うくらいわけない。ラルバ様はそう言ってた」

「そう言われればそうか・・・・・・」

 疑問の言葉を挟んだ影人に壮司はそう答えた。壮司の答えを聞いた影人は、神力の便利さを身を以て知っているので納得した。

「話を戻すぜ。ラルバ様は力を使って俺にその闇奴化した奴の情報を提示した。その情報に触れた俺は、そいつが親父が死んだ原因の大元だって事を知った。俺は怒りと憎しみを抱いたよ。そして、ラルバ様はこう言ってきた。『壮司。そいつを殺したいか? もしお前が魂の穢れを厭わないなら、罪悪の鎖に永遠に縛られても構わないというのなら、俺と契約を結ばないか』ってな」

「・・・・・・それで、お前は契約を呑んだのか」

「・・・・・・ま、そういう事だ」

 壮司はゆっくりと頷いた。そして、どこか遠い目を浮かべ夜空を見上げた。

「契約を呑んだ俺はラルバ様から『フェルフィズの大鎌』を渡された。そして、現場に転移してもらって闇奴化したそいつを殺した。その瞬間、俺とラルバ様の契約は結ばれた」

「・・・・・・そうか」

 影人は重い声でそう言葉を絞り出す。そして、壮司にこう質問した。

「・・・・・・気分が良くない質問だろうが、もう1つだけ聞かせてくれ。俺はソレイユから闇奴化した人間が殺された事件は3件だって聞いた。それも、お前がやった事なのか?」

「ああ。さっき俺が殺したのは首領の1人だったって言っただろ。その2人もその組織の首領だったんだ。奴らの組織は国際犯罪シンジケートだった。そいつらもたまたま闇奴化したから、俺が殺した。ラルバ様が後々情報を集めたら、首領を3人も失ったその組織は内部の権力争いで自滅したらしい。その話を聞いた時はちょっとだけスカッとしたよ。ざまあねえってな」

「っ・・・・・・」

 から笑いを浮かべる壮司。そんな壮司に影人はどう声を掛けていいのか分からなかった。

「・・・・・・とまあ、俺がラルバ様と契約を結んだ理由はそんなところだ。いくらクズだって言っても、俺がした事は決して許される事じゃない。法治国家に生きてる以上、俺は法に従わなきゃならないからな。それが道理だ。だから、ラルバ様に契約を破棄されたあの戦いの後、俺は自首しようと思ったんだが・・・・・・結果はご覧の通りだ。俺はここにいる。色々と大人の事情とか、犯罪立証の不可能さとかが絡んでな。俺は大罪人のくせに未だに何のお咎めもなくシャバにいるってわけだ」

 壮司は自虐的にそう言うと、ヘラリとした笑みを浮かべ、もたれ掛かっていた手すりから体を離した。

「これで俺の話は、つまらねえ胸糞の悪い話は終わりだ。じゃあな、スプリガンさん。俺はこれで失礼させてもらうぜ」

 壮司はそう言い残すと、バルコニーを出てパーティー会場の方に戻って行った。

「・・・・・・」

 壮司がラルバと契約を結んだ理由を知った影人は、しばらくの間口をつぐんだままだった。壮司の葛藤はどれくらいのものだろう。彼はこれからどのようにして生きて行くのだろう。影人には分からない。

 だが、

(・・・・・・後悔はしてない様子だったな。故人が復讐なんて望んでいないって事も理解してた感じだった。だけど、それでもあいつは復讐を決断した。その昏い覚悟を俺は知ってる)

 それだけは分かった。ならば、影人は壮司の決断に対して何も思うべきではない。あれは既に罪を自覚し背負っている人間だった。

「・・・・・・それに、元々他人だからな。深く考えすぎる義理もないか」

 どこか冷たい声音で影人はそう呟いた。仲がいいわけでもないのに、あれこれ勝手に考えては失礼だろうし、考える意義もない。それはある意味で正しい反応なのかもしれないが、10代後半のいわゆる普通の少年の考えではなかった。

「影人!」

「げっ、零無・・・・・・」

 それから少しの間、影人が夜風に当たっていると、バルコニーに零無が現れた。零無の姿を見た影人は思わずその顔を苦くした。

「何でこの場所が・・・・・・ああ、そうか。お前は気配で俺の場所が分かるんだったな」

「ああ。さっきのお前は何だか色々危なそうだったからな。だから、頭を冷やす時間を作ってやっていたのさ。頭は冷めたかい影人?」

 影人の呟きに零無はニコニコ顔で頷いた。どうやら零無に気遣われていたらしい。本当に変わったなと思いながら影人は頷いた。

「・・・・・・ああ。まあ落ち着いたよ。落ち着かざるを得なかったからな」

「? どういう意味だい?」

「別に何でもねえよ。こっちの話だ。それより、お前は何をしに俺の所に来たんだ?」

 首を傾げる零無に影人はそう言った。影人にそう言われた零無は明るい顔でこう言った。

「吾がお前の元にいるのは自然の摂理だろ。まあそれはそれとして、シトュウがお前を呼んでこいってうるさくてな。だから来たのさ。吾をパシリのように使った事は許せんが、まあ今日は祝い事。多めに見てやるさ。吾は寛大だからな」

「寛大な奴は自分でそう言わねえよ。だがまあ、分かった。戻ってやるよ。零無、案内を――」

 影人がそう言おうとした時だった。突然何の前触れもなく、


 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――


 世界が震えた。

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