第1495話 打ち上げパーティーだ8(1)
「っ・・・・・・お前が・・・・・・」
壮司の言葉を聞いた影人は驚いたようにそう言葉を漏らした。かつて影人とレイゼロールを、全てを殺す呪われし神器「フェルフィズの大鎌」を使って何度も襲ってきた黒衣の襲撃者。スプリガンと同じもう1人の目的不明・正体不明。その人物が、今影人の目の前にいる。
「・・・・・・一応、あんたの事はあの戦いが終わってからソレイユから聞いてる。確か元守護者ランキング4位『死神』。それがあんたのもう1つの正体だったってな」
「ああ、そうだ。後は一応、守護者ランキング50位スケアクロウって名前もあったんだが、まあこっちは偽装用の名前だからどうでもいいか」
警戒した声音を隠さずに影人は壮司にそう言った。影人の言葉に壮司は頷いた。
「俺もあんたの事はあの戦いが終わってからラルバ様から聞いてるよ、スプリガンさん。いや、本名帰城影人さん。女神ソレイユから力を与えられ、光と闇の戦いを暗躍していた男。そして、レイゼロールが唯一心を許した人間だってな」
壮司も相変わらず軽薄という言葉がピッタリといった感じの顔で影人にそう言った。壮司にそう言われた影人は、前髪の下の目で壮司を軽く睨みながらこう言葉を返す。
「・・・・・・俺はレイゼロールにとってそんな大層な人間じゃない。ただ、あいつと縁があっだけだ。それで、何度も俺を殺そうとしてた死神さんが、俺に何の用だ。すいませんとでも俺に謝罪でもしに来たか?」
影人の最後の言葉はただの冗談、皮肉のつもりだった。だがその言葉に壮司は、
「おお、大正解。いやー、さすが暗躍者。勘がいいねえ」
軽く手を叩きながら頷いた。
「・・・・・・・・・・・・は?」
まさか、そんな答えを返されるとは全く予想していなかった影人は呆気に取られたように、ポカンとした顔になった。
「・・・・・・嘘だろ?」
「嘘じゃないんだなこれが。まあ見ててよ」
壮司は影人の言葉に軽く首を横に振ると、真剣な顔を浮かべ影人に深く頭を下げて来た。
「帰城影人さん。今まで本当に申し訳ありませんでした。謝って許される事では決してありませんが、ここに私は心から謝罪いたします。あなたを殺そうとした罪はこれから一生背負っていく次第です」
そして、丁寧な言葉遣いで影人に謝罪した。
「・・・・・・」
まさかの事態に影人はしばらくの間呆然とし、言葉を発せられなかった。壮司は影人が言葉を発せられない間、ずっと頭を下げ続けていた。
「・・・・・・取り敢えず、顔を上げてくれ。そのまま頭を下げられたままだと調子が狂う」
「そうかい? それじゃ、お言葉に甘えよるよ」
ようやく言葉を絞り出せた影人は最初に壮司にそう声を掛けた。影人にそう言われた壮司は、すっかり元の軽薄さに戻り、顔を上げヘラリとした笑みを浮かべた。
「・・・・・・あんたの謝罪は一応受け入れとく。だが、俺自身は謝罪なんていらないと思ってる。さっきも『提督』の奴からあんたと似たような謝罪を受けたが、俺たちは互いに命を懸けた世界にいたんだ。そんな謝罪を一々してたら終わりがないだろ。まあ、この謝罪はあんたの区切りなんだろうがよ」
壮司の謝罪に対し影人はそう言葉を述べた。影人の言葉を受けた壮司は少し意外そうな顔になる。
「へえ『提督』も・・・・・・さすが謎の怪人スプリガンさん。大人気だったんだな」
「殺しの目標としての人気なんかいらなかったんだな」
「ははっ、違いない」
壮司は軽く笑うと、少しだけ真面目な顔を浮かべた。




