第1487話 打ち上げパーティーだ6(2)
扉を開けた先は広くはあったが、パーティー会場ほど広い場所ではなかった。それでも高級ホテルの部屋の1つだからだろう。その部屋は随分と華やかだった。
「お、来やがったぜ」
部屋の中央に置かれた大きなテーブル。その声はそこから聞こえて来た。そこには何人かの男女が座っていた。今言葉を発したのはその内の1人、十闇第6の闇『狂拳』の冥だ。冥は影人と同じように黒いスーツ姿だったが、赤のネクタイを緩めに緩め、ボタンも第2ボタンまで外しており、かなり着崩している様子だった。
「あ、本当だ」
「やあ、この前ぶり」
冥に続き2人の闇人、十闇第7の闇『剣鬼』の響斬と十闇第1の闇『破壊』のゼノがそう言葉を漏らした。響斬は真夏と同じように着物を(色は薄い青)を着ており、ゼノは黒いスーツを着ていた。冥同様にオレンジ色のネクタイは緩めていた。
「・・・・・・」
席に着いていた女性の闇人、十闇第9の闇『殺影』の殺花は軽く会釈をしてきた。殺花も服装は和装、美しい花の刺繍が入った黒色の着物を着ていた。
「・・・・・・ふん、ようやく来たか」
そして、もう1人。美しい白髪にアイスブルーの瞳が特徴的な女性、レイゼロールがそう言った。レイゼロールはいつもの西洋風の黒の喪服姿ではなく、シックな黒色のドレスを纏っていた。ついでに髪型もいつもはストレートだが、今日は1つに括った毛を左の肩口から垂らしていた。
「よう、レイゼロール。それに闇人ども。全員オシャレさんだな」
影人は軽く右手を上げてそう言うと、テーブルまで近づいた。空席が何席かあったので、レイゼロールの対面の席に座る。影人の右隣には殺花がおり、左隣は空席だった。
「おい、先ほどシェルディアが来た時に聞いたが、お前今日は前髪を上げているのではなかったのか?」
影人が席に着くとレイゼロールがそう聞いて来た。
「あー・・・・・・ちょっと逃げ回ってる内に髪下がって来てよ。1回目は大丈夫だったんだが、流石に2回となるとダメだったみたいだ」
「逃げ回る・・・・・・? お前はパーティーでいったい何をしているのだ・・・・・・」
影人の答えを聞いたレイゼロールは呆れたようにそう呟いた。何をどうすればパーティーで2回も逃げる事になるのだろうか。
「まあ色々あったんだよ。それより、お前髪上げてる俺見たかったのか? 別に今日は元々上げてたし、見たいなら見せてやってもいいが。って言っても、スプリガン時と目の色違うだけだがよ」
「・・・・・・ならば、一応見せろ。シェルディアが見て、我だけ見ていないというのは不快だからな」
「どういう理由だよ・・・・・・ま、いいけど」
レイゼロールの答えは影人には理解出来ないものだったが、影人は右手で自分の前髪を上げた。再び影人の素顔が露わになる。
「ふむ・・・・・・それがお前の素顔か・・・・・・」
影人の素顔を見たレイゼロールはポツリとそう言葉を漏らした。一応、レイゼロール以外の闇人たちも影人の素顔を見たが、彼・彼女からすれば影人はスプリガン時の方に馴染みがあるので、影人がスプリガンと分かった今、大して驚きも反応もしなかった。
「・・・・・・大した感想も出んな」
「そりゃ悪かったな。だから言っただろ。スプリガン時と変わらないって」
上げていた髪を下ろし、再び完全な前髪野郎に戻った影人がそう言葉を述べる。全く、これでは見せ損だ。




