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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1481/2051

第1481話 打ち上げパーティーだ4(4)

「――うん? 何か聞き覚えのある声が・・・・・・って、あ! 副会長と・・・・・・帰城くん!? え、ちょっと何で髪上げてるのよ!?」

「――おや、本当だ。しかもファレルナくんと『守護者』くんもいるじゃないか。これは中々珍しい組み合わせだね」

 2人がそんな感じで攻防を繰り広げていると、女性の声が聞こえて来た。すると、黒色の着物と空色のドレスに身を包んだ、元光導姫ランキング10位『呪術師』榊原真夏と、元光導姫ランキング7位『芸術家』ロゼ・ピュルセが4人の着くテーブルへと現れた。真夏は途中で影人の事に気がつくと、驚いた顔になった。

「げっ! 会長にピュルセさん・・・・・・!?」

 光司と攻防を繰り広げていた影人が真夏とロゼに気がつく。影人の言葉を聞いた真夏は不満げな顔を浮かべた。

「ちょっと帰城くんげって何よげって! 失礼でしょうが! 後何で髪上げてるのよ理由教えなさい!」

「気分ですよ気分! 本当にいつもハイテンションですね会長は!」

 半ばヤケクソ気味に影人はそう叫んだ。本当に勘弁してほしい。なぜどんどんと知人が集まってくるのだ。影人がそんな事を考えていると、ロゼが興味深そうに影人を見つめて来た。

「ふむ、素顔が露わになっている君とは珍しい。こう見てみると、確かにスプリガンの時と同じ顔なのだね。いいね、疼いてきた。湧き上がってきた。帰城くん、すまないが1枚描かせてもらってもいいかい? なに、こんな事もあろうかと紙とペンは常に持ち歩いているんだ。本当はしっかりとした道具で描きたいんだがね。それはまた後日に譲るよ」

「あんたまで何を言ってるんですか!? 無理ですよ無理! 絶対ダメですから! というか後日に譲るって何ですか!?」

 どこからかメモ用紙とペンを取り出したロゼが、欲望やら何やらが滲んだ目で影人を見つめて来た。そんなロゼに軽い恐怖感を抱きながら、影人は悲鳴のような声を上げた。

「まあまあまあ、そう言わずに。減るものでもないだろう。是非に頼むよ。・・・・・・ああ、もう限界だ! 描かせてくれ!」

「だからダメって言ってんだろ!?」

 ロゼの様子が急変し、興奮したように影人にそう言ってきた。影人は変わらず悲鳴のような声を上げ、遂に席から立ち上がり、光司の手を振り解いた。

「帰城くん1枚でいいんだ! 世界のためにも君の晴れ姿を撮らせてくれ!」

「私の抑えられない衝動のために1枚描かせてくれたまえ!」

「何なんだよお前らは!? 無理だって言ってんだろうがこの狂人ども!」

 光司とロゼにそう迫られた影人は本能に従って逃げ出した。

「帰城くん!? 待ってくれどこに行く気だい!?」

「逃がさないよ! 既に君は私の獲物だ!」

 逃げ出した影人を見た光司とロゼは、当然のように影人を追い始めた。急に追う者と追われる者のハントが始まった。場所はパーティー会場で、追う者は何か色々暴走したイケメン御曹司と美人芸術家。追われる者は捻くれクズ厨二の前髪野郎。全く以て意味不明な状況だった。

「何かよく分からない事になったけど・・・・・・面白いからいいわ! あはははは!」

 そして、その様子を見ていた真夏は面白そうに笑い声を上げていた。













「はあ、はあ、はあ・・・・・・ま、撒いたか・・・・?」

 約10分後。光司とロゼに追いかけられていた影人は、人混みに紛れながらそう呟いた。まだまだ安心は出来ないが、取り敢えず2人の姿は見えないし声も聞こえない。ようやく軽く安心出来た影人は大きく息を吐いた。

「ふぅ・・・・・・ったく、本当になんて日だよ今日は・・・・・・ああ、不幸だ。終わってやがる・・・・・・」

 知人にはよく会うわ、よく分からない理由で追いかけられるわ。さっきまでの自分は食事を楽しんでいたはずなのに。どうしてこうなったと影人は心の底から思った。

「頼むからこれで不幸の連鎖終わってくれよ・・・・・・これ以上は流石に精神が持たん・・・・・・」

 影人が強くそう思いながら言葉を呟く。取り敢えず、ほとぼりが冷めるまではどこか目立たないような場所にいよう。そうだ確かバルコニーが解放されていた。そこに行こう。影人がそう考えたその瞬間、

「わっ!?」

「っ!?」

 影人に1人の女性がぶつかってきた。薄緑のドレスに身を包んだ女性が驚いたような声を上げ、ぶつかられた影人も、反射的に驚いたような表情を浮かべた。

「あ、ごめんなさい! 大丈夫ですか!?」

「え、ええ。全然大丈夫――」

 女性の言葉に影人は言葉を返そうと、その目を女性の顔に向けた。そして、影人は呆然とした。

「え・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」

 影人は言葉を失った。なぜならば、その女性に影人は見覚えがあったから。その女性の事を影人はよく知っていた。なぜなら、彼女は数少ない影人の悪友なのだから。

「な、なんで・・・・・・なんでお前がここに・・・・・・」

 影人は無意識に首を横に振った。なぜ、なぜ、なぜ。出てくるのは疑問ばかり。その衝撃は、シェルディアの正体を知った時と酷似していた。

「暁理・・・・・・」

 そして、影人は震える声で悪友の名前を呟いた。

「え・・・・・・? う、嘘・・・・・・ま、まさか・・・・・・」

 そして、影人に名を呼ばれた暁理も、その声からぶつかった男が誰なのか気づいたように、その目を大きく見開いた。

「え、影人・・・・・・・・・・・・?」

 やがて、暁理も掠れたような震えた声で悪友であり特別な人の名前を呟いた。影人と同じように呆然とした、信じられないといった顔を浮かべながら。


 ――どうやら、まだまだ騒ぎやイベントは起こり足りないようだ。

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