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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1477/2051

第1477話 打ち上げパーティーだ3(4)

「あ、あれまさか全部1人で食う気か・・・・・・?」

「い、いや、それはないだろ。女の子だし、それに何十人前もあるぜ、あれ・・・・・・」

「凄え・・・・・・リアルギャル◯根かよ・・・・・・」

 その光景を見ていた周囲の者たちがそんな感想を漏らす。みんな信じられないといった様子で。その気持ちは分かる。だが、()は本当に全部1人で食うのだ。食に関しては、彼女は間違いなくモンスターである。その少女の事を知っていた影人は内心でそう思った。

「ちょっと陽華、どれだけ食べる気よ。もうワゴンにお皿乗らなくなってきたわよ」

 その少女の隣にいた、青色のドレスを纏った少女が呆れたように件の少女に声を掛ける。パッと見クールそうな印象を抱くその少女が、実はかなり天然な事を影人は知っている。

「え、もう? うーん、だったら仕方ないか。1回食べてからまた来ようっと。私、今日は一杯食べるんだ! さ、テーブルに戻ろ明夜!」

「もう充分以上に一杯よ・・・・・・。絶対火凛と暗葉引くわよ」

 その2人の少女、朝宮陽華と月下明夜はそう言葉を交わし合うと、たくさんの料理を乗せたワゴンを押しながら、どこかへと消えて行った。2人の姿を人に紛れて見ていた影人は軽くため息を吐いた。

「やっぱりいやがったかあいつら・・・・・・見つかったら面倒だな。顔合わせないように気をつけよっと」

 基本的に面倒な事が嫌いで孤独好きな前髪はそう呟くと、2人が去った後のビュッフェコーナーで料理を物色し始めた。普通ならば、2人に声を掛けたりするところだろうが、残念ながら前髪野郎は普通ではない。何でこんなんが主人公なのか本当に分からないが、そういう奴である。ひでえもんだ。

「ふぅ、今更だが・・・・・・地雷原歩いてんじゃねえか俺?」

 2回目の料理を皿に盛り付け終わった影人はそう呟いた。基本人と関わりたくない自分が、このパーティー内に何人かいるだろう知人と顔を合わせて話をする。端的に言って拷問である。そういう陽キャラみたいな事は本当にしたくない。先ほどのアイティレのようにシリアスな話ならまだしも、談笑なんかしようものなら終わりだ。捻くれ具合が天元突破している前髪はそんな事を思っていた。

「げっ、さっきの席埋まってるじゃねえか・・・・・・」

 先ほどアイティレと話していた席に戻ろうとした影人は、その席に人が座っているのを見た。テーブルには空のグラスしか置いていなかったので、空席だと思って座ったのだろう。

「仕方ねえ。別の席を探すか」

 影人はそう呟くと、他の空席を探す事にした。相席なんかは死んでもごめんなので、完全なる空席を。影人が適当にパーティー会場を歩きながら空席を探していると、

「――お兄さん!」

「っ・・・・・・」

 背後からそんな声が聞こえてきた。その声と呼び方に聞き覚えがあった影人は、嫌な予感を抱きつつも恐る恐る後ろを振り返った。

「やっぱりお兄さんでした。一応、数日前に顔は合わせましたが・・・・・・こうして正面から話すのはお久しぶりですね。また会えて嬉しいです」

 すると、そこには15歳くらいのまだ少し幼さが残る少女がいた。プラチナの長髪に赤みがかった茶色の瞳。顔はあどけなさが残り愛嬌がある。前に会った時と同じ華美過ぎない装飾の施された、白を基調としたドレスではなく、今日は薄い金色と白を基調としたドレスを纏っている。胸元にロザリオがあるところは変わっていなかったが。

「はあー、早速かよ・・・・・・ああ、そうだな。こうしてしっかりと、しかも互いに普段の姿で会うのは去年の夏以来だな。なあ・・・・・・聖女サマ」

 そして、影人はその少女――元光導姫ランキング1位『聖女』、ファレルナ・マリア・ミュルセールにそう言葉を送った。

 そしてそして、

「あれ帰城くん・・・・・・? え、何で君が髪を上げて・・・・・・」

「どうかしたのかい、香乃宮くん?」

 そんなタイミングで影人の前に新たに2人の少年が現れた。1人は白のタキシードに身を包んだ日本人で、もう1人は黒のタキシード纏うイギリス人。2人とも凄まじいイケメンだった。

 白のタキシードを着た少年――元守護者ランキング10位『騎士』、香乃宮光司は影人を見て驚いたようにそう呟き、光司の名を呼んだ黒のタキシードを着た少年――元守護者ランキング1位『守護者』プロト・ガード・アルセルトは不思議そうな顔を浮かべた。

「おい嘘だろ・・・・・・何でこのタイミングでお前まで現れるんだよ・・・・・・香乃宮・・・・・・」

 光司に気がついた影人は絶望したようにそう言葉を漏らした。

 

 ――楽しいパーティーはまだまだ始まったばかりだ。

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