第1475話 打ち上げパーティーだ3(2)
「それでお前の気持ちの整理がつくなら、分かった。謝罪ってやつをしろよ。・・・・・・だが、せっかくだ。1つ教えろよ『提督』。お前は何で俺を殺そうとしてたのかを。あくまで予想だが、お前は俺が狙いで日本に来たんだろ? なぜ日本にまで来て俺を狙った? 単純な正義感じゃないはずだ。その理由だけは分からないから興味がある」
影人はアイティレにそう問いかけた。影人とソレイユはアイティレがスプリガンを目的とし、日本に来たのだと考えていた。アイティレと初めて戦ったのは、アイティレがスプリガンを敵と考えているのか考えていないのか、本当にスプリガンが来日の目的なのか、その事を確かめるためだった。しかし、理由の方までは2人は深くは考えていなかった。
「そうだな・・・・・・君には知る権利がある。あまり気持ちのいい話ではないが、私が君を殺そうとしていた理由を話そう」
アイティレはそう前置きすると、その理由を話し始めた。
「一言で言うなら、君を殺そうとした理由は、私の観念と私の国の政府の利害が一致したからだ。私は政府からスプリガンを拘束、もしくは殺害してほしいという依頼を受けていた」
「っ・・・・・・」
全く予想外のその言葉を聞いた影人は驚いたようにその目を見開いた。そして、真剣な顔になるとこう聞き返した。
「・・・・・・どういう事だ。何でお前の国の政府がそんな依頼をお前にする? 奴らの目的は何だっんだ?」
「・・・・・・最初は教えてもらえなかったが、レイゼロールとの最終決戦が終わった翌日に教えてもらったよ。どうやら、スプリガンの力を利用しようと考えていたらしい。光導姫と守護者の力は闇奴や闇人以外の問題に用いてはならないという規則がある。それは全ての国に周知されている事だ」
「・・・・・・なるほどな。話が読めたぜ。あの時の俺は守護者でも闇人かも分からない文字通り怪人で、その規則外の人物だった。その怪人が持っていた超常の力・・・・お前の国の政府はそれを利用出来ればと考えたのか。兵力や軍事力なんかに。そして、もしかしたら他の国も同じような事を考えているかもしれない。もし他の国にその力を利用されたら面倒になる。他の国に利用されるリスクがあるなら殺す事もやむ無し。だから、拘束と抹殺指令が同時に出てたのか」
相変わらず無駄に勘がいい前髪は、それだけの情報で答えに辿り着いた。影人の答えを聞いたアイティレは少し驚いたように、その赤い目を見開いた。
「・・・・・・驚いたな。よくも今の言葉だけで答えが分かったものだ。見縊っていたつもりは毛頭ないが、君は随分と切れ者のようだ」
「別に切れ者なんかじゃない。ただ、それくらいしか理由はないなって思っただけだ。で、あの最終決戦で俺の立ち位置が実は光サイドだと分かったから、指令は取り消された。そんなところか」
「・・・・・・君には勝手にしか聞こえないだろうが、そういう事だ」
「そうだな。確かに勝手にしか聞こえねえ。・・・・・・だが、こんな事俺に話していいのかよ? 普通に言っちゃいけない系の話だろ、これは。しかも、それを本人に対して話すなんてのは余計に」
「当然、誰にも口外してはいけないと言われたよ。だが、それでもこの話は君にはしなければならなかった。それがせめてもの君に対する贖罪だ。私が出来るな」
影人の指摘を認めながらも、アイティレはそう言葉を紡いだ。そして、今度はこう言葉を述べた。
「もう1つ説明しなければならない事は、先ほど言った私の観念についてだ。私は過去の経験がきっかけで、闇の力を扱うモノ全てを敵と考えていた。私が光導姫になったのもその経験が原因だ。その観念から私は君を敵と、滅ぼさなければいけない者だと決定づけていた。・・・・・・独断と偏見でな」
「・・・・・・そのお前の観念と国の指示が重なった。それが、お前が俺を狙っていた理由の全貌か」
全ての理由を聞き終えた影人はその目でアイティレの赤い瞳を見つめながら、締めくくるようにそう言葉を吐いた。アイティレはその言葉に頷いた。




