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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1472/2051

第1472話 打ち上げパーティーだ2(3)

「ああ、その・・・・・・ちょっとした気まぐれですよ。本当にちょっとしたね」

 シトュウにそう聞かれた影人はフッと小さく笑った。それはいつも通りの気色の悪い前髪スマイルだったが、今日は顔が露出している分、いつもより数段マシ(増しではない)に見えた。なんなら、どこかクールにも見えるので非常に腹立たしい。端的に言って許せない。前髪野郎の笑みは気色悪いのが普通であり当然なのである。よって抗議し裁判所に訴える所存である。その結果、被告前髪野郎。一審二審三審ともに全て死刑判決。やったぜ民意の大勝利である。ちなみに判決理由はすべて「被告が前髪野郎だから」という理由である。これ以上ない正当であり至当な理由だ。

「そうですか。ふむ、言うのが遅れましたが・・・・・・今日の姿は非常に似合っていますよ。こういった場合は、格好いいと言うのでしょうか」

「あ、ああ・・・・まさかシトュウさんにそんな事言われるとは思ってなかったけど、一応ありがとう。シトュウさんも今日の服装似合ってるぜ」

 シトュウに褒められた影人は戸惑ったような顔になりながらも、そう言葉を返した。影人にドレス姿を褒められたシトュウは、自分の姿を見下ろした。

「そうですか。一応、場に合わせて服装を変化させただけなのですが・・・・・・ありがとうございます。恐らくですが・・・・・・嬉しいです」

 シトュウは少しぎこちないが小さな笑みを浮かべた。真界の神は基本は感情が希薄なので、笑顔を浮かべる事もほとんどないし、自分がどういう感情を抱いてるのか感覚としてあまり分からない時がある。シトュウの少しぎこちない笑みと言葉の理由にはそのような背景が存在していた。

「っ・・・・・・」

 一方、シトュウの笑みを見た事がなかったためか、初めて見たシトュウの笑顔に、影人は思わず小さく息を呑んだ。それは純粋に美しいと、綺麗と思ってしまったからだった。なるほど。これがギャップというやつか。何だかんだ冷静な前髪野郎はそう思った。

「おい、シトュウ。影人に色目を使うな。普通に殺したくなる」

「そんなものは全く使っていませんよ。変に勘違いしないでください」

 すると、今まで黙っていた零無がギロリとシトュウを睨み付けた。零無にそう言われたシトュウは、少し呆れたように顔を浮かべた。

「ああ、そうだ。シトュウさん。後日、また1回どこかで会えないか? 話したい事というか、聞きたい事があるんだ」

 気を取り直すといった感じではないが、影人は少し話題を変えるようにシトュウにそう言った。

「それは別に構いませんが・・・・・・今話せる内容ではないのですか?」

「いや、一応話せる事は話せるんだが・・・・・・ほら、今日はパーティー。まあめでたい日だろ。だから、真剣な話とかはそういうのはあんまりしない方がいいだろ? 理由はそれだけさ」

 軽く笑みを浮かべながら、影人はその理由を述べた。本当に大した理由ではないし、理由としてはかなり気取ったものに聞こえるが、前髪野郎に羞恥心はないので、本気でそう思い言っているのだった。終わりである。

「なるほど、それが人の理屈ですか・・・・・・分かりました。では後日にしましょう」

「助かるよ。シトュウさんもパーティー楽しんでくれ。あ、そうだ・・・・・・」

 影人はそこで何かに気づいたような顔になると、ズボンの右ポケットに入れていた、黒い宝石のついたペンデュラムを取り出した。

「なあイヴ。せっかくだから、お前もパーティーを楽しんだらどうだ?」

『ああ? どういう事だよ?』

 突然、影人にそんな事を言われたイヴが影人にそう聞き返す。影人はイヴに答えを返した。

「お前に肉体を与えてやるって意味だよ。それならパーティーを楽しめるだろ」

『っ・・・・・・いいのかよ?』

「ああ、いいぜ。せっかくのどんちゃん騒ぎ。楽しまなきゃ損するってもんだ」

 確認を取るようにそう言ってきたイヴに影人は頷いた。イヴは普段肉体がないため、肉体ならではの感覚に飢えている。影人はその事をよく知っていた。

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