第1471話 打ち上げパーティーだ2(2)
「へへっ、さーて何から食うかな。どれもこれも美味そうだ」
一方、シェルディアたちを放ってタダ飯を物色しに来たクズ前髪は、皿を持ちながらそんな事を呟いていた。目の前には和食や洋食や中華、様々な食べ物がズラリと置かれている。どれもこれも、それはそれは美味しそうに。晩飯をまだ食べていない影人は、腹が鳴るのを感じながら笑みを浮かべた。
ちなみに、日奈美には友達と晩御飯に行くと言ってあるので、アリバイは問題ない。日奈美には「あんたにそんな友達いたんだ」と驚かれたので少し腹立ったが、そんなものは目の前のご馳走に比べればどうでもいい事である。
「まずはこのステーキは外せないだろ。で、この生ハムとチーズのバジルサラダもいるし、そこの蟹の身入りトマトクリームパスタも・・・・・・ああ、後は向こうの寿司も・・・・・・」
影人が皿に次々と食べ物を盛り付けていると、後ろから突然こんな声が聞こえて来た。
「――帰城影人」
「ん・・・・・・?」
自分の名を呼ばれた影人は後ろを振り返った。影人と共にいた零無も影人同様に後方に振り返る。すると、そこには薄紫の髪に透明の瞳をした1人の女性がいた。その女性はその髪と同じ色の、紫色のドレスを纏っていた。
「シトュウさん・・・・・・」
その女性、現在の真界の神の最上位『空』である女神の名前を、影人は少し驚いたように呟いた。まさか、シトュウまでパーティーに参加しているとは、影人は思っていなかった。
「何だ。やっぱりお前もいたか。まあ、ここに張られている様々な結界の力の気配から、お前がいる事は予想していたが」
影人とは違い、零無は大して驚いた様子もなく、そんな言葉を述べた。どうやら、零無はシトュウがパーティーに参加している事を、確信を抱くとはいかないまでも分かっていたようだ。
「ええ。この場所に結界を張ったのは私です。それ以外にも色々とこのパーティーのために協力はしていますが。あなたは随分とマシな様子になりましたね、零無」
零無をしっかりと認識しながらシトュウはそう言った。真界の神であるシトュウにとって、幽霊である零無を認識する事は造作もない事だ。
「色々とパーティーに協力・・・・・・ああ、なるほど。ここにいる奴らを転移させたのはシトュウさんってわけか。確かに『空』なら地上でも力を行使できるもんな」
シトュウの言葉の一端から、先ほど抱いていた疑問の答えを予想した影人は、納得したようにそう呟いた。相変わらず、無駄に勘のいい奴である。
「はい。その事にも協力させていただきました。本来ならば、『空』である私が地上に降りて妄りに力を使う事は好ましいとは言えないのですが・・・・・・あなたには恩義がありますからね。ゆえに、というわけです」
「・・・・・・別に俺は自分の因縁にケリをつけただけだがな。だがまあ、ありがとう。礼は言っとくよ」
影人はチラリと隣の零無を見つめながら、軽く笑みを浮かべた。シトュウは小さく首を横に振った。
「礼には及びません。それよりも、今日は髪を上げているのですね」
シトュウはどこか珍しそうにそう聞いた。影人と会った回数や時間はそれほど多くはないが、影人は常にその目を前髪で隠していた。先日神力を伴って変身していた際にはその目が露出していたが、それは変身による影響だ。ゆえに、シトュウはそう聞いたのだった。




