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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1465/2051

第1465話 パーティーの準備(4)

「良かったな。せっかくだし、目一杯パーティー楽しめよ」

「!」

 影人がぬいぐるみにそう語りかける。ぬいぐるみは「うん!」と言うかのように、右手を上げた。

「じゃあ行くわよ」

「おう。あ、そうだ嬢ちゃん。零無も転移って出来るのか? こいつ今幽霊だけど」

「私が認識出来れば問題ないわ」

「分かった。おい零無。認識の度合いを引き下げてくれ」

「分かったよ」

 影人にそう言われた零無はシェルディアやキベリアにも認識出来るように、自身の存在のチャンネルを弄った。その結果、シェルディアが零無の存在を認識する。

「じゃあ、今度こそ行くわよ」

 シェルディアがそう言うと、シェルディア本人、影人、キベリアとぬいぐるみ、零無がシェルディアの影に沈み始めた。そして次の瞬間、3人と1匹のぬいぐるみと幽霊は玄関から姿を消した。













「さあ、着いたわ。ここが今回のパーティー会場よ」

 転移によってシェルディア宅から移動すると、シェルディアが正面に見える巨大な建物を指差しながらそう言った。

「デカいなおい・・・・嬢ちゃん、ここはホテルか?」

 その建物を見た影人がシェルディアにそう聞いた。見た感じだが、かなりゴージャスというか美しい建物だ。

「ええ。一応都内のホテルよ。今日はここの宴会ホールを貸切にしてあるの。さあ、行きましょう。会場は2階よ。あなたはしばらくは普通のぬいぐるみのフリをしていてね」

「!」

 シェルディアが影人の言葉に頷く。そして、キベリアに抱き抱えられているぬいぐるみは、コクリと頷いた。シェルディアがホテルの出入り口へと歩き始める。影人とキベリアと零無はその後に続いた。












「うおっ、凄えなこりゃ・・・・・・」

 ホテルの中に入った影人は思わずそう呟いた。ロビーは豪奢なシャンデリアが光を照らす、凄まじく広い場所だった。これは間違いなく超高級ホテルだ。行ったことはないがそうに違いないと影人は思った。

「貧乏臭い感想ね。程度が知れるわ」

「別にいいでしょう。凄いと思ったんだから」

 チクリと少し嫌味ったらしい言葉を言ってきたキベリアに、影人はそう言葉を返した。影人がスプリガンだとバレてから、キベリアは露骨に影人を嫌っている様子だった。

「ふふっ、仲がいいわね。さて、パーティー会場に行く前に、みんな準備をしなくちゃね」

 シェルディアは軽く笑みを浮かべると、ホテルのカウンターへと向かった。そして、そこにいる老齢のスーツを着た男性に声を掛けた。

「少し訊ねたいのだけれど、いいかしら?」

「はい、何でしょうかお客様?」

 老齢の男性はニコリと笑みを浮かべシェルディアにそう聞き返した。明らかに見た目が歳下のシェルディアを見下すような、侮るような態度は当然ながら全く見えない。それは1つの一流の証明であった。

「私、今日ここでパーティーを主催した者で、パーティーに参加するのだけれど、ドレスコードを整える場所はどこにあるのかしら? 一応、用意するように頼んだのだけど」

「っ、これはこれはシェルディア様でしたか。本日は当ホテルのご利用まことにありがとうございます。はい、もちろん服装は揃えさせていただきました。僭越ながら、私がご案内させていただきますね。私、当ホテルの総支配人を務めさせて頂いております、灰崎と申します」

 シェルディアの言葉を聞いた灰崎と名乗った総支配人は、シェルディアの名前を述べると恭しく頭を下げた。

「あらそう。ならお願い出来るかしら」

「ええ、よろこんで」

 灰崎が頷き、カウンターから出てくる。そして、灰崎はシェルディア一行を案内し始めた。

「嬢ちゃん、さっきドレスコードがどうのって聞こえたんだが・・・・・・もしかして、準備ってそれか?」

「ええ、パーティーですもの。一応ちゃんとした格好をしないとね」

「やっぱりそうか・・・・・・用意してもらってるのはありがたいんだが・・・・・・やっぱり着なきゃダメか?」

「ダメよ。全員そうしてもらうんだから」

 影人はダメ元でシェルディアにそう言った。そして案の定、シェルディアは首を横に振った。

「そうか、やっぱダメか・・・・・・はあー、しゃあねえ。覚悟決めるか・・・・・・」

「正装するくらいで大袈裟ね。ふふっ、あなたの晴れ着楽しみにしてるわよ影人」

「もちろん吾もな」

 影人がため息を吐くと、シェルディアと零無がそんなことを言ってきた。こんな自分の正装に期待なんかしないでほしい。影人は心の中でそう思った。

「着きました。こちらの右手の部屋が男性用の、左手の部屋が女性用の部屋になります。中にはそれぞれ着付けを担当する者がおりますので、衣装が決まり次第そちらの者にお申し付けください」

 それから少しして、1階奥の部屋の前に到着した灰崎が2つの扉をそれぞれ指し示しそう言った。

「では、私はこれで。皆さまがパーティーを楽しまれる事を願っております」

「ええ、ありがとう」

 灰崎はそう言って腰を折ると、ロビーの方へと戻って行った。シェルディアは灰崎に感謝の言葉を述べた。

「じゃあ影人。私たちはこっちだから。また後で会いましょう。ああ、零無も私たちの方に着いてきなさいよ。影人の気が散るでしょうし」

「吾に命令するなよ吸血鬼。・・・・・・だがまあ分かった。今日だけは貴様の言う事を聞いてやろう。じゃあね影人。また後で。お前の正装を楽しみにしているよ」

 シェルディアの言葉に渋々といった感じで頷いた零無はそう言うと、スッとドアを通り抜けて女性用の着付け室へと入って行った。それに続くように、シェルディアがドアを開けキベリアと共に中へと入って行った。

「・・・・・・さて、んじゃ・・・・・・しゃーなし行くか」

 影人はそう呟くと、男性用の着付け室のドアを開けた。

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