第1464話 パーティーの準備(3)
「ご機嫌よう影人。ふふっ、ちゃんと逃げずに来たのね」
「こんばんは嬢ちゃん。ああ、正直逃げたかったが、ここで逃げたら多分殺されるからな。腹括って来たよ」
挨拶をして笑みを浮かべるシェルディアは、影人の事など見透かしているようにそう言って来た。そんなシェルディアに影人は苦笑いを浮かべながら、自分の本心を述べたのだった。
「今度は賢い判断が出来たみたいね。取り敢えず、上がってちょうだい」
「じゃあ・・・・・・お邪魔します」
シェルディアにそう言われた影人は、シェルディア宅に上がった。
「げっ、帰城影人・・・・・・」
「!」
リビングに通されると、そこにはシェルディアの同居人であるキベリアとぬいぐるみがいた。キベリアはゆったりとしたリビング端にあるソファに腰掛け、その上にぬいぐるみが座っていた。
「こんばんはキベリアさん、お前もな。・・・・・・後、お気持ちは分かりますが、俺の顔見るたびに一々げって言わないでくださいよ」
影人はキベリアとぬいぐるみに挨拶した。そして、キベリアにそう言ったが、キベリアはぬいぐるみを抱き抱えながら、キッと影人を睨みつけて来た。
「無理よ! あんたが私に何したか分かってるの!? ボコボコよ! そりゃ酷いくらいにボコボコにされたわ! そんな奴が普通に接してきても無理でしょ!」
「いや、あれはイヴが・・・・・・ていうか、あの時は戦いだったんですから仕方ないじゃないですか」
「それでもよ! 限度ってものがあるでしょ! ふん!」
キベリアがそっぽを向く。すると、そのタイミングで今まで黙っていたシェルディアが、キベリアの頭にチョップをお見舞いした。
「痛っ!? え!? な、何で私を叩くんですかシェルディア様!?」
「うるさいからよ」
頭を押さえながら意味が分からないといった顔を浮かべるキベリア。そんなキベリアにシェルディアはただ一言そう言った。
「そんな理不尽な・・・・・・! やっぱり、シェルディア様は行動原理も力もゴリ・・・・・・」
「ん? 何かしら?」
キベリアが何かを言う前に、シェルディアはニコリと笑みを浮かべそう聞いた。その笑みには尋常ならざる凄みがあった。それを見たキベリアは、恐怖を抱くと慌ててこう言った。
「あ、い、いえ・・・・・・何でもないです・・・・・・」
「よろしい。さて、なら色々と準備もあるし、一息ついたら会場に行きましょう。影人、適当に掛けてちょうだい」
「分かったよ。でも、会場って結局どこになったんだ? 俺何にも知らないんだけど」
シェルディアにそう促された影人はリビングのイスに腰掛けると、そう質問した。
「ふふっ、行けば分かるわ。まあ、お楽しみという事ね」
「はっ、分かったよ」
シェルディアは悪戯っぽい笑みを浮かべそう言った。これは答えてくれないなと悟った影人は、軽く笑みを浮かべた。
そして、15分ほどお茶などをしていると、
「さて、ではそろそろ行きましょうか」
シェルディアが空になったカップを置きそう言葉を放った。
「ん。会場には何で行くんだ? 徒歩か?」
影人がシェルディアにそう質問を飛ばす。その質問にシェルディアは首を横に振った。
「まさか。時間がかかり過ぎるわ。転移で行くから、みんな靴を履いて」
「ああ、転移か。やっぱり、クソ便利な力だよな・・・・・・」
その答えを聞いた影人は納得しそう言葉を漏らすと、玄関に向かい靴を履いた。シェルディアとキベリアも影人と同じように靴を履いた。唯一、幽霊である零無だけは靴を履かなかった。
「あれ、そいつも連れてくんですかキベリアさん?」
キベリアはぬいぐるみを抱えたままだったので、影人は不思議そうな顔でそう聞いた。このままだと、ぬいぐるみも転移する事になるが、それでいいのだろうか。
「仕方ないでしょ。シェルディア様が連れてくって言うんだから」
「1人でお留守番は寂しいでしょ。大丈夫よ。今日パーティーに来るのは、超常の力に慣れた者たちだけだし。後はもし何か不都合な事があったら、私がカバーするし」
影人の言葉にキベリアとシェルディアがそう答えた。その答えを聞いた影人は「そっか。じゃあ、大丈夫だな」と納得した。シェルディアがカバーすると言うのなら、基本全ては大丈夫だろう。




