第1460話 打ち上げパーティーをしよう(3)
「シェ、シェルディア。な、何なんですかあのぬいぐるみは・・・・・・何か普通に動いているんですが・・・・・・」
「ああ、あの子は私が影人から貰ったプレゼントなの。それで、私が命を与えたのよ。ただそれだけよ」
「え、ええ・・・・・・そんな無茶苦茶な・・・・・・」
シェルディアの説明を聞いたソレイユは引いたような顔を浮かべた。物質に命を与えるという、生命創造の御業を何でもないように言ってのける。やはり、シェルディアも荒唐無稽な存在なのだなと、ソレイユは再認識した。
ちなみに、影人が驚いていない事からも分かる通り、影人は既に自分が贈ったぬいぐるみが自我を得ている事を知っていた。シェルディアに影人がスプリガンだとバレて以降に、シェルディアの家に招かれた時に影人はぬいぐるみの存在を知った。無論、初めは影人も驚いたが、今ではたまに一緒に遊んだりする中なので、ぬいぐるみが動いている事はあまり気にならなくなっていた。
「ふん、そうかプレゼントか。そうか、そうか」
「おいおい、いいご身分だな吸血鬼。なあ影人。吾にもプレゼントくれよ」
「何なんだよお前ら・・・・・・ていうか、お前は調子に乗るな零無」
なぜかつまらなさそうな顔になったレイゼロールと、拗ねたような零無。そんな2人を見た影人はよく分からないといった顔を浮かべた。
「ふふっ、気分が良いわね」
そんな2人の様子を見ていたシェルディアは、言葉通り気分が良さそうにニコニコと笑った。そして、それから少ししてぬいぐるみが各自の飲み物をトレーに乗せて運んで来た。
「ありがとうね」
「ありがとうな」
ぬいぐるみからトレーを受け取ったシェルディアが感謝の言葉を述べ、シェルディアの隣に座っていた影人も感謝の言葉を口にする。2人にそう言われたぬいぐるみは「うん!」とでも言うように、右手を上げた。そして、ぬいぐるみはテクテクと歩いて再び襖をピシャリと閉めて、自分の部屋に戻って行った。
「それじゃあ本題について、打ち上げパーティーについて話し合いましょうか」
シェルディアが隣に座っている影人、対面に座っているレイゼロールとソレイユを見渡し、そう宣言した。ちなみに、零無は影人の横の空間に浮いていた。
「い、いやだからな嬢ちゃん。俺はそんなもんは――」
「まずは賛成かどうか、改めてあなた達の意見を教えてちょうだい。賛成なら挙手、反対ならそのままよ」
影人が言葉を述べる前に、シェルディアは各自にそう問うた。すると次の瞬間、ソレイユ、レイゼロール、零無、そしてシェルディア自身がその手を挙げた。
「オーマイガー・・・・・・」
その光景を見た影人は反射的に天を仰いだ。分かってはいた。分かってはいたが、そう言わずにはいられない気分だった。
「ふふっ、という事だけれど、それでもあなたは嫌だと言うのかしら? 影人」
シェルディアが隣に座る影人を見つめながらそう言ってきた。この場にいる5人中4人が賛成だというのに、それでも意見を変えないのかとシェルディアは暗に脅しているのだ。
「ぐっ・・・・・・だが、あまり俺を舐めるなよ嬢ちゃん。俺は孤高の一匹狼。人の意見程度で、賛成派が多いからといって意見は変わらない。マジョリティに俺は屈しないぜ・・・・・・!」
しかし、相手はバカの前髪野郎である。バカの前髪は、アホの理屈で格好をつけながら、そう言葉を述べた。相変わらず救えない奴である。




