第1458話 打ち上げパーティーをしよう(1)
「何でですって? 決まっています。愚か極まりない、まあ率直に言えばバカですが。そんなバカのあなたに用事があるからです。言ったでしょう。こちらも方法を考えると」
ソレイユは両手を組みながら、ふんと鼻息荒くそう言うとこう言葉を続けた。
「その方法が、説得者を増やす事です。数の力は偉大ですからね。という事で、先ほどあなたにした提案をレールとシェルディアに話しました。すると、2人も賛成という事だったので、こうしてあなたを待ち伏せていたというわけです」
「そういう事よ」
「そういう事だ」
ソレイユに続くように、シェルディアとレイゼロールも頷く。その言葉を聞いた影人は軽く頭を抱えた。
「こんちくしょうが・・・・やっぱり嫌な予感が当たりやがった・・・・・・やりやがったな、ソレイユてめえ・・・・・・」
「ふふん、あなたとの付き合いもまあ長いですからね。あなたの嫌がる事は大体分かりますよ」
恨みがましい声でそう言った影人に、ソレイユは得意げな顔を浮かべた。
「ていうか、悪戯好きな嬢ちゃんはともかくとして、何でお前まで了承したんだよレイゼロール。お前、俺と同じでそういうのは嫌いだろ」
「勝手にお前と同じにされている事は少し苛立つが・・・・・・確かに、我もそういうものはあまり好かん」
「だったら・・・・・・」
「だが、区切りは時に必要だ。そして、そういうものは1つの区切りになる。影人、今のお前にはその区切りが必要だ。ゆえに、あまり気は進まんが今回はソレイユの話に賛成してやった」
「・・・・・・ああ、そうかよ」
レイゼロールの言葉を聞いた影人は、何とも言えない顔でそう言葉を漏らした。それは、純粋に影人を思っての言葉だったからだ。ゆえに、影人はそれ以上レイゼロールに何も言う事が出来なかった。
「ふむ、話が見えないな。影人、こいつらは何の話をしているんだ?」
そのタイミングで、今まで話を聞いていた零無が影人にそう聞いて来た。確かに、零無からしてみれば話が全く分からないだろう。
「別に大した事じゃねえよ。ただ、せっかくお前との戦いも終わったし色々落ち着いたから、ソレイユが打ち上げパーティーしようって言って来ただけだ。それで、俺はそういうの嫌いだから断った。それだけだ」
事情を知らない零無に対し影人が説明した。そう。昼頃にソレイユが影人に提案して来たのは、打ち上げパーティーをやろうという事だった。そして影人はそれを一瞬で断り、ソレイユと口喧嘩をして今のこの状況に至るというわけである。
「へえ、パーティーか。いいじゃないか影人。吾とお前の仲直り記念も含めてやろうぜ」
「仲直りはしてねえよ。馴れ合う気はねえって昨日言っただろ。もう忘れてんじゃねえよ」
ニコニコと笑う零無に対し、影人は軽くため息を吐きながらそう言った。影人の言葉を聞いていたソレイユは不思議そうな顔を浮かべた。
「影人、先ほどから誰と話されているんですか? イヴさんと話されている感じではないですが・・・・・・」
「誰って・・・・・・ああ、そうか。お前らには見えてないのか。ここに零無がいるんだよ。だから、こいつと話してたんだ」
自分の左斜め辺りの空間を指差しながら、影人はソレイユたちにそう説明した。影人の言葉を聞いたソレイユは「ああ、そうだったんですか」と言って納得した顔になった。
「零無さんの姿はあなただけに見えているんですか? 昨日の夜には幽霊になった零無さんの姿を私たちも見る事が出来ましたが・・・・・・」
ソレイユが軽く首を傾げる。昨日影人と和解した際(影人は和解とは認めないだろうが)、零無の姿はソレイユたちにも見えていた。ゆえに、ソレイユは疑問を抱いたのだ。
ちなみに、なぜ昨日は零無の姿がソレイユたちにも見えていたのかというと、それは幽霊になったばかりでチャンネルの調整が上手くいっていなかった、という理由からだった。




